カメラマンが撮影した写真でパンフレットを作るというは販促の基本です。
飲食店やサービス業であればどれだけWEBに力を入れたとしても実店舗でメニュー表がないということはほぼないでしょう。
カメラマンは写真撮影に関して圧倒的なアドバンテージがあります。高品質な写真素材が撮れるので、フォントを載せるだけでもクライアントの求めるクオリティに達することがあります。 本職のデザイナーに及ぶことはありませんが、駆け出しのカメラマンさんやこれから幅を広げて行きたい人はちょっとしたDTPデザインができるとポートフォリオのデザイン性も上がりますし、セットで仕事をもらえるようになるかも知れません。
写真は印刷の分野に入りますが最近はデジタル一眼レフのみ、印刷はしないというカメラマンさんも増えて来ています。
これも時代流れですが印刷の需要はまだまだあるのでデータの仕組みを理解しておくと写真の撮り方やレタッチ技術の向上にもつながります。
覚えておくと便利な印刷の基礎知識とIllustratorの参考書1冊読めばできるデザインのレベルで話を進めていきます。
印刷に使用するデータはCMYK
デジタルでデザインするときは加法混色であるRGBと減法混色であるCMYKというカラーモードがあります。
デジタルカメラは色が重なるほど明るくなる加法混色のRGBデータですが、これを印刷用のデータにするときはCMYKに変更する必要があります。
CMYKは色を重ねるほど黒くなっていくもので絵の具と考え方は一緒です。多くの人に馴染みがあるのはこちらの混色です。
CMYKデータを使用する際の注意点
PCで見ている色と印刷したときの色が違うということは写真プリントをするとよくわかると思います。様々な要素がありますが大きくわけて2つです。
モニタの色が正確でない
デザインや写真に強い業務用のモニタはデフォルトの設定であってもそれほどおかしい色にはなりませんが、廉価帯のモニタは「一般の人がキレイと思う見た目」を基本としているものがあります。
モニタの設定で静止画モード・ムービーモードなどで色がガラリと変わるのが典型例です。 またパネルも安価なものを使用しているためモニタ自体に色を再現できる能力がなかったり、真正面から見ないと正確な色が出ないムラがあるものもあります。 写真の色を正確に表示して印刷まで持っていくならばきちんとしたモニターが必要を使うのが理想的です。
CMYKはRGBよりも色再現域が狭い
デジタルカメラやPCモニタでは色鮮やかだけれども、印刷したらくすんでしまうというのは色の作り方の特性上仕方のないことです。
よってPCモニタで作業するときもCYMKでどこまで色を出せるかを考えなくてはなりません。
モニタとPCの色をマッチングさせるのがキャリブレーション
PC上でのデザイン画面とプリントで見当違いな色になってしまうと仕事として成り立たなくなるので、それを合わせる必要があります。 それがキャリブレーションと言われるシステムです。
色の合わせ方はメーカーによって様々で、モニタに適正な色を読み込ませて調整するものもあれば、高価格帯になるとプリンタの出力を元にモニタとプリンタの色を一致させるものもあります。基本的にはキャリブレーションツールを使用してカラーマネジメントを行います。
ラクスルなどの安い印刷所に出すときはキャリブレーションしたモニタを使っても当たり外れがありますが、自宅で写真用紙を使用してインクジェットプリンターで印刷をメインにするなら導入の価値があるものです。
私は個人としての仕事のときはX-liteのカラーモンキーフォトを使用しています。
Photoshopで印刷のシミュレーションができる
表示>校正設定から印刷後にどのような色味になるのかのプレビューが行えます。
正確な色に近づけるためには事前のキャリブレーションは必須ですが、使用しない環境でもある程度の目安になります。
プリント用紙のプロファイルを使用する
使用しているプリンターのドライバをインストールするとモニタ上の色とプリンタの色をマッチングさせるためのプロファイルがインストールされます。
Photoshopの校正設定から使用するプリンターと紙のプロファイルを指定することで実際の色のシミュレーションを行うことができます。 モニタとプリンターをキャリブレーションしてある場合はマッチングさせたプロファイルを選択します。 これはPhotoshopやLightroomから写真を印刷する際にも必要な知識です。
特にレタッチを刷る際はWEBに合わせるか印刷に合わせるかで作業変わりますので、覚えておくと1つ上のレベルのレタッチができるようになります。
IllustratorでDTPデザインを行なおう
撮影した画像データにフォントを載せるだけでのデザインです。
これくらいなら参考書でIllustratorの操作さえ覚えればほとんどのカメラマンが作れると思います。このレベルでも私の経験だと結構需要があります。30分程度でさくっと作っています。
ちなみにカメラマンの多くはレタッチをPhotoshopで行うと思うので簡単なチラシやPOPであればPhotoshopで作ってしまった方がアプリケーション操作に慣れているため簡単です。
しかしPhotoshopはラスターデータ(点の集まり)に対しIllustratorはベクターデータ(数値演算)です。 Photoshopで印刷用のデザインをすると文字などがギザギザになって出力されてしまうことがあるため、デザイン現場では印刷物はオブジェクトが劣化しないIllustratorを多用します。
最初はPhotoshopでDTPデザインしても仕事が大きくなってくると確実にIllustratorを使わざるを得なくなりますのでスタートから使用することをおすすめします。
印刷用のデータを自分で最初から作るのは大変なので、勉強も兼ねてラクスルのテンプレートを使用すると便利です。
Illustratorで使えるテンプレートはこちらからダウンロードできます。
写真はPhotoshopで編集してIllustratorに配置する
写真データを直接Illustratorで使用することはありません。PhotoshopでCMYKに変換してPSDやTIFFファイルで保存してからIllustratorでCtrl+Shift+Pで配置します。
これを忘れると印刷したときに色味が変わってしまいます。保存形式はJPEGでも問題ありませんが、背景として加工を入れる可能性がある場合はPSDで保存しおくと劣化せずに編集することができます。
そうすることでIllustratorでは「画像のリンク」として扱われ小さいファイルサイズで表示されますのでたくさんの写真を扱っても動作が重くなることはありません。
トンボと仕上がりサイズ
印刷物は巨大な紙に同じデザインを複数印刷してから裁断機にかけます。
よってサイズギリギリに写真などを配置すると印刷されないことがあります。 DTPデザインではこれを防ぐために実際のサイズからはみ出すように写真やカラーを配置します。こうすることで裁断にかけても家庭用インクジェットプリンターの「フチ無し印刷」ができます。 多くの印刷所では裁断する線であるトンボの更に内側に文字など必ず印刷しなければならないもの配置するように指定があります。
文字はアウトライン化する
デザインが終わったら入稿用のデータの作成に入ります。
まずはフォントをパスに変換します。入稿した印刷所がデザインで使用したフォントを持っているとは限らないからです。 最近の流行であるオンデマンド印刷やラクスルのようなWEBに特化した印刷所はたいていフォントをアウトライン化する指示があります。
これを忘れるとデータチェックに引っかかり納期が遅れたり、最悪の場合デザインがおかしくなり印刷されてしまいます。 自分でテキストオブジェクトを選んでアウトライン化しても漏れが出る可能性があるため、以下の手順が有効がおすすめです。
文字のアウトライン化手順
- すべてのロックを解除
- テキストを選択
- アウトライン化
まずすべてのオブジェクトのロックを解除します。作業中にレイヤーやオブジェクトをロックすることもあるためです。
すべてのテキストオブジェクトを選択します。これで作業画面の中のすべてを選択できますので一部アウトライン化を忘れるというミスを防げます。
文字をアウトライン化します。アウトライン化すると移行文字の編集はできなくなりますので注意が必要です。
画像を埋め込み保存する
最後にIllustratorに配置した画像を埋め込みます。
ファイルを保存すると表示されるウィンドウの「配置した画像を含む」にチェックを入れます。 画像を埋めこまずに入稿すると、印刷データが置いてある位置と画像が置いてあるフォルダのディレクトリ構造が一致しないと、データを開いても画像を読み込むことができません。 しっかりと管理していれば画像フォルダごと入稿しても大丈夫ですが、Illustratorのファイルの中に画像を埋め込んでしまった方が1つのファイルを入稿するだけで済むので確実です。
画像を埋め込むとIllustratorのファイルサイズが巨大になるので必ずデザインが終わったあとの最後の処理として行います。
編集用のファイルとは別名で保存する
文字をアウトライン化したデータは上書き保存ではなく別名で保存します。一度アウトライン化した文字は文字ツールで編集することができなくなるので注意してください。
上書きしてしまったときの絶望感はPhotoshopでレイヤー結合したものを上書きしてしまったときと同等の破壊力があります。 慣習なのかアウトライン化したデータは「xxx_ol.ai」のように名前を付ける人が多いです。
印刷データを入稿
ラクスル 文字のアウトライン化と画像の埋め込みが完了したら入稿データとして完成です。
印刷所によって対応できる入稿形式が様々ですが、ラクスルなどコストパフォーマンスが良くお手軽な印刷所を使用するなら、このやり方が確実です。
カメラマンが知っているとちょっと得する印刷知識
自宅でプリントするときでもPhotoshopの校正の使い方を覚えておくと便利です。キャリブレーションしてプリンタとマッチングしておけばかなりの精度で色味を合わせることができます。
またカメラマンとして活動に幅を広げようとするときも簡単なチラシができて入稿までできると撮影時に「簡単なチラシなら作れますよ」と営業できます。 ブツ撮りをやっている人ならばクライアントのデザインデータを掴んでおくとリピート率が高まり、囲い込むめるため安定も期待できます。

撮影に専念したいフォトグラファーも自分のポートフォリオもカッコよくすることができるため公私共にメリットがあることだと思います。 最近は印刷物の勉強を刷る環境が整っていて、ラクスルならA4片面フルカラー100部を700円で印刷することができるため、DTPデザインと発注の練習場所としては最適です。
写真撮影を仕事にしていると、画像データを印刷物として使用される可能性は非常に高いです。自分の名刺や年賀状からIllustratorとデザイン入稿の勉強をするのもおすすめです。写真に関わっている人、これから参入を考えている人は印刷物を発注できるようになるとよいのではないでしょうか。
スポンサーリンク
コメントを残す