プロがF値固定レンズを使う理由を初心者でもわかるように解説しよう

F値固定のレンズ 24-70mm F2.8

プロはみんなF値固定のレンズをつけています。ブライダルフォトはほぼ全てといっていいでしょう。もちろん高画質でありF2.8などシャッタースピードが出るのも理由の1つですが、どうしてもF値が固定されてる高級なレンズを使用しなければならない理由があります。

それを初心者にも分かるように説明します。絞りとシャッタースピード、ISO感度の関係を理解しているとより理解が深まります。

F値(絞り)とは

レンズの絞り
レンズに取り込む光の量を調整する数値です。F値が低いほど絞りが開いて多くの光を取り込めます。レンズのF値はレンズの仕様の最小F値以下にすることはできませんが、F値を上げる分にはF22くらいまでならどのレンズでもできます。

つまり最小F値の低いレンズは「大は小を兼ねる」という意味で購入するレンズの有力候補に上がるわけです。

F3.5-5.6とF2.8やF4の固定のズームレンズはどう違うのか?

F値変動と固定ズームレンズ
まず一眼レフのレンズにはF値が2つ書かれているレンズと、1つか書かれていないレンズの2つがあります。
具体的に18-200mm F3.5-5.6と24-70mmF2.8で比較します。

18-200mm F3.5-5.6

  1. 18mmの最小F値が3.5
  2. 200mmの最小F値が5.6

24-70mm F2.8

  1. 24mmで最小F値2.8
  2. 70mmで最小F値2.8

F3.5-5.6のようにF値が2つ書いてあるレンズはズームで最小F値が変わります。これが仕事で写真撮るカメラマンにとっては扱いづらいものなので、プロの多くはF値固定のレンズを使用します。

F値が低いことのメリット

F値が低い=一度に大量の光を取り込めるのでシャッタースピードがものすごく速くなります。F値を下げるほど被写界深度が浅くなり背景がぼけます。

同じ明るさでF値だけ変更した時のシャッタースピード

  1. 18mm F3.5 = 1/60秒
  2. 200mm F5.6 = 1/30秒
  3. 24-70mm F2.8 = 1/80秒

カメラの露出計算表

F値(絞り)は√2単位で計算することを基本とします。一眼レフではもっと細かく分けられていますが、露出の計算が難しくなるので、まずは表の数値を暗記できるようになりましょう。コツは1.4と2の2つのF値を覚えることです。あとはその数値を2倍にしていくことで、F1.4・F2・F2.8・F4・F5.6・F8〜と簡単に覚えることができます。この数値の変動を「一段」といいます。

ここで一番重要なのは絞りを1段変更すると、シャッタスピードが倍変わるということです。
絞りを1段下げればシャッタスピードは倍に、1段上げれば半分になります。

F5.6に対してF2.8は4倍のシャッタスピードの速度を出すことができます。暗所でもシャッタスピードを速くすることができ、適正な露出で撮れることから「明るいレンズ」と呼ばれたりもします。

広角ほど手ブレせず、望遠ほど手ブレする

望遠ほど手ブレする
一眼レフでの撮影の一般的な目安として手ブレの限界値=画角/1があります。

18mmならば1/20秒以上、200mmならば1/200秒以上のシャッタースピードが必要です。一眼レフ初心者が最初に買うであろうAPS-Cという規格のものだとこの条件がさらに厳しくなり、18mmで1/40秒以上、200mmで1/300秒以上のシャッタースピードが必要です。

ここでズームレンズF3.5-5.6を考えます。

  • 18mmは1/20秒以上必要 →最小F3.5
  • 200mmは1/200秒以上必要 →最小F5.6

18mmを使用する場合は特に問題がありません。大問題なのが200mm F5.6です。F3.5よりもシャッタスピードが出ないF5.6で1/200秒を超えるシャッタスピードが必要ということです。

ズームレンズは基本的に望遠側のシャッタスピードに合わせる必要がある

望遠側にシャッタースピードを合わせる必要がある
F値変動と一番格闘する撮影はおそらくはブライダルフォトです。私も100件程度の経験があります。被写界深度をコントロールして芸術的な作風を要求されるので基本はAモード、絞り優先と呼ばれるモードを使用します。

絞り優先(Aモード)

絞り(F値)を自分で任意に設定でき、シャッタスピードはそれに合わせて自動でカメラが合わせてくれるモード

ブライダルやイベントの撮影ではズームを駆使して撮影します。その時に一番気をつけなければならないのが手ブレ・被写体ブレです。それを避けるためにシャッタースピードを注意します。

ズームレンズの撮影で犠牲になるのは高感度による画質劣化

18-200mmのレンズだと18mmの撮影からいきなり200mmの画角に変えることを想定する必要があるので、シャッタースピードの基本を200mmで手ブレしない1/200にする必要があります。

そのために犠牲になるのが画質です。

望遠側のシャッタースピードを出すためにISO感度を上げる必要があるからです。室内で200mm F5.6で手ブレしないシャッタースピードを出そうとしたらISO6400以上がほとんどです。

プロカメラマンとしてクライアントの期待に応えることのできる代物ではありません。 ISO感度を極力あげないようにするためにF値固定のレンズが必要なのです。

F値固定のレンズは露出の変動をコントロールしやすい

18-200mm F3.5-5.6と、24-70mm F2.8・70-200mm F2.8の組み合わせの比較をしてみます。すべて同じ露出(明るさ)になるようにすると下記のようになります

基準となるカメラの設定

  1. 18-200mm F3.5-5.6 ― S1/200秒 F5.6 ISO 6400
  2. 24-70mm F2.8 ― S1/80秒 F2.8 ISO ISO800
  3. 70-200mm F2.8 ― S1/200秒 F2.8 ISO 1600

もちろん70-200mmF2.8でもF5.6でシャッターを切ることがあります。その時はF値変動レンズと同じくISO6400になります。ここで重要なポイントは18-200mm F5.6は200mmを使うことを想定して基準としてISO6400を維持する必要があることです。

50mm領域ならF4程度の絞りになりISO感度を上げずに高画質で撮れるという機会を捨てなければなりません。少しのズームで最小F値がどう変化するかわからないので、200mm F5.6に合わせないと手ブレの危険があるからです。

F3.5-F5の領域は実質的に機能しません。そこにISO感度とシャッタスピードを合わせてもズームすると勝手に変動して手ブレ写真を乱発するからです。F値の変動が感覚でわからないので、F5.6に合わせるしか選択肢がありません。

対してF2.8のレンズの場合はどのズーム領域でもF値が固定されていますので、基準をF2.8に合わせることができます。

F2.8だと被写界深度が浅すぎると判断した場合、ダイヤルを4回まわしてF値を5.6にし、ISO感度もダイヤルで4回まわして増感する。こうすることで様々な被写界深度を扱え、極力ISO感度を上げずに画質をギリギリまで追い込むことができます。

ブライダルフォトグラファーはせっせと走り回りながら実はこのような露出の計算をすごい速度で行っています。慣れると身体が勝手に動くようにもなります。

F値固定レンズのメリットは撮影機会を増やすこと

静物の撮影でもない限り、F値の変動するタイミングがわからないことからF値変動の18-200mm F3.5-5.6のようなレンズはF5.6以上のF値しか使えない。対してF値固定のレンズは設定をコントロールしやすく、ISO感度とのバランスを取り取れるF値のバリエーションが多いのです。

手持ちでズームを多用する撮影機会が多い人はF値が固定されているレンズを使用することをおすすめします。シチュエーションに合わせてISO感度とシャッタースピードのコントロールを感覚で行えるようになるとレベルが1つ上がります。

F値固定のズームレンズは高倍率化できない

F2.8なら24-70mmの3倍ズーム、F4ならば24-120mmと5倍ズームのようにF値固定のレンズは18-200mmのように高倍率にはできません。画角だけで考えると18-200mmの方が撮影機会は多いのですが、ブライダルのような「プロ」と呼ばれる人が必要な撮影はF値の選択肢の多さと露出コントロールの比重が高くなるので、プロはF値固定のレンズを多く使います。

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F値固定のレンズ 24-70mm F2.8

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