CP+2019のBenQブースで山岳写真とカラーマネジメントの話をしてきました

写真のカメラの祭典CP+2019に登壇してきました。その一つがBenQブース。

「山岳写真の基礎技術と自然の色彩をコントロールするカラーマネジメント」という題目で毎日登壇してきました。

色彩豊かな山岳写真の編集には色域の広いカラーマネジメントモニタが必要なこと、BenQさんが現在アウトドアフィールドに持ち運べるモニタシステムを開発していること、そして私が山岳写真を専門にしていること。

色々とタイミングがよく山で写真を撮りたい人に有益な情報を提供できるのではないかと登壇した流れです。

結果多くの人がセミナーに来てくれ、CP+というカメラのワールドプレミアショーで少しだけ山岳写真の世界が広まったのかなと感じました。やってよかったと思います。

そこで今回のCP+登壇を準備からまとめてみます。当日までに色々と物語がありましたので裏話もあります。

同じBenQブースの登壇者は大物揃い

CP+2019 BenQブースの登壇者

同じ登壇者の中にはみんな大好きStudio9の中原さんやヒーコの黒田明臣さんなどの大御所の方たちばかり。すごく場違いなところに出てきてしまった感じ…。

ちなみに今回の登壇は4日間毎日最後の枠になっています。これは私が時々やっている山岳写真の講習会で個別質問にできる限り答えているため1時間半のセミナーが4時間になることが普通であることをBenQさんがよく知っていて、閉館時間までアディショナルタイムが作れるようにしたためだとか…。

前日から設営のお手伝い

山岳写真の装備の展示

今回の登壇でやってみたかったのが山岳写真の装備の展示。これから山岳写真を始めようと思っている人にどのような世界観なのか、使用するギアやウェアはどのようなものがあるのかを目で見て実際に触ってほしかったからです。とにかく目立ちますし。

よってほとんどが私が実際に使用している私物です。

流石にこれを他の人に任せてセッティングしてもらうわけにも行かなかったので前日からCP+の会場であるパシフィコ横浜に入り設置のお手伝いをしていました。

BenQの展示はほぼすべてカラーマネジメントモニター

BenQブースはカラーマネジメントモニターがメイン

今回のBenQブースの面白いところは1機種を除きすべてが写真や映像編集用のカラーマネジメントモニタであること。

正確な色再現、ハードウェアキャリブレーション、認証カラーのコンビネーションを有する技術「AQCOLOR」を強く押し出しています。

色にこだわる必要がある写真家としてはモニターメーカーがこのようなコンセプトを形で出してくれるのはとてもうれしく今後を期待せざるを得ません。

Pd3220U 1

そうなるとカラーマネジメントモニタ以外の1機種が気になります。

それが参考展示されていたPD3220Uという31.5インチの4Kのモニタ。なんとThunderbolt3が2系統ありノートPCを充電しながら使用できます。そしてなによりベゼルが薄くてスタイリッシュ。

写真家とデザイナーを兼業してる身としてはかなり惹かれるモニタです。色表現に関していえば広い色域のカラーマネージメントモニタの方が優秀なのは間違いないのですが、WEBデザインに関していうとユーザーとの閲覧環境がかけ離れているとそれはそれで問題でsRGBがきっちり表示できる上で色々な機能を有しているモニタの方が使いやすかったりします。

その意味で今私が使用してるWEBデザイン用のモニタPD2710QCの超進化版という位置づけかもしれません。

登壇のメインは山岳写真の話

CP+2019で山岳写真の話

日本では山岳写真を多くの人に知ってもらいたいということを考え活動しているため、山岳写真関係以外では表に出る予定はありません。内容も写真を撮る以前のレベル、つまり山に登るための技術と知識に注力しています。

本音で言えば職業山岳写真家なので、当然撮影技術や作例をたくさん出したいですけれど、それを行うと多くの人を危険な場所に誘うことにもなるので、山岳写真の危険性の情報が十分に浸透してない現在ではやるべきではないと考えています。

BenQさんから今回のCP+のお話を頂いたときも「山岳写真以外のことはできませんよ」と確認しました。

お付き合いも長いこともあり私のスタンスをご理解されていて、山岳写真の話をするときにリスクマネジメントの話をすることは快く承諾してくれました。

なので今回のトークショーの内容は山岳写真をするために必要な登山の技術と山岳写真特有のリスクの解説から入りました。

そして45分の登壇でなぜか90分話して、半分以上が山の話というちょっと訳がわからない内容になりました。

CP+の場で山岳遭難の件数や死亡者について延々を語るのは後にも先にも私1人かもしれません…。

山岳写真における危険とそのリスクマネジメントを知ってもらった上で、撮影アプローチとしての色彩学のお話へ。

特に私が使っている撮影手法は色彩学からのアプローチが多くモニタで色が正確に表現できることが前提で成り立っていることもあり、カラーマネジメントモニタとキャリブレーションは切り離せません。

色から写真を作るときはモニターは大事です。

色が正確で広色域のモニタを使用することで可能になる、撮影した山岳写真のイメージを正確に再現する手法を解説しました。

自分の目で見た景色をモニタ上に再現する方法

山岳写真におけるカラーマネジメント

モニタは調整してないと機種ごとに色が違って見えます。

つまりどれが正しい色何かわからない状態です。そんな状況の中で写真をレタッチしても色の基準がわかりません。その基準を作るのがキャリブレーションという作業であり、最高精度を出す仕組みがカラーマネジメントモニタに搭載されているハードウェアキャリブレーションという機能。

使用しているモニタの色が正しいことを前提とした上で、更に踏み込むと色による写真撮影のアプローチができるようになります。それが今回のCP+2019でお話した色彩学の基礎の基礎からの撮影術。

具体的なことはCP+に来てくださった人の特権だと思いますので伏せますが、内容としては【自分の思う感情と他人が思う感情の一致】や【目が見た世界とカメラが写し出す色の一致】です。

自分が伝えたいことが他者に伝わらないことは写真においては多々ありますが、それを色という共通言語を使用してロジカルに一致させる。

人の目の持つ色彩のエラーに対して素直なカメラが映し出す景色は一致することはなく、それはなぜか?どうすればあの時見た景色をモニタ上で再現できるのか、そういった内容です。

カラーマネジメントモニタを使わないと再現が難しい内容であったりしますので、ここに関してはBenQさんらしい内容であったのかなと思います。

アウトドアで使うカラーマネジメントモニタ ON THE GO

BenQ ON THE GO

今回のCP+2019でも異彩を放っていたBenQのコンセプトON THE GO。

ハードケースにモニタを入れて持ち運び、どこでもカラーマネジメントモニタを使用したレタッチができるというもの。

このコンセプトモデルを数ヶ月お借りして山岳写真を撮りに行っていました。

外部電源はサンプル品の段階で5時間ほど使えるため2日間程度なら車を拠点にしても十分な運用が可能でした。

BenQ On the go

実際にフィールドに持ち込んで撮影したらすぐその場で確認するテザー撮影のように使用することもできますし…

BenQ ON THE GO のテスト

なんなら冬山に持ち込んでしまって作業するなんてこともできます。

実際のON THE GOの運用

私の運用方法だと車の中で夜レタッチしたり、山の麓の旅館に持ち込んでレタッチしたりデュアルディスプレイとして作業環境を広くするといったものが使い心地が良かったです。

出張撮影が多い人は現場に持ち込めるテザー撮影のシステムとしても優秀に機能しそうです。

現在はSW240という解像度が低いモニタ専用の設計になっているので、商品化するのであればこのままノートPCのGPUに負担のないスペックにするのか、それともハイエンドの4KカラーマネジメントモニタであるSW271クラスになるのか興味が尽きません。

山岳写真の装備の展示

BenQ ON THE GOと相性がよいということもあり私の山岳写真の装備を展示しました。

ネイチャーフォトの中でも山岳写真は装備が特殊なので機材選びの参考になっていれば嬉しいです。独自の携行システムにNikon D4Sに14-24mm F2.8、それに装着した角型フィルターシステム。サブ機にFUJIFILM X-H1にXF16-55mm F2.8。

GITZOシステマチック5型三脚にManfrottoギア雲台405。筋トレしないと背負えない重量にはなってしまいますが、山岳写真を専門にして短くない時間をかけて作った私のベストチョイスです。

finetrack エバーブレスフォトジャケットの展示

finetrack エバーブレスフォトジャケット

現在の私のメインのハードシェルになっているfinetrack エバーブレスフォトジャケット。

ガチすぎて登山初心者にはどこがいいのかわからない製品が多いメーカーのジャケットですが、新作お披露目がなんとCP+2019。

名前から分かる通り山岳写真に特化したハードシェルジャケットです。

山岳写真専用ハードシェル

色々あって少しだけ製品開発に関わらせてもらっているのですが、それをお話する機会は別になることでしょう。

現段階で言えることは、山岳写真の撮影パフォーマンスを上げることは当然のことですが基本コンセプトは山岳写真家の命を守るソリューションであるということです。登山よりも危険な山岳写真撮影に対応できるジャケットが存在しないので作ってしまおうというのがスタートです。詳しくはこちらから。

想定意外に人が来てしまって困惑

BenQ 山写の登壇

山岳写真がニッチな世界であることを前提にそれをアピールするために今回のCP+に登壇したのですが予想ができないほど多くの人に来ていただき、後ろの方の人はあまり聞こえなかったのではないかと思います。申し訳無いことをしてしまいました。

CP+のスタッフにも怒られたらしく最終日は急遽用意したチェーンで通路にはみ出さないように規制が敷かれていました。

これだけ多くの人が山岳写真に興味を持ってくれていることがわかり、草の根活動で魅力を発信してきた身としては嬉しい限りです。

写真映像用品年鑑

ちなみに今年の写真映像用品年鑑のメインは山岳写真になっていて特集も組まれています。

最近は山の写真を見ることが増えてきたのでちょっとだけ山岳写真ブームが来ている…のかもしれない。

初めて山岳写真に触れる方には面白い内容になっていると思います。ただ山岳写真でのリスクマネジメントについては具体的には書かれていないので別で勉強する必要はありますので注意が必要です。

CP+でモニターの重要性と山岳写真の話ができて大満足

CP+2019登壇

今回のCP+2019のBenQブースでのセミナー内容や山岳写真の装備の展示などは写真を撮る前に山の危険性を知るべきという私の個人的な事情が全面に出ています。

それにも関わらず自由にやらせてくれたBenQさんには感謝しかありません。

なのでこちらも気合を入れてアウトドアメーカーであるfinetrackさんを巻き込んだりアウトドアフィールドでカラーマネジメントモニターの実験をしたりと準備にすごく時間がかかったイベントとなりました。

特に今回触れた色から写真を作っていくやり方は広い色域を持つカラーマネジメントモニタではないと難しく、その理由を説明できたのも大きな成果です。

また業種をまたぎ色々な企業や人が山岳写真のために動いてくれているのが感じられ次へとつながる予感がしました。

もっとアウトドア業界とカメラ業界が協力しあって安全で素晴らしい写真を撮れるようにしてくれると最高ですね。そうしたら私も次のステップとして撮影技術や色彩理論に踏み込むことができますので、引き続き山岳写真の情報を発信していこうと思います。

BenQさんはカラーマネジメントモニタに強いメーカーですから、次は撮影のワークフロー解説からLightroomを使用したレタッチまでやってみたいものです。

それではみなさん、次はCP+2020で(もし私が呼ばれたら)お会いしましょう。

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