老舗旅館の会席料理撮影でも使える料理を美味しそうに撮影するワークフロー

プロの料理撮影技術

気軽にキレイに撮影する料理撮影のテクニックではなく、創立90年以上の歴史を誇る超老舗旅館の会席料理で使用するワークフローです。宿泊施設にとって料理は集客の目玉ですので毎回撮影では胃がキリキリします。スタッフが頑張って撮影したけれど美味しく撮れなくて宿泊客が激減することは本当あります。

本番撮影前のテストの写真を使って解説します。

料理撮影はレイアウトが7割・ライティングが3割

料理撮影の何が難しいかと言われれば、会席料理の並び順です。レイアウトだけで1コースに1時間は使います。ライティングの難易度は高いというよりも選択の余地があまりまりません。

料理には色々とルールがあります。目を引くものを一番前に持ってこれるとは限りません。和食には刺身(造り)は前に出すべきではないなどのルールがあり、写真撮影のためそのルールを破ってもいいかを判断するのは料理長です。大抵の旅館やホテルでは宿泊予約につなげるための料理撮影なのでカメラマンとして「一番いいやつを頼む」で着地します。

次に台物です。鍋や陶板焼きといったものの扱いです。食事のメインであることは間違いないのですが高さがあるために前に出すと後ろの料理が見えなくなります。このバランスを取りながら料理のレイアウトを決めていきます。

機材はモノブロックストロボ3灯

コメットのモノブロックストロボ3灯

基本設定としてコメットのモノブロックストロボを3灯使います。TWINKLE 03 FⅢ (300w)を愛用しています。ストロボから料理までの距離が1mのフル発光でF22で適正露出(ISO200)になりますので、大抵の料理撮影には対応できる使い勝手のいいストロボです。最小出力も1/64ですので絞りを開けて背景をぼかした写真もバッチリとれます。

モノブロックストロボを使って料理撮影をする時はドラムコードを持っていくことをおすすめします。撮影場所が指定されることも多く電源にコードが届かない事が多いからです。届いたとしても2口が多いので延長コードやハブが必要となります。


逆光と天トレの両方に対応できる配置を使う

会席料理の場合はほぼすべてでこのストロボの配置から開始します。料理撮影はすべてにおいて半逆光から逆行のライティングが撮れる機材が必要です。それに加えて天井から真下にライティングができるようにブームという機材を使用しています。日本製のストロボ周りの機材のダボと呼ばれる機材通しの接続部分の規格は外国とは凹凸が逆です。コメットなど日本製のストロボを使うのであれば周辺機材日本製で統一したほうが安全です。

私はコメットとトキスターを愛用しています。



ライティングの基本は逆光か半逆光

料理撮影のライティング

料理撮影では順光でのライティングは基本的に避けます。食材の表面にまっすぐ光があたり質感が消し飛んでしまいます。サンプルの写真でも素材の凹凸感が消えて、汚い反射面も出てしまっているのがわかると思います。しかし逆光のみのライティングだと影が強く出てコントラストが強すぎる写真になるため、料理のコンセプトに応じて食材の質感を保ちつつもナチュラルな雰囲気に持っていくかを判断します。その場合に使うライトが天トレ(天井からトレーシングペーパーを挟んで光を当てる)ライティングです。

自然でいう太陽光に近い位置にストロボがあるため人間の目には一番自然に移ります。ここからバックライトやフロントライトなどの光量を調整していき、スポットで光を当てる部分や全体的な陰影の調整を行います。逆光の影を柔らかくするためにフロントからの順光直射で極少量の光を当てるのも効果的ですが、大抵はレフ板を使って逆光からの光を反射させることで解決できます。

どうしても光の反射が気に入らないときはPLフィルターを使い強制的に反射面を消してしまいます。

レンズの画角は70mm~130mmがよいバランス

料理撮影は標準レンズの70mmがおすすめ

コース料理や会席料理で広角レンズを使うことはありません。以下に料理同士をぎゅっとまとめて取るかの勝負です。このような料理撮影はかなり特殊で、一件まとめっているように見えますが料理が前後で最大1m50cmほど離れています。よって中望遠以上のレンズ使うと背景が盛大にボケますので使い勝手がいいとは言えません。フルサイズの一眼レフならば70mm、APS-Cならば被写界深度が深いので90mmまでは被写界深度のコントロールが可能な画角です。

ここである程度のレイアウトを決めたら食器をキレイなものにかえたり、テーブルの上に和紙を敷いたりして撮影環境を整えます。旅館によっては高給なテーブルなどもあるので使えるときは現地調達します。ちなみにテーブルとテーブルの継ぎ目はLightroomとPhotoshopで修正できるため雰囲気の良い机の場合はそのまま撮影することもあります。

Lightroomでレタッチをする

Lightroomでレタッチを行う

このレベルのクライアントになるとJPEG撮って出しというおっかないことはできないので、一枚一枚Lightroomで修正します。料理撮影はタイムスケジュールがシビアなときもあるのでセッティングに時間が掛かり過ぎる場合やアシスタントが足りない時はどこまでレタッチで直せるかの逆算から撮影することもあります。すべてセッティングと撮影技術で解決するのが理想ですがプロでやっているとクライアントの都合に合わせることが第一なので、クオリティコントロールをしっかり考えなければなりません。

サンプルで使用した写真の机のつなぎ目程度ならば5分程度ですべて消すことが可能です。これは経験則ですが料理撮影で華やかな印象にするためにレタッチするコツは露出を上げてハイライトを下げることです。あとの全体的な印象はクライアントと相談して方向性を決めて行きます。

雑誌の広告媒体で使用するならば忠実な色合いのものにし、WEBで使うならば安価なPCモニタでも色があせないようにコントラストと彩度を強めに設定します。

フォトレタッチはフィルムでいう現像処理に相当します。ときには撮影時間よりも長い時間をフォトレタッチの時間に費やします。そのくらい写真の最終的な品質を左右します。一眼レフを買うほどのモチベーションの人には合わせてLightroomの勉強をすることをおすすめしています。

料理写真はレタッチが大前提

会席料理を美味しそうに撮る
F20 S 1/125 ISO200で画角70mmだとこのように撮れます。
料理撮影は色々なトラブルが起こります。仕入れた肉の色がよくなかったり、お造りのエビが撮影中に変色したりすることは日常茶飯事なので美味しく見せるためには高いレタッチスキルを要求される写真撮影です。

背景をぼかす時はまとまりを意識する

浅い被写界深度はまとまりに気をつける

会席料理を撮影する人なんて日本中探してもそれほどいないと思いますので、単品の料理撮影のテクニックを紹介します。サンプルの写真の右側がダメな例です。肉が前3枚・後ろ2枚のまとまりであるにもかかわらず前3枚の途中からボケはじめているからです。

人は生き物の眼を見る習性がありますから、人物や動物などは眼にピントを撮っておけばどんな被写界深度でも違和感が出ません。しかし料理はそういった要素がないため写真の安定性を「まとまり」に求めます。

まとめ

料理撮影はカメラマンによって手法がまちまちですが私はこのように撮影します。「プロ並に撮れる」というタイトルのコンテンツを見かけるので「じゃあプロはどのように撮っているのか」というコンテンツも必要かと思って料理撮影の基本だけ書いてみました。日本料理の会席やフランス料理のコースとなると最低でもモノブロックストロボが必要ですが、単品料理ならばどんな料理でもスピードライト2灯あればこれらの写真と同レベルの品質のものは撮ることができます。

ライティングの考え方も一緒なのでこれで経験すればモノブロックストロボを買った時に同じ感覚で撮影することができます。ライティングに興味がある方はぜひ挑戦してみてください。

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