最近は旅館に泊まりこんで仕事をすることも多くなった地方創生系ノマドワーカーの私です。macbookpro一台とカメラがあればそこそこ仕事はできます。そのおかげで旅館にはだいぶ精通するようになりました。
私の地域も集客に苦戦しているのですが、ことはそれほど悲観するものではなく環境を整えることでなんとかなりそうな予感がしています。
なぜなら現場では色々考えて努力している人が多いからです。WEB上で見れないだけで色々な施策をやっているんです。あとは情報発信とコンテンツの作り方次第なのでは?と思うことがあります。
ちなみに紙媒体への広告や、都会への営業などは慣れたものです。雑誌黎明期から行ってきたマーケティングなので、みなさん慣れているんです。問題はWEB方面についていけていないことです。未開拓の分野なので伸びしろは確実にあるんです。
可能性は秘めているのに内部的な問題や人材の問題で閉塞感が出ているのは現地の人よりもむしろそこに融資している金融機関や、コンサルティングの先生かもしれません。
では問題と対策をまとめてみます。
問題1.WEBマーケティングに興味が無い
外国でのカメラマン経験と、東京でのWEBディレクターの感覚で市場を見ると、チャンスがたくさん埋まっていることがわかります。私は『他所から来た人』つまりは異分子ですから集落の常識も慣習も知りません。現地の人とはマーケティングの考えが根本から違います。
大規模WEB開発あたりのWEBマーケティング、どうやって全国に情報発信し顧客を掴みとるかの視点から考えると以下2点が不足しています。
PVを稼ぎに行くという観点がない
情報発信は主にWEBになってきてはいますが、ホームページでCVR(コンバージョンレート)を上げにいくという考えばかりで、純粋なPVを上げていくという発想がありません。なのでホームページの基本は静的の保守運用で、ブログはアメブロなどのフリーのブログを使うという愚策に陥ります。WEBにピンと来ない人にわかりやすい情報を説明すると、素晴らしい内容の本だけれども新宿のキヨスクでしか買えない状況です。
地元の人や専門業者は認知していますが、その他の99%はそんなものが「存在していることすら知らない」わけです。
ホームページは作ったら終わり
WEBサイト自体は静的でもCMSでもなんでもいいのですが、運用することがありません。施設なら作りっぱなし、旅館なら宿泊プランを作ったらバナーを作る、程度の保守がメインになります。
ABテストをしたりランディングページを作ったりはしませんし、キーワードから流入なんかにも興味がありません。SEO?なにそれ美味しいの?といったレベルです。
これは旅館や施設に責任があるわけではなく、そこに入っている場末のWEB製作会社の問題ですね。年間契約で、しかもリース。版権を一切渡さないってどういうことよ。自社の意思決定でページ更新できないホームページなんて、それはもうOther of home Pageとでも言ったほうが良いのではないかしょうか。
顧客を囲い込んで搾取しつづけるビジネスモデルですが、そういう会社に限ってひどいページを作ります。腕にない外科医はそれだけで罪だと断罪した医龍の朝田龍太郎を思い出しました。
問題2.ニーズを追いかけシーズを考えない
ニーズを追いかけるのはすごく楽です。市場や競合のデータを漁ればすぐにわかりますから。問題はその集落すべてで同じ施策をWEBで打ち出してしまっていることです。
わかり易い例を出すとご当地のブランド牛。年に数回しかいけない一般旅行者のニーズに『美味しいもの』が上位にくることは間違いありません。そこで旅館が出す集客の戦略は『A5ランク』です。もうどこもかしこもA5の牛肉。料理の分野ではご近所同士での潰し合いです。
問題はそれがニーズの終着点なのか?という視点です。別の牛肉の需要あるんじゃね?っていう考えです。WEB戦略の基本はニーズに応えるのではなくその裏にあるシーズに答え120%の満足感を提供することにあります。
旅行者が考える一番美味しい牛肉=A5ランクというのはものすごくわかります。私もかつてはそうでした。霜の入ってる肉なんて滅多に食べないので、霜が入りすぎている肉という考えなんて微塵もありませんでした。
まとめます。
- プロモーション・マーケティングはしない
- ニーズ(顕在需要)を追いかけ、シーズ(潜在需要)を考えない
- みんなでニーズを打ち出し、潰し合いをする
…oh。そりゃ駄目だ。
1と2はお互いに足を引っ張り合ってる部分もあります。いくら顕在需要(シーズ)を的確に捉えてポテンシャルの高い施策をしても、プロモーションしなければ都会の人に認知すらされません。
ではどういうスキームを組めば希望の持てる施策になるのでしょうか。
解決策1.まず自社HPのPVを上げる
WEBサイトの運用の基本はPVをあげることです。CVR(コンバージョンレート)の数値が同じという前提ならPVが2倍になれば旅館のWEB予約の売上は単純に2倍になります。でもよく旅館にありがちなペライチの静的ページじゃPVは期待できません。
大規模なWEBサービスになると社内ではひっきりなしにCVRの話になりますが、それはPVがすでに頭打ちになっていて簡単に向上できなくなってきているためにCVRに比重が寄っているからです。地方はまずはPVです。見てもらわないことには始まりません。
雑誌に広告を出したりTVに出たりすると一時的にPVがあがりますが、1ヶ月もすると元通りになります。
ソーシャルを使って流入させるなら、ランディングページを作ったり、施設のウリや、宿の温泉ページ・料理ページにいいねボタンを設置とかすると、拡散の可能性が広がりそうです。
自社HPで集客しようとすると必ずどこにエッジを立たせるかということを考えなくてはいけなくなるので、必然的に自社が取り組むべきことが見えてきます。
じゃらんと楽天に頼りすぎる悪循環からの脱却
SEOの基本として、『ユーザーのためになる良質な文章を上位に表示する』というロジックが組まれています。旅館のWEBサイトだと『宿泊プランの詳細説明』に該当します。
さてここで質問です。
その文章は自社の独自ドメインのページの中に入ってますか?別ドメインの予約システム内やじゃらん・楽天にのみ入れていたりしませんか?
もしそうなら自分たちのウリであるキーワードで検索しても旅館の自社HPには流入せずに、じゃらんや楽天に流れます。
もう1つのケースとして自社にもそのテキストを打ち込んでいるが、じゃらん・楽天にもコピペしているケース。これも残念ながら自社にキーワード流入させるのは難しいです。
ページランクというWEBページの信用度みたいなものがあり、それが圧倒的にじゃらんや楽天の方が上なので、自社のものだとしてもエンジンは『オリジナルはじゃらん、コピペしたのは旅館』という判断をする可能性が高いです。
考えれば考えるほど、自社利益のロジックを完璧に作り上げてくる大手ネットエージェントはえげつないですね。中の人は見るんじゃないぞ!絶対だ。
じゃらん・楽天は広告として優秀なので使えるところを利用する
予約手数料は基本8%と相当高いですが、宿泊予約の市場をがっつり握っている分、じゃらん・楽天のPV数は相当なものになっています。多くのユーザーがここから泊まりたい宿を探すと思います。
じゃらんのページをみれば分かるように旅行のエリアだけ決まっている人が宿を探すには非常に優れたツールなのは間違いありません。
ほとんどの場合、じゃらんなどのネットエージェントがを見て興味を持った旅館の名前をコピペして検索するというパターンではないでしょうか。わたしもじゃらんで見た宿名をコピペすることが多いです。流入ワードで『◎◎の宿◎◎旅館』みたいな絶対自然の検索では使わない単語が上位に来ていることからの推測です。
このことから
- ネットエージェントから流れてきたユーザーのリピーター化
- ネットエージェントのPV維持。自社のPV向上
- ネットエージェント→自社ページ→予約の導線強化
この3つが手堅い路線です。
旅館独自でユーザーのためになる情報を発信する
結局はここにたどりつきます。PVを上げるならば独自ドメインのサイトで情報発信して、それを旅館のWEBサイトへのPVにつなげる施策が基本となります。
自社でWEB集客するという『オウンドメディア』という戦略です。広く捉えるならばブログもオウンドメディアなのですが、こと旅館に至っては集客するレベルのものを見たことがありません。
ここでも基本は『ユーザーのためになる価値あるもの』です。さらに『トレンドに左右されない』というアプローチも必要です。いつ見ても価値のある記事を作るということで、日記や報告のようなものは論外です。
- 自社のプラン紹介のテキストはかならず自社HPの中に組み込む
- 極力じゃらん・楽天にコピペはしない
- オウンドメディアでPV向上&ブランディング
この3つです。オウンドメディアの内容をどうすればいいのか?ということは施設によって様々なので一概にはいえません。参考としてWEB製作会社のLIGを上げておきます。オウンドメディアの代表としてよく名があがります。この会社のオウンドメディアの目的は『WEB製作会社として受注を増やす・ブランドを作る』ために色々な記事を書いています。LIGは『Life is good』の略らしいので、もしかしたら人生を良いものにするのが最終目標かもしれません。
解決策2.ニーズではなくシーズを考えて表に出していく
私のいる地域で1つ思い当たるのが『A5の肉って…美味しくないよな。A3の方が美味い』という意見です。正確には『美味しいんだけど2切れくらいで十分』という意見です。
でも集客の主戦力はA5の肉です。なぜなら普段A5の肉を食べることの少ない人はA5の肉=一番美味しい肉というイメージを強く持っているからです。そこを捉えていくのは戦略の1つとして正解だと思います。
しかし…これは見方を変えると、『自分が美味しくないと思ってるものをお客様にお出ししている、なぜならそれを望まれているから』です。言いたいことも言えないこんな世の中ポイズン。
問題はA5の肉の本質を知っている人。常連客やご年配の人です。宿泊プランの料理すべてがA5の肉だとしたら顧客満足度の問題からNGです。CRMの観点からしてもオススメできませんし、ロイヤルカスタマーを作っていく上で障害になる可能性は高そうです。
もっと声高に『A5あるけど、A3もあるで。通はこっち食べるで、なぜなら…』という認知をすすめてもよいかと思います。私もA5ランクの肉100gよりもA3ランク200gの方が嬉しいです。
当然相応のオウンドメディア化とマーケティングの必要ですからそこにたどり着くまでへの準備はかかります。
エッジのたったコンテンツは強い
WEBでもリアルでもこれは変わりませんね。他と違った特徴(エッジ)を持つものは強いです。ニッチであろうとその客層はすべて囲い込めてしまうわけですから、同じ戦場で近所と潰し合いするよりよっぽど建設的です。
このあたりはSEO・リスティング・PPCあたりのキーワードの探し方と似ているかもしれません。検索ボリュームはあるけれど競合がないワードを拾っていくようなものです。
他の旅館や客に合わせるのではなく、自分たちの考えを形にして正しく情報発信をしていく。こういう考えを持っていれば上手くいくのではないかと思っています。
うちの集落のみんな!売れてる宿はどこもエッジが立ってるよ!
最後の問題 デキる人材がいない
やれば結果は出るのですが、それを実行できる人材がいないのが地方の一番の問題です。WEBサイトを作るだけならクラウドワークスやランサーズあたりに外注しすれば10万程度でできます。
WEB運用とマーケティングができる人・業者が皆無
びっくりするほどまともに運用できる人がいません。「デザイン作業」をするだけです。
都内のWEB製作に携わる方々なら周知の事実ですが、運用しないWEBサイトに価値はありません。数値を分析して顧客同行を探りベストな施策を検討するものだからです。
本番一発勝負でよい結果が出るほど甘いものではありませんし、クライアントの要望どおりの数値だとしてもその数値をもっと伸ばしていける余地があるのかを検討する必要があります。
岐阜のようなアクセスの不便な観光地のWEB運用を名古屋や東京に任せるのも現実的ではありません。きちんとしたコンテンツを作っていくにはそれなにのコミュニケーションが必要です。
地方創生のよく言われる「地方を変えるのは、よそから来たバカもん」っていうのは本当です。うちの温泉ですと大規模WEBのプロモーション・広告運用の経験があるエバンジェリストが欲しいです。しかし悲しいことに今WEBのクリエイターもディレクターもプロデューサーも売り手市場。高待遇が期待できない地方に呼ぶのは難しい実態があります。
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