登山で使用する時計といえばPRO TREKというイメージは強いです。ヒマラヤ登山でのフィードバックを受けて開発されてきた背景もありブランドとして確固な地位にあります。
その【PRO TREK】の名を冠したスマートウォッチが2017年に発売。スマートフォン連携により日常生活においても使い勝手が良く、多くのギミックを搭載してるため、登山のみならずロードバイクや釣りなどのアクティビティのパフォーマンス向上にもつながる汎用性の高いスペックになりました。
日常生活の使い心地はバッテリー以外は満足できるものでした。
今回は本来の使い方であるアウトドアフィールドでの使い勝手を検証します。

登山で使用する機能
PRO TREK Smart WSD-F20の中で登山に使用するツールは下記のもの
WSD-F20の機能
- 高度計
- 気圧計
- コンパス
- マップ表示
登山で使用する計測機能は主に4つ。上のボタンでツールの表示と切り替え、下のボタンでマップの表示がデフォルトの設定になっています。いずれも画面の表示や動くが作り込まれており、見ているだけで楽しいです。
このツールとアプリケーションを連動させて山行データの計測や現在地の把握、ルートの表示などを行います。
高度計
-700m〜10000mまで1m刻みで対応しているためヒマラヤでも使用可能です。
表示できるのは2パターン。現在の標高データの表示と、24時間の行動中の標高ログの2つ。登山に慣れていないうちはあとどのくらい登れば山頂に到着するのかがわからずにモチベーションを保つのが難しいものです。
この高度計を見ながら登山をするのもよいですし、あとにご紹介するMOMMENT SETTERと組み合わせて、あとどのくらい標高上げる必要があるのかをリアルタイムで表示することができます。
PRO TREK Smart WSD-F20の高度計は、GPSによる補正機能はついていますのでオフラインの状態でも補正してくれますが、気圧の変化によって計測する手法を採用しているため標高がわかる場所では手動で高度を合わせることを公式でも推奨されています。
気圧計
登山における気圧のチェックは重要です。急激な気圧の低下は天候が悪化することが多いため行動の目安になります。日常生活では使うことが少ないツールですが、縦走登山や単独登山では遭難を回避するために必須な機能と言えます。
気圧計は手動で変更する必要はないとマニュアルには書かれていますが、計測できる環境があるのでしたら手動で補正をすることも可能です。
コンパス
WSD-F20はオフラインでのマップ表示とGPSを連動させることができるので、使用頻度は少ないかもしれません。しかし地図の読み方を勉強したり、写真撮影で光源の確認するために使用することができます。
写真撮影では夕方や朝焼けでどこに太陽があるのかで構図の作り方が変わるので重宝する機能です。
コンパス画面を表示してから1度タップすると真正面の方向にコンパスをロックすることができます。ここを基準に進む方向がどのくらいのズレがあるかを表示されるため、自分の進みたいルートがどちらの方角になるのかを一目でわかります。
地図の表示
WSD-F20の特徴は使用できるマップが複数あること。購入時に入っているものはGoogle MapとMapboxの2つ。アウトドアで使用する場合はMapBoxになります。
基本的にはBluetoothで接続しているスマートフォン経由で通信を行いマップを表示させます。これとGPS機能を連動させることで地図の表示ツールである【ロケーションマップ】で現在位置を表示しています。
注意点はこの状態ではスマートフォンと連動してる、通信圏内でないとマップが表示できない点。これでは登山での地図表示に不安が残りますので、登る山を決めたらその山域のマップをダウンロードする必要があります。
オフラインでも使えるマップとGPS機能
まずは3つある内の下のボタンを押してロケーションマップを表示させます。
次に下から上にスワイプして設定に入り、【地図のダウンロード】を選択します。
登山で使用するルートが全部入るように地図をあわせてから、下の地図を決定をタップするとダウンロードが開始されます。
当初はロケーションマップで登る山を探していましたが、ネットに接続して地図を表示して現在位置を出すため動作がもっさりしています。
地図をダウンロードする場合は現在位置に関係なく【地図のダウンロード】を選択してからマップを探す方が動作が軽くストレスがありません。
ダウンロードしたMAPはダウンロードと同じ画面にあるダウンロードした地図を表示で確認することができます。
地図をダウンロードしておくとスマホと連動していないオフラインの状態でも地図を表示することができ、GPSと連動して山行ルートを追うことができるようになります。
携帯の電波が入る山域ならダウンロードしなくても地図の表示をすることができますのが、PRO TREK Smartとスマートフォン両方のバッテリーの消費が激しいため泊りがけの登山であるなら事前に地図をダウンロードすることをおすすめします。
WSD-F20にダウンロードできるマップは1つのみで、新たにダウンロードすると以前の地図は消去されます。よって登山をするときは毎回地図をダウンロードすることになります。
とはいえスマホが通信境内にある場合はどこでもダウンロードすることができるため、うっかり忘れてしまった場合でも山に向かう途中の電車や駐車場で地図のダンロードを行うことができます。
登山での使い方
PRO TREK Smart WSD-F20のパフォーマンスが発揮されるのはもちろん登山。上手く使いこなせば登山のあり方が劇的に変化するかもしれません。特に紙の地図のみで登山をしていた人には革命的なものかもしれません。
PRO TREKSmartの使い方を探してこのページに来た人はまずはカシオ公式のクイックスタートガイドをご確認ください。基本的な設定はこれですべて行えます。
http://support.casio.com/wsd/common/file/WSD-F20_QuickGuide_JPN.pdf
WSD-F20を登山で使う下準備
- 登る山の周辺マップをダウンロードしておく
- 身長・体重・装着する腕を登録する
- MOMMENT SETTERで通知設定を行う
マップのダウンロードはご紹介した手順で進めてください。現地でもスマホの回線が入ればなんとかなります。次にPRO TREK Smartに自分の身体情報を登録します。これにより消費カロリーなどの計算の精度上がります。
上ボタンを押してツールを起動したら右から左にスワイプを繰り替えて設定画面に入ります。そこの下の方に身長・体重・装着する腕などの入力設定があります。
次にMOMMENT SETTERの設定。登る山の標高を入力しておけば残りの標高をアクティビティ画面で表示することができ、残り300mになるとアラートを鳴らすなどの通知の設定を行うことができます。延々と続く登山の登りはモチベーションが下がることが多いので、こういう通知機能をうまく利用すると気持ちを高めることができます。
MOMENT SETTERに入ったら「登山・トレッキング」を選択します。
使用する通知のON・OFFと内容を決めます。
アクティビティのTrekkingをスタート
事前準備が終わったら真ん中のボタンを押しアクティビティを起動しTrekkingの画面を出します。ここからでも登る山の標高設定とMOMMENT SETTERの通知設定を行うことができます。
設定が終わったら真ん中をタップしてアクティビティをスタートさせます。
WSD-F20の画面の登山用の画面に切り替わります。歩行速度・ゴールまでの残り標高、活動時間が表示されます。この画面を左右にスワイプすることで登山やトレッキングに最適化されたログやマップ表示などの情報を見ることができます。
アクティビティツールの地図を見ながら登山ができる
何と言ってもPRO TREK Smart WSD-F20のウリは地図とGPSの連動。自分がどこにいるのか、正しい登山道を進んでいるのかをリアルタイムに確認することができます。
再度の注意になりますが、地図をダウンロードしていない状態だとスマホとBluetoothで接続かつ、スマホが通信圏内でなければマップを表示することができません。
山の中は通信圏外であることも多いため、道迷いの対策としてWSD-F20を検討している場合は事前の地図ダウンロードは必ず行うという意識を持ちましょう。
この地図の運用方法、一見めんどくさいように思えますがダウンロードした地図を使用すればスマホとの接続を切って使用できるというメリットがあります。これが旧モデルWSD-F10からの一番の進化だという人も多いくらいです。
おすすめの省電力設定
省電力設定
- 地図をダウンロードして山行中はオフライン
- 毎日の位置情報の保存を6分
- トラッキング(バッテリー優先)
オフラインでGPSだけを動かすことでバッテリーの持続時間を長くすることができ、またスマートフォンのバッテリーの消費も抑える事ができます。まずはトラッキング(アクティビティ)をバッテリー優先に。
さらに電力消費をおさえるため、毎日の位置情報の保存を6分にしています。
今回のテストは6時間ほど歩き、アクティビティ終了時の残バッテリーが40%。日帰り登山でしたら問題なく運用ができます。
しかし小屋泊・テント泊ではバッテリーは確実になくなり、マップの表示ができなくなる可能性があるためモバイルバッテリーが必要になります。
アクティビティとロケーションマップでの地図表示の違い
WSD-F20は地図が読み込める状況なら(オンライン・ダウロード済みのどちらか)どこでも現在地を確認できるため、登山中も下ボタンでアクセスできるツール「ロケーションマップ」を使用してもルートをたどる事ができます。
運用上はこれでも問題ありませんが、アクティビティツールのTrekkingを使用すると歩行ログに若干の変化があります。それが登りと下りの色分けが行われるということ。自分の行動ログと一緒に、登っている山がどのような形になっているのかを視覚的にわかります。
またアクティビティツールを使用したマップの方が滑らかなにログ歩行ルートを記録してくれます。
道迷い対策にWSD-F20は使用できるか
使い倒してる感から哀愁がにじみ出ているGARMINのGPSMAP62SCJ。こちらにインストールしている日本の山岳地図であるTOPOと比較してみました。地図の詳細さとGPSの精度で言えばこの組み合わせが今までの定番かつ盤石。
WSD-F20のマップツールのテストに霧ヶ峰を選んだのは理由はルートが沢山あるということ。登山は計画通りのルートを通ることが大前提ですが、足を痛めたため距離はあるけれど緩やかに下る道を選ぶ、逆に日没まで時間がないためエスケープルートを使うといった想定外のケースも起こります。
そうなると当然道迷いによる遭難リスクが高くなるため、急なルートの確認が必要になります。そのときの判断の1つに使えるかどうかが気になっていました。
PRO TREK Smart WSD-F20の標準ツールで使用されているMapboxはTOPOほどではありませんが、メジャーな登山道であるならば表示する事ができるため、分岐路で「この道を進むとどこに出るのだろう」疑問は解決することができます。まだ検証していませんが雪山でのルート外れの修正も行うことができると思います。
MAPBOXに記載されているルートという制限はありますが、本来ならばハンディGPSを使用して行うルート確認と修正が時計でできるということは遭難対策としては有効です。なによりGPSは高価なので登山者のすべての人が持つというのは現実的でなく、それが売価50,000円でPRO TREKとGPS・マップが手に入ると言うのはコストパフォーマンスが抜群だと思います。
起動しているアクティビティツールの確認
WSD-F20のUI設計で少し分かりづらい点。それが今どのアプリを使用してるかの確認が分かりづらいことです。例えば登山のアクティビティを使用している中でスワイプ以外の動作(上のツールボタンや下のロケーションボタンを押すなど)させると、そのツールが起動してしまい真ん中のボタンを押してデフォルトのウォッチフェイスに戻しても、今まで使用していたアクティビティへの戻り方がわかりません。
アクティビティは終了ボタンをタップするまでバックグラウンドで動き続けるので、またメニュー>アクティビティ>使用しているアプリと進んで行けば再度表示することができます。
もっとも簡単な確認と移動手段は、ウォッチフェイスの状態で下から上にスワイプすることで起動中のアプリを確認できます。さらに下から上にスワイプを繰り返すことで現在動いているもののすべてを確認することができます。
表示したいアプリケーションをタップすると、その画面に切り替わります。この画面を更にタップします。
そうするとアクティビティに遷移するボタンが出てきますのでこれをタップ。これが使用してみた経験から一番楽なやり方でした。
アクティビティの終了
登山が終了したら画面をスワイプしてストップをタップします。これで計測は終了します。これを行わないと歩行ルートのログを取り続けてしましますので履歴を見たときに正確なルートが表示されなくなります。
歩いた登山道のログはロケーションマップを起動し、下から上二スワイプして表示される履歴表示で確認ができます。
アクティビティツールを使用して計測したルートに関しては赤線で表示されます。
モバイルバッテリーの充電は1時間半
Anker PowerCore 13000で充電したところ、フル充電にかかった時間は1時間半。充電ケーブルが外れやすいという課題はあるWSD-F20ですが、テント泊時は起床から朝食、撤収までの時間で充電すれば下山口まではバッテリーを保つことができそうです。
登山を好きになるための優れたアイテム
硬派なPRO TREKに比べてイマドキ路線なPRO TREK Smart。Android Wearを使用した拡張性や標高や気圧の表示ツールのギミック感など登山を好きになって欲しいとユーザーに歩み寄っている感じがあり、個人的には高評価です。
登山は危険なアクティビティであり、リスクを回避するためには山行ルートの確認や色々な気象データを見て行動することが必要になってきます。こういったデータは自分の経験と照らし合わせて初めて意味のあるもので、そのきっかけを比較的安価で製品化しています。
縦走登山ではモバイルバッテリーを持ち歩く必要がありますが、スマホの充電に必ず持っていくものですしハンディGPSを持っていくにしても替えの単三電池は必須なのでこのスマートウォッチを使うからといって荷物が増えるということはありません。
登山のことをもっと知りたい、レベルを上げたいと考える人が最初に手にする時計の1本目としておすすめできます。
※2017年10月現在、市場の在庫が少なく手に入りにくい状態が続いています。購入を決めている方は定価で販売しているショップがあったら手に入れてしまったほうがよさそうです。
次はWSD-F20で使用するYAMAPを検証してみます。
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