教科書に載らない撮影技術。写真の構図のレベルを1つ上げる奥行きと動きの表現技法

すべての要素を三分割する

きれいな写真を撮るためには構図の知識は必要不可欠です。構図に従うだけだと写真の上達は難しいですが知識として覚えておくことは大事です。

写真を売ることで生活しているためブログではあまり写真を出せませんが、たまにはプロっぽい技術などを晒してみます。「どの立場での撮影技法なのか」を明確にしないと誤解を生むので前置きが少し長くなります。

せっかくなのでググっても見つからない構図の取り方をご紹介します。

写真の3つの成長段階

芸術や武道において「守破離」という考え方があります。

3つの成長段階

  1. 【守】先人の教えや型を守る
  2. 【破】型を分析・研究して最適化・改善をする
  3. 【離】自分の特性や分野に合う技術を作る

一眼レフ初心者の方はまず一般的な構図の勉強から初めて、それがなぜ「よい構図」と言われているのかを分析してください。その答えを自分の中で見つけることから【破】の段階に入ります。どんなに斬新的な構図や撮影技術であっても、基本を無視したものは「型なし」と呼ばれ内容は薄いことが多く発展が望めないものが多いです。

カメラマンと写真家の違い

本格的な写真の勉強はオランダでしました。そのままネイチャーフォトに特化してしまったので、恥ずかしながら日本でいうカメラマンと写真家の違いがよくわかっていません。恐らくですがデザイン業界のデザイナーとアーティストの違いと同じ感覚で使い分けているのだと思います。

カメラマン

仕事を受けて写真を撮る人。構図や校正・ライティングなどのルールに基づきその中でキッチリと写真を仕上げる。自分の思う「いい写真」よりも世間や業界内基準の「いい写真」を撮る。評価の基準が自分ではなく他人や市場。

写真家

撮りたいものを撮りたいように撮る。
写真に携わる人のほとんどが【カメラマン】【写真家】の両方をこなしていると思うので、日本で写真を撮っている人の分類に困惑している次第です。写真家としてのスタンスだけで生活している人が写真家なのでしょうか。

この前提で写真家の立場としての私が、私の思う通りの写真を撮ったときの結果として高確率で出てくる構図があります。パターンとして形にできたのは現在2つです。基本構図をなぞっているので良くも悪くも守破離でいうと破〜離の間でしょうか。

最初にお断りしておきます。完全に私の価値観だけの構図です。

三分割法+奥行表現

三分割構図の山の写真

ネイチャーフォトや風景写真は被写体がはるか遠くにあることが多いので、被写界深度のコントロールによって主題(最初に目につく要素)を演出することが困難です。

単純に三分割の構図に載せるだけだと遠近感がないのっぺりとした印象の写真になります。風景写真を撮ったことのある人は自分の目で見た風景と写真での見え方の違いに愕然とする人も多いと思います。広大な景色の印象を写真に落としこむのが「奥行き」です。

縦横のXY軸の考え方から基本構図をおさえて、そこに奥行きZ軸をどこまで写真に組み込むバランスを考えます。

主題を三分割ラインに置く

主題を三分割のラインに置く

この考え方は写真撮影の基本「三段分割法」。被写体の主題を三分割ラインのどこかに置くと安定する撮影技法です。この写真はメインの北アルプスの笠ケ岳という山を三分割ラインに置いています。

三分割の領域で主題・副題を分ける

主題と副題を三分割で分ける

3分割のラインで主題・副題の領域を分けます。どの写真でも使えるわけではありません。主題を損なわず演出性や装飾がプラスに働くときのみです。風景写真やネイチャーフォトでは空などがこの条件に当てはまることが多く、山岳写真では多用します。

奥行きの演出領域を作る

三分割で奥行きを表現する

のっぺりとした写真にならず、主題を引き立たせるためにはどうしても奥行き間である3Dでいう奥行きZ軸の考え方が必要となります。この奥行き表現の領域も3分割した領域を使用します。さらにパースの消失点を同じく三分割のライン上に乗せることで写真全体の安定感を出すことができます。

山岳写真では山だけではなく自分の足元を含めた被写体までがZ軸による距離感です。奥行き感を出すためにうつ伏せになるくらいまでのローアングルで山を撮ることも少なくありません。

三分割をラインだけでなく領域でも考える撮影手法

すべての要素を三分割する

  • 基本は三分割
  • 主題・副題も三分割
  • 奥行きの消失点も三分割

撮れる写真は複雑になりますが、根本となる3分割をベースにしているのでヘンテコな写真にはなりません。繰り返しになりますが教科書による正義の構図ではありません。ただ私が好きな構図というだけです。

フィボナッチ黄金比+動きの表現

日本では積極的に使われる構図ではない「フィボナッチ」ですが、私のいたオランダではよく使われていました。フィボナッチ定数とは人間が心理的に美しいと思う比率である黄金比の1つです。為替でもなぜかこの比率にチャートが動くことからフィボナッチ定数をつかった「フィボナッチリトレースメント」という手法があるくらいです。

フィボナッチ黄金比

ネイチャーフォトでありながら水平垂直すべてを無視して15度ほど傾けて撮影しています。背景を傾けて水平を傾斜させる構図は安定感がなくなるかわりに動き(運動性)がでてきます。山岳写真や風景では絶対にやってはいけない構図として書籍で見ることも多いですが、表現したいものがあるときは遠慮無く斜めにぶった斬ります。

右上の山「北穂高岳」を主題にして他の山よりも目を引かせるため、稜線に動きを出すのと同時に北穂高岳が一番高くなるようにしています。無目的に傾けるだけだと安定のない写真になるだけなので、フィボナッチの黄金比を使って構図を安定させます。

フィボナッチに当て込んで斜めの構図を安定させる

フィボナッチは円を描くように要素を分割していき、最終的な半円の中に主題を収めることに秀でている構図の技法です。複雑な要素の絡み合いを調和させることに秀でた構図です。

フィボナッチで主題と副題分ける

この写真では2つ目の分割ポイントに副題の涸沢小屋を、第三分割点〜最終分割点を主題である北穂高岳の稜線で構成しています。

主題・副題をフィボナッチの曲線にのせる

フィボナッチ曲線と被写体を重ねる

涸沢小屋の傾きと、山の稜線がフィボナッチの黄金比を構成する曲線にキレイによるようにしています。こうすることでネイチャーフォトでありながら、水平垂直を無視しても安定する構図を作っています。

この構図も良いとか悪いとかではなく「私が思うよい構図」なだけです。

構図の意味を考える

常に構図を考えて撮影する

基本的な構図で三分割・対面・放射・シンメトリーなど色々ありますがなぜそれが安定するのかの意味を考えることが重要です。本質をつかめれば被写体に合わせて最適化・アレンジが可能になります。

大事なことは基本をおさえた上で実践すること。経験のない知識は一切役に立ちません。目新しい構図でも理論づけて説明できないものは綺麗な写真に見えないものです。

基本―改善のプロセスを繰り返すうちに構図を考えて撮影するのではなく被写体が綺麗に撮れる構図をあとから検証したらこの構図だったというケースが増えてきます。複雑な構図の組み合わせなども無意識で行えるようになります。これも基本的な構図を習得していてその上でよりいい写真を撮ろうと模索した結果だと思います。

優れたフォトグラファーはそれの到達点として自分にしか撮れない「必殺技」を持っています。写真を見れば誰が撮ったかわかるのに絶対に真似できない技術です。実際の現場に行くと、どのようにしてその構図を作るのかわかりません。というよりも発想にすら至れません。それを可能にするのが基礎と経験です。

「自由に撮れ。しかし基本は大事。」「基礎は経験で必殺技への昇華する」というのが今のところの私の結論です。

繰り返しになりますが、
ご紹介した構図は私が好きな構図であって一般的に良いとされているものとは異なります。

構図や露出は色々な参考書が出ていますが私はネイチャーの構図や露出の観点だけでみればナショナルジオグラフィックが一番実践的かと思います。

ヨーロピアンのアプローチを利用しての滝のや渓谷の撮り方はこちら。


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