初心者でもできる反射面のある物のストロボライティング

反射する物のストロボライティング

ライティング未経験の人が短期間でどこまでブツ撮りができるようになるのか。その機会に恵まれましたのでiPhone Xの撮影で実践してみました。

ネパールにいた時に私のアシスタントをしてくれたアンディ君。彼は現地で合流したプロを目指すカメラマン見習い、…になるためのアシスタントをしている青年。実務での撮影経験は半年程度でライティング未経験の初心者でしたがヨーロッパで写真をやりたいというガッツのある若者。あえて異国に乗り込むそのスタイル嫌いじゃない。

ちょっと放っておけなくなり短期間だけ簡単なライティングを教えることに。

初心者のブツ撮りでは難易度の高いiPhone、しかもメラミンボード使ってリフレクションさせながら撮らせるという無茶ブリ。しかしこれができるようになれば光源の理解と扱い方は3段飛びくらいで習得できるので、モノブロックストロボ3つと現地で調達できるものを使って一緒に頑張ってみました。

そんな3日間限定の弟子?の成果物をご紹介しながら、反射に写り込みで難しいスマホやタブレットのライティングと撮影技術をご紹介します。

化粧箱の撮影のライティング

Iphoenxの化粧箱

左右横から1灯ずつ、フィルイン(上)1灯の三灯ライティング。

化粧箱のライティング

フィルインの真下にiPhoneの化粧箱を置かずに横にずらすことで写り込みを防いでいます。機材が潤沢なスタジオでは写り込みを防ぐために光をカットするやり方はたくさんありますが、限られた機材で行う場合このように「漏れた光」を活用することがよくあります。

グリッドを使用したライティング

iPhone Xの側面

ほぼ真横からの1灯での直灯しています。

グリッドを使用したライティング

グリッドを使用することで照射角を狭くして光が拡散するのを防いでいます。強い光を一部に当てたい時に有効なライティングです。

反射面の写り込みを防ぐライティング

iPhone Xの背面はガラス加工されていてとにかく写り込みが激しく、ストロボのアンブレラからレフ板まであらゆるものを写してしまいます。正攻法でいくならトレーシングペーパーなどを使って光の質を柔らかくして写り込みを減らしていくアプローチですが、一般家庭にそんな設備を求めるのは酷ですし、場所はネパール。

基本はモノブロックストロボ2灯とレフ板のみでなんとかします。

反射面に映り込む要素を入れない

コツはストボロの光は一切iPhoneに当てず、照射角から漏れた光をレフ板を使い反射させることです。

反射光のみを使用する

レフ板で反射された光をさらにレフ板で起こすことで柔らかい光を無理やり作り写り込みを抑えます。もう1つの狙いはスペースグレーのiPhoneで黒バックを使っているのでエッジにハイライトをいれて輪郭を出すことです。

これはレフ板をiPhoneの近くにおけば自然と成立します。

エッジ部分を光らせる

iPhone Xを立てて撮影しているように見えますが、これは真上から撮っているものです。ライティングは先程の画像と同じで、iPhoneの上を光が通り、レフ版で弾き返された光でライティングしています。

左右のストロボの出力を帰ることでエッジの光沢の調整をすることができます。

スマホを浮かして撮影する

iPhoneを浮かせてリフレクションを強調しています。レンズキャップをiPhoneの下に入れて撮影し、LightroomとPhotoshopのレタッチで後処理しています。テグスで浮かせたり、何かで持ち上げて後処理で消すというのは現場ではよく使うテクニックです。

ホワイトリフを使用して撮影する

今度は逆に黒締めしている部分を白のレフ板に置き換えることで全体に光を回しています。

白レフを使用する

こうすることでiPhone Xの背面のガラス加工が際立って表現できます。

液晶画面を撮るときはスローシャッター

iPhone xの画面の撮影

経験がある人も多いかと思いますが、ストロボを使ってスマホを撮影するとボディの部分だけキレイに取れて画面は真っ黒になります。両方共キレイに撮影する手法は2つ。ストロボを使用してハイスピードで1回撮影し、その後ノンストロボで液晶画面を撮影して合成する多重露光。

もう一つがストロボとスローシャッターを組み合わせて1度で両方撮影してしまう方法。今回は後者を撮影手法にしました。

ストロボとスローシャッターでキレイに撮れる理由

ブツ撮りは高いF値を使用します。今回使用してるのは105mmマクロなので被写界深度を深くするためにF11〜16あたりを使用しています。この設定でシャッタースピードを1/125 ISO200で切ると真っ暗な写真になります。

そこでストロボを使用して大光量で撮影すると、ボディ部分の露出は合いますが液晶画面の明るさが消し飛んでしまい、この部分が真っ暗になります。

スロシャッターを使用すると、まずストロボの大光量でボディ部分の露出が合います。その後シャッターが閉じるまでの時間で液晶部分の明るさを捉え続けるため液晶の画面でも最適な露出を得ることができます。

ここで大事なのは部屋は真っ暗にしておくということです。部屋に光があるとスローシャッター時に環境光を拾い続けオーバーな露出になります。

スローシャッターを使用しますのでこの撮影手法では三脚が必須です。

Iphoen xを置いて撮影

エッジを際立たせるレフ板を使用したライティングでスローシャッターを使用するとこのようになります。カタログ撮影などでよく見かける写真になってきました。

リフレクションを使用した撮影

最後は定番のリフレクション撮影。ここでアクセントを加えるために3灯にしています。2灯使いレフで起こす光だけをライティングすると左右均等の光の質感になりやすいです。

アクセント用のストロボを手持ちする

そこで右上の丸角に強めのハイライトを入れたかったので、右側においてあるレフ板に手持ちで小光量のストロボを当てるようにしました。スタンドを置く場所がなかったため、シャッターはタイマーで行いモノブロックストロボを手持ちしています。

初心者でもコツを掴めばライティングは難しくない

勉強だけ一緒にして本番の撮影では口を出していないので撮影手法はすべて彼の引き出しから出たものです。

ストロボ撮影未経験から3日間、実際は10時間程度の詰め込みでここまでブツ撮りができれば十分すぎる成長ではないでしょうか。直接当てるところから、レフに反射させる、光の質を変える、反射面を黒締めで閉じ込めるなど、繊細な光の扱い方が実践できています。

実際にスタジオに入ればもっと楽に照明環境を作ることができます。しかし本質がつかめないと道具に使われるだけのつまらないライティングになりがちです。モノブロック2〜3灯とレフ板3枚だけで試行錯誤しながら組み立てた「光を考える」という理論の構築経験は今後役に立つのではないかと思います。

せっかく撮影したものなのでどこかで使用してもらえないか事前に相談したところ、いい写真だったらPAKUTASOで使ってくれるとのことでアンディ君大歓喜。

光は写真の本質

写真撮影は自分の好きなジャンル・被写体に傾倒しがちなのですが、最終的にはどんなジャンルでも光の扱い方に行き着きます。壁にぶつかったとき、この「光」の経験値によってブレイクスルーできるか否か、重要なファクターになっていると思っています。

その光を自分でコントロールして写真を操るのがライティングです。構図とは違いこれは自分で勉強をすると決意しないと手を出すことがない分野です。なので彼のように若い人が積極的にブツ撮りライティングに興味を持ち、楽しんで撮影してくれる姿を見ると教えてよかったなと思いますし、将来を期待せざるを得ません。

私は写真を教えることを生業にはしていないですし、まだまだ勉強中の身なので撮影技術は時々ブログに書く程度しかできませんが、初心者の人ほどスピードライトなどを購入して早くから光の扱いに触れてもらいたいなと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

内容をご確認の上、送信してください。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

スポンサーリンク

0
95
0
48
43
0
反射する物のストロボライティング

この記事が役に立ったらいいねをしよう!

Facebookで最新情報をお届けします。

関連記事

同じカテゴリーで読まれている記事