撮影機材のプロショップの銀一さんで山岳写真におけるカラーマネジメントの重要性、それを利用した撮影アプローチ、色管理、レタッチ方法などのセミナーを行ってきました。
いつもと同じく予約開始1時間くらいで満席になってしまい多くの参加希望者には申し訳ない気持ちで一杯なのですが、私が普段使っている色の扱い方の技術を受講者の皆さんに共有してきました。
今回はそのレポートです。
コンセプトは山岳写真に必要な「色」の理解
一般的なカラーマネジメントセミナーとは違うのは「カラーマネジメントモニター」のセミナーではないということ。
もちろんカラーマネジメントモニタは山岳写真において必需品なので、BenQさんのSW271・PV270・SW240を展示、使用しながら、なぜ山岳写真には色域が広く、色の管理ができるカラーマネジメントモニターが必要なのかを解説をしています。

キャリブレーションの実践
正確な色を表示するためにはどのような作業が必要なのか、最適なパラメーターの設定はどのよう決めるのかをBenQの社員の方と一緒に解説。
色温度の選択や、輝度(cd)をどのように決めていけばいいのかをBenQ社員自ら解説してくれるのは貴重な機会ではなかったかなと思います。キャリブレーターはXrite i1 Proを使用。

山岳写真のリスクマネジメント
写真撮影やRAW現像テクニックのお話であっても、それが山岳写真である以上実際のフィールドに出た時のリスクマネジメントの話は欠かせません。
私がセミナーをやっている理由はここをしっかりお伝えしたいということもあり、2時間のセミナー中40分程度はそのお話をしました。
noteで公開している「山岳写真を安全に撮るための登山の知識と撮影技術」を実践的にした内容で、晩秋・冬にも対応できる装備や知識を共有しました。
色を理解して分析する
カラーマネジメントモニタの使用とキャリブレーションの目的は写真を正しい色で見ること。よって写真のレタッチに必要なものであることは間違いありません。
しかし実際の景色と、自分の目で見た景色が一致しているのかに疑問を持つ人は少ないです。写真で見たら撮影時に見ていた景色と全然違う…、ということはよくあるケースです。
ここを人の目の構造から色彩心理まで掘り下げて、目で見た景色を正しく理解すること。言ってしまえば目のキャリブレーションの解説をメインに行いました。
このアプローチをすることで、表現したい色を客観視できるためレタッチにかかる時間が短くなりゴールを見失い迷走することがなくなります。
その際に必要になるのが色を正確に表示して色相の差をしっかりと出せるカラーマネジメントモニタです。
このように色味にこだわる撮影とレタッチ手法ですが、これに対応できるモニタが4万円台から手に入るのは写真愛好家の人が次のステップに進むために優しい時代になったなと感じます。
私はBenQのSW271をメインにサブでPV270を使用していますが色味で不満に思ったことは今のところありません。
色から撮影スケジュールを考える
どのような写真を撮りたいのかのイメージを色からアプローチすると山での最適な行動を取ることができます。日照条件の変化、方角による色の違い、それにより表現できる写真を事例により解説。
偶然ではなく狙って撮影することで短いタイムスケジュールでも効率よく動けるテクニックを紹介。
色彩学を利用した撮影とレタッチ
色の認識に自信が持てるようになるとRAW現像がスムーズに行えるだけでなく、撮影時の構図や画角の選択にも良い影響が出てきます。
例えば、自分の求める雰囲気に仕上げるためにはどのように撮影すればいいのかの選択肢を増やすことができます。それを同じ場所から撮影した2枚のネイチャーフォトを例にして解説。
解説はプロジェクターを利用しましたが、同時にBenQのPV270やSW271での表示していたため細かい色の差がどのような影響をもたらすのかを皆さんに見ていただけたと思います。
RAW画像の無料配布
リアルタイムRAW現像をカラーマネジメントモニタを使って実演したのですが、セミナー時間が短すぎて数枚しかできなかったため、わかりやすい作例を数点セミナー受講者の皆さんにプレゼント。
撮影時点でレタッチのゴールを決めているとどのようなLightroom操作になるのかをセミナーの後でも自習できるようにしました。…自習してくれるよね。
写真における色彩学アプローチはあくまで山写の技術の共有
セミナーのたびに注意として表示しているスライド。
特に今回の色彩学を使った撮影方法は写真の教科書に載るようなものではないので、正統な技術かと言われればかなり微妙。
ただ調べたり本で読んだりして学べる技術であれば、わざわざセミナーを開くこともないため、私の経験を元にセミナー内容を作っています。受講者の皆さんに新しい着想をご提供できていれば嬉しい。
個別の質問にお応え
山岳写真は登山と写真の複合であることから、撮影機材、登山用具、山行スケジュールを含め個人レベルで深い悩みを抱えている人が多くいます。
いつものことなのですが、1人1人の質問にきちんとお応えしたいので2時間のセミナーのあと、さらに1時間半の質問時間を取りました。
そうなることは事前に想定していたので山に持っていく撮影機材はすべてグレゴリーデナリ100に入れて持ってきていました。GITZOシステマチック5型とか、角型フィルターとか、カメラとレンズ一式とか…。
今日の山写さん @Photograph_mt のセミナーは講義内容はもちろん、普段使用されているカメラ機材なども披露されていて、本当に勉強になったセミナーでした。
山写さんは6kgもある雲台と三脚を担いで山に登るんだから、レベルが違いすぎる。。 pic.twitter.com/Qqgvyk0k2r— The_Hirox_666 (@The_Hirox_666) November 29, 2018
それでも時間は足りませんでしたが、山岳写真の悩みが解決できていたらいいなと思います。
今回のセミナーの評価
14:00〜16:00の座学のセミナーに加え、16:00〜17:30まで個別のご質問で計3時間半喋りっぱなしであった今回のセミナーの満足度を銀一さんがアンケート形式で集めてくれました。結果は…
非常に良い | 16 |
---|---|
良い | 3 |
普通 | 0 |
悪い | 0 |
非常に悪い | 0 |
無記入 | 1 |
となりました。皆様に満足していただけたようでホッとしています。
山岳写真の技術共有の場はまだまだ少ない
みなさんがナイスネイチャーできるようにブログで情報発信をしたり、セミナーで登山技術や色彩学による撮影やレタッチの共有などを行ってきましたが。まだまだ需要に対して供給が追いついてないと感じます。
BenQさんとのセミナーは2回目ですが、セミナー受講者のレタッチ環境を作ってくれたりモニタにはあまり関係ない登山の話をすることに全面的に協力してくれるので嬉しい限り。
登山・撮影・モニタ・レタッチ、それぞれを1つの流れにしたトータルソリューションとして、いい写真に仕上げるためにはどうすればいいのかを一緒に考えてセミナーをしています。
多くの山岳写真家さんが技術をさらけ出して、悩みを抱える山岳写真愛好家のみなさんに答えを提供できる世界になればいいなという願いも込めて、今回の山岳写真におけるカラーマネジメントセミナーのレポートとさせていただきます。
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