宿泊施設に美しい山の写真がギャラリーとして複数展示してあると、登山目的の人は足を止めて山の話に花を咲かせます。それは実地検証済みです。そこにでかい登山用の地図もあるとなお良です。それを踏まえて色々な施設にでっかい山の写真をどんどん掲載してもらおうという事業を推進しています。
ちなみに私のミッションは限界集落にあるこの温泉地に人を呼びこむことです。市場分析した結果、他の地域になくこの地域が突出している環境資源は「北アルプス」で間違いありません。なんていっても上高地への最寄りの街であり、槍穂高へのアクセスば抜群という立地条件です。しかも東京から直通バスも出ています。
私のアビリティは専業フォトグラファーということ。ずっと海外で写真を撮ってきたとこから良くも悪くも構図や露出が独特です。観光協会という組織でなく、私個人でこの地域をブランディングしていくならば「北アルプス」の「写真」という結論になりました。
たくさんの施設に使ってもらわないといけないので、写真の質はともかくいかに高品質なプリントを低価格で納品するかの問題に直面し結果としてインクジェットプリンターのEPSON SC-PX3Vを購入することになりました。
低価格帯のプリント業者はネイチャーフォトには向いていない
最初に検証して却下した案。
山の写真は様々な色があり、コントラストもあるので色の再現が難しい部類になります。一番美しい色合いになる朝焼けや夕焼けなどの撮影も難易度が高いです。ハーフNDフィルター・円偏光フィルター・多重露出など機材や技術を駆使して、目に見えている景色を写真に再現するのがどれほど難しいかは山で写真を撮ったことがある人ならばわかると思います。
そういうネイチャーフォトなので、プリントにもそれなりの品質が求められます。一度クライアントの経費の問題でA2サイズのプリントをキタムラのポスターで印刷しましたが、色の出方が散々でした。
A2で2000円なので文句をいうレベルということではありません。そもそも「ポスター」なので当然の結果です。私の選択ミスです。色再現ができてなく、シャープネスもないので写真をプリントする用途ではなかったみたいです。
A2以上のサイズの「写真プリント」が少ない
私個人の意見でいうと、写真のプリントはトリミングが少ないほうが綺麗です。フォトグラファーはファインダーの中で最も美しい構図を作りますので、プリントも上下左右が切れることがない1:1.5の比率が理想的です。…しかしこの要望を満たすプリントサイズとフォトフレームがないのです。
一般的に写真のプリントの最大サイズは「全紙」と呼ばれる560mm x 457mmというサイズです。縦横比でいうと1:1.22。正方形に近いフォーマットです。写真の左右がガッツリと切り落とされます。写真の基本である3分割方などで被写体を右か左かのどちらかに置くと悲惨なことになります。
対してA2は592mm x 420mmなので1:1.41の比率となり、現在主流であるフルサイズやAPS-Cの1:1.5の比率に近く、扱いやすいです。
A2サイズ以上で写真専用の用紙/プロセッサーで出力することは難しく、「ポスター」での対応になってしまうため、大サイズのプリントを外注するのは調べて限り難しかったです。
A2の高画質プリントは割高でコストパフォーマンス悪い
企業に属している、大手と契約しているフォトグラファーならばプリントにかなりの予算が取れるはずなので自社ラボか信用のおけるプリント業者に依頼すれば良いのですが、私の観光協会は予算がないので、そういったプリントはできません。
私はクオリティの基準になるのがラムダプリントにしています。プリントの質も良いことながら取り扱っている会社には優秀なオペレーターが多く、色校正やカラーマッチの相談・プルーフ出力など対応してくれることが多く、希望通りのプリントをしてくれるからです。
日本だと堀内カラーさんなんかはすごくしっかりと対応してくれます。写真の専門学校や大学ではここを使うように推奨されていましたが、今でもそうなんでしょうか?
しっかりやってくれる分価格もそれなりです。ラムダプリントでA2サイズを出力すると超光沢で17000円。1枚の写真のプリントにここまで出す予算はうちにはありません…。
印刷の質とプリントコストからインクジェットプリンタが現状はベストな選択
予算があるならば信用できる会社に外注です。しかし、お金がなく大量のA2プリントが必要ならばインクジェットが現状ではベストな選択でした。
最近のインクジェットプリンターは色の出方もよく、コントロールもし易いです。EIZOのColoredgeとxriteのi1 Photoシリーズなどのキャリブレーションツールを使えばだいたいの色を合わせることができます。
EPSON SC-PX3Vを購入したのは「それしかA2対応のプリンターがない」からです。インクも顔料なので長期保存に向きます。性能的に言えばDICカラーガイド認定を受けていてPANTONE98%カバー率を誇るPH-X6000が良いのですが、かなり古い機種であることとランニングコストが見合わないために見送りました。
EPSON SC-PX3Vのランニングコスト
用紙にA2サイズのEPSON純正の光沢紙「クリスピア」を使用して1枚1500円程度のプリント単価になります。低価格帯プリントよりも安くできました。もちろんイニシャルコストで15万円程度かかりますが、堀内カラーのラムダプリントに比べれば10枚プリントすれば回収できるコストです。
利益を考えなければフレーム込で一枚6000円あたりで施設に卸すことができます。
また納期の心配がないこと、L版などの小さい用紙でのプルーフが容易にでき色調整が楽という意味でもフットワーク重視の観光協会の仕事としてはメリットがあります。
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