レタッチ色彩学のセミナーをやってみた感想とfinetrack ✕ BenQコラボで開催してみた経緯

定期的に行っている山岳写真の講習会の第2弾として、山岳写真のレタッチを技術を共有するセミナーを行いました。

ただの座学では面白くないので、今回はカラーマネジメントモニタを作っているBenQさんにも協力してもらい、多くのプロカメラマンと同じレベルの写真編集環境を作り、山岳写真のレタッチを一緒に行うという趣旨です。

やるなら最高の環境を提供したいというのと、カラーを繊細に扱うレタッチ技術なのでちゃんとしたモニタではないとレタッチできないというと考えからです。

…めっちゃ金かかってる。

色々あってかなり活動が制限されているフォトグラファーの私ですが、西洋かぶれであることからまだ日本の山岳写真に伝わっていない着想や技術のお話もしたかったこともあり、今回はホンキで専門分野である色彩学からをメインにしています。

受講者は初心者からプロまで

どんなセミナー内容だったのかは受講された人がレビューしてくれています。まずは写真家の横田裕市さん。国内外の風景を撮影されている方です。属性的には私とかも…。SONYのαのセミナーやトークショーなどもされているのでご存知の方もおおいのでは。業界第一線で活躍されている方です。……なんで来てくれたんだろう?

次にアウトドアライフクリエイターとして情報発信をされているy-heyさん。単独でアコンカグアなんかに行かれているそうでかなりガチなひと。

他にもみんなの防湿庫マップカメラのレンズレビューフォトコンで山岳写真を掲載して大賞を受賞し、finetrackのフォトコンでも準ブランプリ受賞したフォトコン荒らしのred_sugarさん。

同じくfinetrackフォトコンでグランプリを受賞したtaisukegt❦TEAM AICHIさんなど、受講者の方がむしろすごい人たち…。

他にも写真のプロの方やアウトドアがっつりの方がたくさんいらっしゃいました。感想などは受講者の方のレビューをご確認ください。

何はともあれセミナースタート!

色彩学を使ってRAW現像を行う

色彩学からのRAW現像

私が元々ヨーロッパ発祥の絵画技法を写真に落とし込んでいる手法を使っていたり、色彩学を写真に反映させるための研究をしていたりという背景があったため、色から写真を組み立てていく技法にはそれなりの経験があります。…一応アカデミックで研究してたしね。

ただこれは完全に私の独自の技法で、体系化されているものでもないので正直なところ正しいのかもよくわかりません。

そんなわけで「これは一般的な技術ではなく、大声で言うと怒られるやつなので用法用量を守って正しく使用してください」という前提で山岳写真を愛する皆さんにこっそりと技術共有する内容でした。

写真に正しいも正しくないもないのですが、それでも伝統的に良いとされてきたものからは逸脱することは間違いない。

ただ疑いようのないくらいに研究して理論を作り、実際にそれで実際食べていけてるので現場では通用する概念であることは断言できます…日本だとわからないけど。

普段はNSC(ナチュラルカラーシステム)オストワルト表色系という海外の表色系(色理論)を使うのですが、今回のセミナーのために日本で主流のPCCS(Practical Color Co-ordinate System)に当てはめて資料を作りました。色彩検定にも使われている日本でメジャーな表色系です。日本人の色感覚に合わせて体系化されているので、これから勉強をする人にはオススメのカラーシステムです。

そこから得られるのが撮影時に感じた自分の気持ちを色にすると何になるのか?というロジカルアプローチです。それを覚えて置くだけでレタッチで迷うことがなくなります。

テーマは色を正しく理解すること

色の認識

レタッチの手法やLightroomの使い方などのセミナーはたくさんあるので、その手の内容は不必要と思いました。

Lightroomをどう操作すると、どのような写真になるのか。そこは私自身が興味がなく、大事なのは理想とする写真をRAW現像する前に明確にすることができるか。Lightroomを始めとする現像ソフトはただのツールにすぎません。

そこで行ったのがレタッチをするために必要な知識を得るためのコンテンツ。何をゴールにすればいいのか、色をどうやって扱えばいいのか、自分の記憶色を正しく理解するにはどうすればいいのか、という内容です。ゴールが明確にならないと「いい写真に仕上げたい」という漠然とした熱意から盛って盛って…さらに盛ってというレタッチになってしまいます。

そうならないために、色とは何かを徹底的に掘り下げて眼の構造まで分解して写真に落とし込む内容にしました。

人の目はかなり歪んで色を見ている

カメラは光を素直に受け止めます。対して人の目は状況に応じて見え方が変わったり、心理状況や注視しているオブジェクトでも変化します。

なので自分の見た景色を再現することを目的とするのであれば、カメラの出す色と、自分の目で見えてる世界のカラーマッチングをする必要があります。

この処理をしておかないと自然の摂理に反したRAW現像になって違和感のある仕上がりにあります。

カラーマネジメントディスプレイの解説

カラーマネジメントモニタのキャリブレーション

正しい色をモニタで表示させるにはどうしたらいいのか?という作業をしたことがある人は以外と少ないです。キャリブレーションツールを使っていてもなんとなく設定していたり、ハードウェアキャリブレーションとソフトウェアキャリブレーションの違いがいまいちピンときていなかったり…。

今回は折角BenQさんも現場にいたので、その解説をして山岳写真においてなぜしっかりしたモニタが必要で、ハードウェアキャリブレーションがおすすめなのかの解説と実践をおこないました。

山岳写真のRAW画像を使用して実際にレタッチ

色彩理論を知っても輝度差が大きかったり、たくさんの色が混じり合う山岳写真でどのように当て込んでいけばいいのかは経験しないとわかりません。…そもそもそんな体系ができていませんし。

ということで実際に私が行っているレタッチをお見せしながら一緒にRAW現像して行きましょうということをやってみました。

その後は受講者のみなさんの席を回って持ってきてもらったRAW画像を見てヒアリングして「ここが主題?」「季節は?時間は?」「ここを強く出したいんですよね?」のように認識をすり合わせながら「だったらメインのトーンはこのくらいで、ここをこうするとそれができるよ」といった解説をしてみました。…即興なのでワリとヒヤヒヤでしたけれど(‘A`)。

2時間+1時間のアディショナルタイムの中ですべてを解説するのは無理だったので、家に持ち帰ってRAW現像の練習ができるように私が撮影したXMPのパラメーター付RAW現像50枚ほど受講者にプレゼントしました。

セミナー終了後もできる限り個別のご質問に答えてたら午前の部・午後の部合わせて10時間以上喋りっぱなしでした。

受講者同士のコミュニケーションや情報交換も行われていたので、そういうつながりを作る場としてもいいなと感じました。

山岳写真の技術書のボリュームが上がった

セミナー資料

今回のRAW現像セミナーで山岳写真技術の教本のボリュームが16Pから36Pにボリュームアップしました。これで一通り撮影機材を背負いながら山に登る知識、撮影技術、レタッチアプローチとRAW現像の解説が揃いました。

ようやく山岳写真のトータルソリューションの完成です。登山に関してはfinetrackさん、カラーマネジメントに関してはBenQさんの監修が入っているので内容も問題ないかと思います。

私はあくまでフォトグラファーなので山は山の専門家に、色は色の専門家に任せるのが一番ですよね。

ただこれの企画・編集・デザインをすべて自分で行っているので仕事のスキマ時間を使ってやるのがすごい大変。DTPは專門じゃないので多分今回ので70時間くらいはかかってしまっている…。

口頭説明がないと理解が難しいものもあるため基本的にはセミナー受講者のみにお渡しする方向性です。

セミナーをやるのは安全に山岳写真を楽しんでもらいたいため

セミナーをやる理由

空いている時間にしかできないので毎回次回開催未定としか言えないのが申し訳ない感じなのですが、セミナーをやっているのは撮影機材を背負うリスクと、山で写真撮影するリスクを十分理解した上で登山をしてほしいからです。

なので私の中では撮影技術の方はむしろおまけで、本来話すべきは山岳写真の登山の技術のお話。

どうしてこんなまどろっこしことをやっているかというと、山を被写体として見ている人は登山にあまり興味がないのでいくら注意しても山行っちゃうんだもん。だったら撮影技術を得られるコンテンツに合わせて登山の技術も学べるセミナーなら来てくれるのではないかな、というのが今やってるセミナーの目的です。

今回もセミナーの最初の10分は山岳写真の危険性について口酸っぱく解説しました( ・ㅂ・)و ̑̑

アウトドアと写真の業界が結びつくのが一番いいと感じた

山岳写真と登山と写真

山岳写真は登山の中にあることは間違いなく、登山があって山岳写真があります。

しかし登山の領域にこだわりすぎてコンテンツを作ってもカメラの專門知識やプロダクトの解説や知識が薄くなります。これは写真の領域も同じで、その領域で登山のことをやろうとしても山の表面的な知識しかなぞれません。

つまり山岳写真を学べるきっちりとしたコンテンツを作るためには登山領域と写真領域のお互いが得意とする分野で協力するしかない、と現在着地しています。

前回の2回の山岳写真のセミナーで感じたこの課題をクリアするために、今回は登山領域と写真領域をガッチャンコさせて、登山から撮影、レタッチまでのトータルソリューションを作ってみたという流れです。

登山に馴染みがない人も登山メーカーの直営店に来ることでスタッフの人に適切なウェアの相談もできますし、アドバイスももらえます。

finetrackさんに限っていえば直営店の店長さんは山岳ガイドなのでかなり高度な登山の技術の話もできますし山行ルートの解説なんかの情報も調達できます。

「ここにくれば山岳写真のすべてを学べるよ」っていう感じにしていけたらいいなーということで個人的には今後は色々なメーカーさんを巻き込んでいきたいなと思っています。

どうせなら一眼レフやミラーレスを展示してハンズオンできたり、フィールドでどのように操作していくのかの機能解説もできると最高ですよね。ここは今後の課題です。

形さえ作ってしまえば後はプロの山岳写真家さんにお任せして私も裏の方に引っ込めるので、今後も時間の許す限り多くの人がナイスネイチャーできるコンテンツを作っていければなと感じました。

ちなみにこのセミナー内容をnoteにするかは現在検討中です。ご要望が多ければ空いた時間で作るかも知れません。

前回の山岳写真のための知識と撮影技術のnoteはこちらになります。

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