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山岳写真の学習カリキュラムを作るためにフィールドワークテストをしてきた

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山岳写真フィールドワーク講習

山で写真を撮ることを仕事にしていて、去年はアウトドアメーカーfinetrackや撮影機材ショップの銀一さんなどで山岳写真のセミナーをやらせていただきました。

しかしセミナーではどうしても初心者を対象にしたリスクマネジメント、写真の基礎から入らざるを得ない限界があります。

山に登り写真を撮るリスクマネジメントは山岳写真では当然の話なので、山岳写真家の方なら誰でも講義ができますし、去年は頑張って教科書も作ったのでfinetrack TOKYO BASEに限っては店員さんや山岳ガイドさんが解説できると思います。

やっぱり写真はフィールドで撮影してなんぼの世界。タイムスケジュールから天候予測、被写体の見つけ方、撮影手法、レタッチを1つの流れで理解しないと実践的な技術が身につきません。

2019年の目標は山岳写真家を育てること。早速行動に移しテスト受講者として冬山の雪上訓練もしっかり受けていて、美術畑出身でロジカルアプローチとの相性がよいredsugarさんにご協力いただきました。

北アルプスの撮影は西穂高岳

新穂高ロープウェイ

ロケ地は雪山初心者でも比較的安全に登れる西穂高岳。奥飛騨温泉郷新穂高にある新穂高ロープウェイから登山開始。

山写の山行スタイル

Redsugarさんが撮ってくれた私。もちろん装備はグレゴリーのデナリ100。横に刺さっているのはGITZOシステマチック三脚GT5543LSとManfrottoギア雲台405。全世界どこを登るにもこの組み合わせです。

Nikon Z7

私の方は本業の撮影とは切り分けての山行なのでNikon Z7とNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sでの山岳写真でのテストを兼ねて撮影。逆光には強いレンズですが、なかなかおもしろいフレアとゴーストの出方をするレンズです。

西穂山荘のおでん

西穂高岳稜線近くの西穂山荘を拠点に。ひとまず休憩と撮影準備を兼ねて軽食のおでんで腹ごしらえ。

西穂山荘と焼岳と乗鞍岳

撮影準備をしてから西穂の稜線へアプローチ。振り返ると西穂山荘に奥に焼岳と乗鞍岳。奥行き感の出し方や切り取り方のロジックを説明しながら登ります。

西穂丸山

爆風の稜線で撮影スタンバイ。決して難易度が高い場所ではありませんが数時間動かずに滞在するため冬山登山の基礎知識に加えて山岳写真特有のリスクマネジメントの考えが必要になります。

装備・知識どちらが不足していても凍傷・低体温症や体調不良を起こす危険があります。

笠ヶ岳の撮影

被写体を数点に絞り、色々な撮影アプローチを解説し実践してもらいました。消失点の設定・ポジションの取り方と画角の選択、色彩とオブジェクトによる視線誘導など。

私も隣に三脚を立てて「ここがこうなっているから、ここで奥行きが作れる」といったロジックを説明して撮影をしてもらうという繰り返しです。法則を理解してもらってからはそれを色々な角度から撮影してレビューするという流れで撮影しました。

山岳写真の奥行き表現

日照条件による構図の取り方の説明。山岳写真で光によって表現できるものが目まぐるしく変わります。被写体である笠ヶ岳は3000m峰なので谷を入れた広角の構図を夕方に取るとシャドウが強く出る箇所が必ずあります。

夕方の撮影時間は短いので、この条件を日が沈む前に予測してイメージ通りの作風する手法の解説などもしました。

奥行きを作る撮影手法

遠近感の技法

超広角の強烈なパースに頼らない遠近感の技法。自分の立ち位置や注視点をどうやって作っていくのかの解説で一緒に撮影した作例です。

説明的でストーリーをつくる構図

山岳写真の遠近法

たくさん撮った写真の中の1例。西穂丸山の稜線を撮影した作例です。これは登山者である自分がこれから進む道を見ているというストーリーで組み立てています。

遠近法の解説

足元の道は「何もないのに領域を大きく取っている」ため写真を引き算で考えるセオリーから考えれば削る対象です。特に被写体をシンボル的にとらえて特徴を捉える山岳写真では奥にある西穂高岳にスポットを当てます。

ここでは西穂高岳が主題ではなく、「これから登る西穂高岳」が主題。よって今自分が立っている場所、これから向かう山、そこから更に進むべき道を説明する必要があります。

そこで超広角14mmを使用し、消失点まで視線を誘導してそこから登る山へとつなげています。

これは山に登る人だからこそ得られる着想であり、山をただの被写体とは捉えずに自分の気持ちを写真に乗せることができる手法で撮る側も楽しく、見る側も楽しいストーリーのある写真の作り方です。

Nikon Z7の堅牢性

今回テストで使用したNikon Z7。バッテリーの持ちやFTZとの連携には難ありですが堅牢性だけを見るなら優れたパフォーマンス。結露と凍結を繰り返してもエラーを出すことはありませんでした。これは大きな収穫です。

西穂高の吹雪

朝起きたら吹雪でおそらくは稜線の視界はゼロ。撮影できるコンディションではなく、なによりも稜線に出るのが危険な天候だったので「これから八ヶ岳に向かう」とお互い即決し、時々ラッセルしながら下山。

霧ヶ峰で構成の講習

冬の霧ヶ峰で撮影

北アルプスなど、標高のある山の稜線は元々被写体力があるため素直に切り取るだけで「いい感じ」に撮れます。そこで拓けているけれども目立った物が少なく構成力が必要な霧ヶ峰に場所を移し講習開始。

奥行き感を出すための画角

ここでの課題は遠近感と画角。ダイナミックな表現をするために広角レンズを使いハイアングルを撮ることは多いですが、無目的でそれを行うとどのようなデメリットがあるのかを実際に撮り比べながら解説。

広さの表現

広さを表現する場合に広角を使うのは定番ですが、その分余計な要素が乗りやすく写真を複雑にします。それに対して標準の画角で必要なものだけを切り抜く。その結果どちらのほうが「広さ」を表現できるのかを実践。

表現したいことをオブジェクトから選択していく構成のアプローチを解説しました。

角型フィルターの実践

NiSiの角型フィルター

霧ヶ峰全域を見渡せる蝶々深山に到着した時点で日が沈み始めたため、輝度差のコントロールで多用するフィルターワークの解説と実践。私はNiSiさん、redsugarさんはKANIさんのフィルターを使いました。

霧ヶ峰からの夕日

霧ヶ峰からは中央アルプスがよく見えますl.雲の動きを作ったりする際にはNDフィルターが役に立ちます。

小斉の湯

北アルプスから下山してそのまま八ヶ岳という無茶をしたので撮影終了後は疲れを癒やすために茅野の小斉の湯へ。私が八ヶ岳登山した後によく行くお気に入りの温泉です。

横谷峡谷で渓谷撮影

横谷峡で撮影

天気によってシチュエーションの変化が少なく、構成要素が複雑な渓谷はネイチャーフォトの勉強にすごく向いていると思っています。なので最後の講習は横谷峡谷でフィールドワーク。

横谷峡谷の渓谷

主題・副題の選択。前日の霧ヶ峰で実践した「広さ」のための画角の選択など今までのフィールドワークで解説してきた撮影方法をすべて組み合わせた内容となりました。

つららの撮影

冬の横谷峡谷はつららもたくさん。

複雑な要素のまとめ方

最後の総仕上げとして、氷爆と渓谷の組み合わせの撮影。岩に雪がかかっていたこともありしっかり構成しないと何が何だかわからなくなる被写体です。

広角で寄って撮影したり、標準で渓谷と滝を圧縮させたりポジションをコントロールしたり…。色々なアプローチで切り取り方を模索しました。

撮影した写真のレビュー

写真のレビュー

八ヶ岳に住んでいるのでそのまま自宅の作業部屋で、撮影した写真を見比べてお互いのアプローチの確認。

私が自作PCとBenQ SW271、redsugarさんがMacbookProとBenQ PV270を使用。

今回は構図の組み立て方やロジックを解説しながらの撮影だったので似ている構図になるのが前提で、その上で微妙に出る違いを「なぜそうしたのか」「ここにはどんな意味があるのか」ということの検証と解説を行いました。

こうすることでこちらの思惑を理解でき、現場では意識しなかった新しい発見や改修点などの発見ができます。当然私にはなかった着想をもらうこともできるので、お互いが勉強になる場でした。

山岳写真の勉強法を学べた貴重な体験

被写体力の強い笠ヶ岳

私はBtoBが基本で写真を売る仕事をしているため作品を世に出すには様々な制限があります。しかしそれでも多くの人に日本の素晴らしい山の写真を見てもらいたい。そして山に登ってもらいたい。

なら山岳写真家を育ててしまえばいいのではないか…しかし誰かに何かを教えることや教育の経験が圧倒的に不足している。研究も本職ではありますが、師と数年一緒に暮らし経験ベースで写真を学んできたので言語化することが難しいのです。

さらに踏み込むと初心者の人が何がわからないのかがわからない。そういう根本的な問題もあります。

そういう経緯から行なったのが今回のフィールドワークです。

つまりは私が山岳写真の勉強のカリキュラムを作るためのもの。だから協力してくださったredsugarさんにはお賃金をお支払いしました。

これからも育成カリキュラム制作に協力してくれる山屋さんやカメラマンを見つけていこうと思っています。ゆくゆくはドキュメントにまとめて多くの人に配布したり、一緒に撮影してくれた人が第一線に出て山の魅力を発信してくれると嬉しいなと思っています。

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