登山は軽量化が基本。余計な荷物を持っていくべきではないというのが定説です。
体力と筋力を無駄に使ってしまうため自分の体力を把握していないとバテて事故につながるためです。しかし写真を本格的に撮ろうとするほど重量が増していき、登山用具よりも撮影機材の方が重量が上回ってしまうことがあります。
登山で一眼レフを持っていく人はカメラなしでその山が登れることが前です。
その上で山岳写真の撮影を楽しむための登山経験・体力と撮影機材のバランスを考えてみます。
ベースウェイトと組み合わせて考える
ベースウェイトとは着用しているウェア等を含まずに、食料・水・ガスなどの燃料を省いた背負う荷物の重量のことで軽量化によって安全な登山を行なうひとつの考え方です。
初心者:ウルトラライト(5kg以下)基準
重量5kg以下なので水と食料を加えたザックのトータルの重量は7kg程度になります。
登山初心者でもそれほど負担がなく歩くことができます。初めて登山をする人はまずはベースウェイトで5kg程度に収まるように登山に持っていく荷物の構成を組んでみましょう。
背負う荷物のみの計算なので行動着やグローブなど常に身につけているものは含みません。 春から晩秋の低山に対応できる登山用具の構成をまとめてみました。
基本的に使用経験のある登山用品を紹介するのでメーカーに偏りがあるのはご容赦ください。
撮影機材 | ||
---|---|---|
例 | 重量 | |
一眼レフ初級機〜中級機 | Nikon D5300 | 530g |
レンズ | Nikon AF-S DX Zoom Nikkor ED 18-70mm F3.5-4.5G (IF) | 390g |
カメラケース | Lowepro トップローダーズーム 50 AW2 | 330g |
カメラホルダー | COTTON CARRIER STRAP SHOT EV1 | 250g |
登山用品 | ||
例 | 重量 | |
ザック | mont-bell グラナイト®パック 30 | 1070g |
ハードシェル(上 | finetrack エバーブレスフォトンジャケット | 285g |
ハードシェル(下) | finetrack エバーブレスフォトンパンツ | 198g |
スパッツ | MAMMUT GORE-TEX Gaiter | 230g |
防寒用ダウン | MAMMUT BROAD PEAK LIGHT IS JACKET | 320g |
水筒 | サーモス 山専ボトル FFX-500 | 280g |
トイレットペーパー | 1ロール | 140g |
エマージェンシーシート | モンベル エマージェンシーシート | 50g |
ジェットボイル | ジェットボイル バーナー ZIPジップ | 380g |
着火用ライター | SOTO ポケトーチ | 50g |
替え靴下 | finetrack メリノスピンソックスEXPレギュラー | 88g |
速乾タオル | finetrack ナノハンカチ | 40g |
ストック | BLACK DIAMOND トレイル プロ ショック | 680g |
ホイッスル | ハイマウント FOX40 エクリプスホイッスル | 23g |
テーピング | 3M テーピング マルチポアスポーツ ホワイト | 110g |
ヘッドライト | Black Diamond ヘッドライト コズモ | 270g |
ツエルト | finetrack ツエルト2ロング | 270g |
撮影機材:1.5kg 登山用品:4.5kg 合計重量:6kg この装備でトータルのベースウェイトは4.5kgです。
ベースウェイト5kg以下だと残り500gで一眼レフを入れる計算になってしまいます。 登山をしながらシャッターチャンスを増やすにはカメラホルダーは必須と考えると、機材の1.5kgは頑張って携行してトータルのベースウェイトは6kgになります。
一眼レフをザックに入れてウルトラライトな登山は難しい結果になりました。
一眼レフを背負っての最軽量は6kgを目標に。これ以上の重量を登山未経験者が背負うと歩いている途中でキツくなってくると思います。 三脚を持っていく余裕はありませんので、登山を楽しみつつシャッターチャンスがあれば手持ちで撮影するというスタイルになります。 雨具(ハードシェル)でfinetrackのエバーブレスシリーズをおすすめする理由は他社にはないストレッチ性と軽量性があるからです。いい写真を撮ろうとかがんだり身体を捻っても生地が突っ張ることがありません。

万が一事故を起こしてしまっても1日ビバークできる構成を組んでいます。
特にツエルトは350mlペットボトルの大きさで防水・防寒・防風の機能があるため山に慣れていない人ほど持っていくべきアイテムだと思います。
この装備で対応できるのは冬季を除く日帰り登山か2500m以下の小屋泊になります。
登山初心者の方はまずはこれを目安に機材と登山用具を揃えて、1500mクラスの日帰り登山からスタートしてみてはいかがでしょうか。
まずは軽い一眼レフとキットレンズからスタート
いい写真を撮ろうと高額な機材を詰め込んでも体力に合わない重量になってしまうとメンタルがやられて撮影する気力がなくなります。これは登山しながら写真を撮る人に多くあるパターンです。
「いい景色があったらザックからカメラを出そう」と思っていても、実際に山に入るとめんどくさくて止めてしまうと思います。 思い立ったらすぐカメラを構えられるようにしておくのが山でたくさんの写真を撮るコツです。そこでカメラホルダーを使用することをおすすめします。

カメラストラップを首にかけて山を歩くのはあまりおすすめできません。
岩にぶつけてレンズに傷がついたり、ずっと首に負担がかかるので疲れてやる気がなくなってしまいます。
中級者:ライトウェイト(5kg〜9kg以下)基準
登山に慣れてきたらレベルアップして機材の充実化と登山用品のレベルアップを行いましょう。
安全性と撮影機会の充実化を目指します。山の歩き方・ストックの使い方が分かり始め、アルプスや八ヶ岳を登っても筋肉痛が出ないレベルになってきたらさらに重量を増やしても大丈夫だと思います。
撮影機材 | ||
---|---|---|
例 | 重量 | |
一眼レフフルサイズ中級機 | Nikon D610 | 850g |
レンズ | Nikon AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR | 800g |
カメラケース | Lowepro トップローティング トップローダープロ 70AW 2 | 910g |
カメラホルダー | COTTON CARRIER STRAP SHOT EV1 | 250g |
三脚 | Velbon Geo Carmagne N635MII | 2300g |
登山用品 | ||
例 | 重量 | |
ザック | MAMMUT Trion Pro 50+7L | 1710g |
ハードシェル(上 | finetrack エバーブレスフォトンジャケット | 285g |
ハードシェル(下) | finetrack エバーブレスフォトンパンツ | 198g |
スパッツ | MAMMUT GORE-TEX Gaiter | 230g |
防寒用ダウン | MAMMUT BROAD PEAK LIGHT IS JACKET | 320g |
水筒 | サーモス 山専ボトル FFX-500 | 280g |
トイレットペーパー | 1ロール | 140g |
エマージェンシーシート | モンベル エマージェンシーシート | 50g |
ジェットボイル | ジェットボイル バーナー ZIPジップ | 380g |
着火用ライター | SOTO ポケトーチ | 50g |
替え靴下 | finetrack メリノスピンソックスEXPレギュラー | 88g |
速乾タオル | finetrack ナノハンカチ | 40g |
ストック | BLACK DIAMOND トレイル プロ ショック | 680g |
ホイッスル | ハイマウント FOX40 エクリプスホイッスル | 23g |
テーピング | 3M テーピング マルチポアスポーツ ホワイト | 110g |
ヘッドライト | Black Diamond ヘッドライト コズモ | 270g |
ツエルト | finetrack ツエルト2ロング | 270g |
撮影機材:5.8kg 登山用品:5.1kg 合計重量:10.9kg ベースウェイトで11kgです。
北アルプス登山になると食料と水を含めトータルで15kg程度の重量になるかと思います。
山に慣れてきたら高倍率ズームレンズと三脚
三脚の携行とフルサイズの高倍率ズームレンズの携行が可能になるため撮影機会が多くなり、夜間の撮影も行なうことができます。
しかし小屋泊が前提となるため、夕食と重なる夕焼けの撮影は諦めなければならないことが多いです。 こちらの装備で登山になれたらテント泊をメインにした撮影スタイルに変更することができそうです。
上級者:トラディショナル(9kg〜20kg)基準
テント泊で時間に拘束されず自由に撮影することができるようになります。
このあたりから登山をしながら写真を取るという感じから写真を撮るために山に登る領域にシフトしていきます。 この領域になってくると個別最適化が激しいので各々好きなような装備を組みますが参考として機材と装備一覧例をまとめます。
撮影機材 | ||
---|---|---|
例 | 重量 | |
一眼レフフルサイズ中級機 | Nikon D610 | 850g |
レンズ | Nikon AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR | 800g |
カメラケース | Lowepro トップローティング トップローダープロ 70AW 2 | 910g |
カメラホルダー | COTTON CARRIER STRAP SHOT EV1 | 250g |
三脚 | Velbon Geo Carmagne N635MII | 2300g |
登山用品 | ||
例 | 重量 | |
ザック | カリマー クーガー70-95 | 2700g |
ハードシェル(上) | finetrack エバーブレスアクロジャケット | 530g |
ハードシェル(下) | finetrack エバーブレスアクロパンツ | 550g |
スパッツ | MAMMUT GORE-TEX Gaiter | 230g |
防寒用ダウン | MAMMUT BROAD PEAK LIGHT IS JACKET | 320g |
テント | エスパース・デュオ-X | 1500g |
フットプリント | デュオX用アンダーグラウンドシート | 200g |
シュラフ | NANGAオーロラ600DX | 1250g |
ランタン | Black Diamondオービット | 130g |
水筒 | サーモス 山専ボトル FFX-500 | 280g |
トイレットペーパー | 1ロール | 140g |
エマージェンシーシート | モンベル エマージェンシーシート | 50g |
ジェットボイル | ジェットボイル バーナー ZIPジップ | 380g |
着火用ライター | SOTO ポケトーチ | 50g |
替え靴下 | finetrack メリノスピンソックスEXPレギュラー | 88g |
速乾タオル | finetrack ナノハンカチ | 40g |
ストック | BLACK DIAMOND トレイル プロ ショック | 680g |
ホイッスル | ハイマウント FOX40 エクリプスホイッスル | 23g |
テーピング | 3M テーピング マルチポアスポーツ ホワイト | 110g |
ヘッドライト | Black Diamond ヘッドライト コズモ | 270g |
ツエルト | finetrack ツエルト2ロング | 270g |
撮影機材:5.8kg 登山用品:10kg 合計重量:15.8kg
テント泊になると食料と水を多めに持っていくことになるためトータル重量は20kg程度になります。
この重量を背負って標高差1500mの山に登るには相応の経験が必要になります。 私の経験上、背負う重量が20kgを超えるレベルから本格的なトレーニングが必要でした。ライトウェイトと同じ感覚で登山をするとすぐに足に疲労が溜まってしまうので、ストックを使って腕に重量をかけつつ足の負担を少なくして登るなどの工夫も必要になります。
テントをベースキャンプにして撮影に出るので使用するテントは二人用のもの、かつ高さがあり居住性の良いものが使いやすいです。私はエスパースのデュオXを現在使用しています。 来年はじめにfinetrackのカミナドームをテストして使い心地が良かったら替えようかと思っています。
撮影機材はそのままでテント泊ができる登山用具の充実化
中級レベルからのランクアップでは撮影機材はそのままに登山用品のランクアップを測りましょう。
山の写真を専門にしていない限り高額のレンズを何本も山に持ち込むよりも高倍率ズームを使用して撮影機会を増やしたほうがいい写真が撮れる可能性が高いからです。 山岳写真では浅い被写界深度を使用することは少ないため、28-300mmのレンズ1本でフットワークと撮影機会を最大化するのが正解の1つだと思います。
その分ハードシェルや防寒具を冬山や晩秋の北アルプスに対応できる装備に切り替えて行ったほうが行動範囲が広がります。
Extreme(20kg以上)
仕事として厳冬期の北アルプスを縦走して写真を撮ると頑張ってもベースウェイトで20kgを切ることがありません。
参考までに私の今季の基本的な装備一覧をまとめました。場所によってはストックがアックスに変わったり、クライミング用具も入るので多少重さが変わります。
撮影機材:10.1kg 登山用品:14.3kg 合計重量:24.4kg
テント泊で長期滞在が基本なのでトータルで食料と水を含めると32-35kg程度になります。ロープとか登攀用具を入れると40kgを超えることもあります。
仕事で山の写真を撮る人以外はおすすめできない構成
基本的に移動しながら写真を撮るということはありません。
撮るべき被写体を決めて撮影ポイントに着くまでカメラはザックの中に入れっぱなしです。 ポイントについてからカメラベストを着用してうろうろしながら撮影するスタイルです。 撮影機材のほぼすべてがザックの上部にパッキングするため重量の割には身体の負担が大きく、ふらつくと一気そのまま転倒する危険があります。 重量があるため機材の破損しやすいので独特のパッキング技術が必要です。

自分の体力に合わせて持っていくカメラを選ぶのがおすすめ
登山は基本的に危険がついて回るのでまずは体力に合わせて軽量化、次に事故を起こしたときのための装備を整えることをおすすめします。
その上で重量にまだ余裕があるならばカメラを持っていくという考え方がベターです。最初の登山は一眼レフではなくiPhoneなどのスマホでも充分だと思います。 登山に慣れてきて背負える重量が増えてきたら、重たい高額機材を持っていくか冬山に対応できるウエアやギアなどを揃えるか選択しが増えていきます。 自分の山行や写真のスタイルに合わせてバランスを取っていくのが山で写真撮影を楽しく行なうコツだと思います。
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