仕事で登山する私がfinetrack製品に切り替え始める理由

finetrack

今季の冬からメインのウェアをfinetrackに切り替える予定です。GORE-TEXを使用しない自社開発の素材、ほとんどのプロダクトが日本国内生産であるというアウトドア業界でも異質な存在であるこのメーカーの商品をメインにするに至った経緯を説明します。

finetrackはmont-bellと袂を分かった登山メーカー

finetrackはmont-bellから独立した人が立ち上げたアウトドアブランドです。このことからmont-bellと同じ戦略を取ることはまずありません。mont-bellが広く浅くならfinetrackは狭く深くといった戦略です。

現在苦戦を強いられているアウトドア業界で売上を落としていないメーカーはゴールドウィン(ノースフェイス)・MAMMUT・finetrackの三社のみと言われています。

そんな破竹の勢いで成長しているfinetrackというメーカーの商業戦略はこのようになります。

株式会社finetrackは、国内大手総合アウトドアメーカー等で企画開発30年のベテランと、長年アウトドアを実践してきた有志が集まり、国内ベンチャーとして2004年1月に創業。 兵庫県の経営革新計画にも認定された、「遊び手=創り手」のシーズとニーズをダイレクトに結びつけるビジネスモデルで、素材開発からこだわる物創りをすすめております。

http://www.finetrack.com/

登山者の自分たちが納得いく商品を作ろうぜ!という分かりやすいコンセプトです。よってメインのプロダクトは自然と登山上級者に対応できるようになっています。

登山の新定番アイテム「ドライレイヤー」の仕掛人

finetrackのドライレイヤー

山行時の危険は、外から来る雨でなく体内から発生する汗と蒸気という斬新なアプローチから生まれたTシャツの下の着るインナーです。

多くの登山者が実感していると思いますが、低体温症の主な原因は汗冷えです。稜線付近で立ち止まったら急に身体が冷えて震え始めるということは多くの人が経験していることです。

ドライレイヤーは体内からの水分をすべて通過させ、逆に外からの水分はすべてカットするという素材で作られています。これにより汗はすべて外に排出され汗冷えを抑えることができます。

汗を効率良く処理することは低体温症の他に、汗による悪臭やべとつきなどを抑えることもできるため、常に快適なコンディションで登山を楽しみことができるようになります。

低価格のプロダクトで、登山者の山行快適性を向上させるアプローチはいち登山者として嬉しい限りです。このプロダクトを知ってからfinetrackというメーカーに注目し始めました。

自社で素材開発する強み

ウェアに使用する生地素材を自社開発しているという強みがあります。これによりfinetrack製品にはGORE-TEXのウェアがありません。他のアウトドアメーカーは既成の素材を購入してプロダクトを作る必要があるため、どうしても製造費用がかかり、最終的には販売価格に反映されます。特にGORE-TEXのライセンス料は高くて有名です。

そしてGORE-TEX社が素材の価格を上げたらその分販売価格が上がってしまう可能性があります。現実問題としてGORE-TEXジャパンの撤退が噂されていますので、今後の価格がどうなるかは不透明です。

素材を他メーカーに依存しないfinetrackは製造原価を押さえることができるため、国内生産で高品質なプロダクトを低価格で生み出すことができています。

finetrack自社開発素材の信用性

私が一番疑問に思っていたのが信用性です。カタログスペックが良すぎて逆に胡散臭い印象でした。

命を預けるウェアですから正直なところ「今まではGORE-TEX、これからもGORE-TEX」という経験則に基づいた考えをしていました。ヒマラヤ経験者や厳冬期アルプス経験者の方はこのような考え方をする人が多いと思います。使用している素材が同じならある程度の使用感や期待値などを想定することができますが、finetrackは自社開発素材を使用してるため全く予測がつけられませんでした。

そこで2年かけてfinetrackのハードシェルの代名詞であるエバーブレスフォトンで検証を行いました。

GORE-TEXと同等の撥水性を誇り、かつストレッチ性があり軽量コンパクトなパンツです。ハードシェル特有の「身体を大きく動かす際に突っ張る」ということがないため、これだけでも体力の消耗を防ぐことができます。ベンチレーションも同然のように搭載されていて、体温と湿度の管理も楽に行なうことができます。

そして私のような撮影機材一式をザックに詰め込んで登山するクライマーに有りがたかったのがコンパクト性です。一般的なGORE-TEXのパンツに比べて生地が薄いので一般的なハードシェルパンツの半分程度まで小さくすることができます。

私の経験からですが、このパンツが2万円というのは機能性から考えて登山用ハードシェルでもっともコストパフォーマンスが高いと断言できます。

メイドインジャパンへのこだわり

finetrackの製品開発はほぼすべて日本国内で行われています。少し前まではグローブは仕方なく海外で生産していましたが、安定して生産できる工場を見つけることができたため、現在は日本で製造しています。

あえて製造費がかかる日本国内で製造するかわりに、縫製技術が求められる難しい技術を使用しています。それがウエアの堅牢性や着心地の良さにつながっています。

ヨーロッパを拠点にしていたときはスイスに本社があるMAMMUTをメインに使っていましたが、日本で活動するならばメイドインジャパンの日本の登山メーカーを応援したいという気持ちがありました。これもfinetrackを選んだ1つの理由です。

社員全員が登山に対するリテラシーが高い

仕事とプライベートの両方でfinetrackの社員さんと山に登るケースが多く、意見交換する機会もあります。彼らは総じて登山の知識や経験が豊富です。finetrackの採用試験はある程度のアウトドアスキルがないと絶対に受からないようになっているため、特に男性は体つきがもうガチなクライマーです。

新商品を実際に着て山に登り、その経験から商品提案や営業をしてくれるので説得力が他のメーカーに比べてレベルが1つ違います。

大手のアウトドアメーカーになると、営業の方や広報担当の方は「会社員」という印象を受けることが多くなり登山経験がない人もいます。そのため琴線に触れるようなプロダクトや企画を生み出すことが少なく、製品のクオリティを上げるよりもターゲットの幅を広げて利益を確保する傾向が強くなります。

その点finetrackはとことん登山者にターゲットを絞って「狭く深く」を貫いているため製品の品質向上のペースが異様に早い特徴があります。

finetrackとmont-bellはどちらがいいのか?

多くの人が登山用品を購入するときに比較するのがmont-bellです。端的に言うとmont-bellの長所は「価格が安い」それだけです。決して性能が良いというわけではありません。

具体的に提示すると多くのターゲットに商品を合わせているため、ウェアのシルエットが野暮ったかったり、縫製が甘く数回の洗濯でダメになってしまうというケースが多いです。

しかし年に数回の低山登山しかしない人や、そのクオリティで満足できる人に取っては良い買い物であることは間違いありません。業界的にはmont-bellがあの価格でやってくれているおかげで登山者人口を増やせているという側面があるのは確かです。

mont-bellで満足できなくなった、多くの人がmont-bellなので差別化したいという人が次に手を出すのがfinetrackという位置づけになります。mont-bellは一般的なアパレルでいうユニクロと同じようなものと考えると分かりやすいかもしれません。

ちなみにfinetrackの唯一の問題点は他社のウェアやギアを使った経験がないとfinetrack製品の良し悪しが判断できないということです。しかし登山経験者の中でfinetrack製品を手にする人が増え始めている今、ブレイクスルーして急激に普及するのは時間の問題だと感じています。

2年間でのウェア検証の結果、エバーブレスメンブレンを使用したプロダクトはコストパフォーマンスで考えるとmont-bellを上回るというのが個人的な見解です。

今冬に合わせてfinetrackのウェアを揃えていきます

ウェアの信用性は納得したので、徐々にfinetrack製品を増やして行こうと思います。特に気になっていたのがL5・L4というハードシェルを2枚重ねて着るレイヤリング。

土砂降りの時は厚手のGORE-TEXでも中に水が染みてくることともありますし、吹雪いた時も雪が中に入ってくることは多々あります。それが防げると今回の展示会で熱のある営業を受けましたので実際に来てみて検証したいと思います。


特にL4に相当するニュウモラップは薄く軽くて着心地がいいため街着に最適な1枚です。finetrack社員の購入率1位がこのジャケットです。秋冬の展示会やイベントに行くと社員さんは必ず着ています。

しばらくは定番のGORE-TEXと自信の経験上信頼を置いているMAMMUTと、新素材で次世代的な提案をしてくれるfinetrackの2つの軸で登山を楽しみたいと思います。

コメント

  1. […] 冬山撮影ロケ初心者の安全を守るために選ぶべきウェアを真剣に考えてみた。 仕事で登山する私がfinetrack製品に切り替え始める理由 […]

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