写真撮影の上達には単焦点がいい!という意見には懐疑的です。
画角を制限することで撮影アプローチを増やす手段としては有効なのですが、その気になればズームレンズで画角を固定すればいいので絶対ではありません。
ライザップのようなもので強制的に特定の環境に追い込んでダイエットして成果を出すか、強靭な精神力で自分でダイエットするかの違いくらいと考えています。 どちらかというと単焦点レンズを使用しての勉強方法の魅力は、手が届きやすい価格の50mm F1.8の単焦点レンズのような低いF値を利用して【そのレンズでしか表現できない技術】を学ぶこと。
表現の引き出しを増やすという意味では低価格の単焦点レンズはコストパフォーマンスが高く有効的です。
Canon 単焦点レンズ EF50mm F1.8 STM フルサイズ対応 EF5018STM
画角と構図の勉強に関しては単焦点でもズームでも同じというスタンスですが、ネイチャーフォトで「画角と構図」というものだけを考えた場合、ズームレンズの方が勉強しやすい知識というものがありますので画角による構図の撮り方の基本と一緒にご紹介します。
広角レンズと望遠レンズの違い
分かりやすく同じ被写体を、同じ大きさになるように撮影したときの撮れ方を比較してみます。
広角レンズ
画角が変わらないことから狙った構図を作るときは被写体を目一杯入れるとなると、多くの人が思ったよりも被写体に近づくことになります。
今まではズームするだけだったアプローチから、自分から近づくというアプローチ方法を覚えることでレベルが1つ上がります。 24mm F2.8で撮影すると被写体とは別に背景に車や標識といった要素が紛れ込みます。このことから一般的には被写体と背景が組み合わさった写真を撮るときに有効な画角と言われています。
被写体を大きく、背景をたくさん入れるときは「広角で寄る」ということになります。F2.8ですが背景のボケも少なく観光地の記念撮影に向いている手法です。
一眼レフを勉強し始めた人が事前知識なしにこの撮影手法を覚えることは難しいので、広角単焦点を使ってみるということは勉強になると思います。
望遠レンズ
200mm F2.8で撮影すると被写体は同じ大きさなのに背景がほとんど入りません。よって被写体自体を撮りたいときに向いています。
背景の車の大きさが広角で撮影したものに比べて明らかに大きくなっています。このように遠近感がなくなる圧縮効果と呼ばれています。
広角レンズで撮影したサンプルと同じくF2.8ですが背景が盛大にボケています。
広角と望遠で一番分かりやすいのが被写界深度の差。
この特性を利用して作品を作っていくのが写真撮影の基本のアプローチの1つです。 単焦点レンズを使用すると被写体と背景のバランス、圧縮効果などが固定されるためレンズの特性を理解することに向いています。 強制的に画角を固定する単焦点はこういったアプローチの勉強に向いていますが、ズームレンズを使用してもこの特性は変わらないので個人の意識の問題とも取れます。
単焦点レンズで写真の勉強のデメリット
一定の画角を使い続けることで、よい写真を撮るために様々なアプローチをすることになります。
結果としてレンズの特性などを経験として理解できますが同じ被写体を別の画角で撮影した時との相対的な違いを経験することができません。
例えば50mmの単焦点で勉強したとしたら、50mmで上手く撮る技術は上がりますが他の画角を使用した撮影技術は別に必要です。
あまり単焦点に固執するとズームレンズを使用した際にも得意の画角に依存することになりかねません。画角はあくまで選択肢の1つです。
ズームレンズが勉強に向いている分野もある
画角の使い方や圧縮効果、パースのかかり具合などは分かりやすいので絶対的な感覚として単焦点レンズの方が理解しやすい側面があります。
しかし画角によって出る影響が小さいものに関しては同じ被写体を広角・標準・望遠と様々な画角で撮影しないと得られない感覚というものもあります。
私の専門のネイチャーフォトはちょっと特殊な分野で相対的に見比べて自分の感覚を修正していかないと得られない技術というものがあります。
画角の基本的な特性を理解してから更に一歩踏み込むと、意識しないと気づかないことも多いのでズームレンズを使用して勉強したほうが習熟が早いです。 それが被写体への角度の影響です。
画角は左右だけではなく上下にも影響する
被写体と背景のバランスを取るとき、気をつけなければならないのは画角によって被写体の左右だけでなく上下にも影響が出るということ。
広角になるほど被写体に近づくので当たり前なことなのですが、標準~望遠領域だと気づかない人がとても多いです。
主題となる被写体の見え方は変化がない
正面から撮影すると主題となる被写体への影響はレンズによっての影響はさほど受けません。
画角の特性による被写界深度の違いと圧縮効果などの背景への影響も同じです。コレだけならば単焦点のレンズであってもつかめる感覚です。
広角になるほど角度が広がっていく
被写体の看板の見え方は変わらないのに、温泉の見え方が違います。広角になったことで上下の見え方が変わったからです。
広角で被写体に近づくほど覗き込むように温泉の見え方が変わってきます。 ネイチャーフォトは全体のバランスが重視される分野ですので、「どこを見せるか」「どこを見せないか」という処理をこの画角の特性を利用して行うことがあります。
この感覚はズームレンズで1つの被写体をいろいろな画角を使って撮影し、LightroomなどでExif情報を確認して相対的に見比べないと身につけるのが難しい感覚だと個人的には思います。
画角はアイレベルとセットで考える
主題の写る大きさを変えずに広角で寄っていくと必然的に見下ろすか、見上げる形になっていきます。
30mm以下の画角ではかなりカメラを傾けることになりますが、意識していないと意外と気づきません。 広角になるほど被写体以外の要素が入ってしまうことから【被写体に寄る】に加えて【アイレベルの修正】という作業が入ってきます。
足元から構図を考えるネイチャーフォトでは必須の知識
奥行き表現を使ってネイチャーフォトをする場合には足元の風景をどのくらい割合で、どのくらいの角度で入れるかが重要になります。
このように稜線を切り取る写真ならば、被写体はすべて無限遠の領域にあるので画角の特性を深く考える必要ありません。
足元の草木を入れての構図を撮るのであれば、足元の草木を広角・標準におさめて撮影するか、後ろに下がって中望遠で草木を入れて撮影するかの選択肢が生まれます。

広角を使用すれば足元の被写体を見下ろす形になるので花が咲いていれば良い構図なることもあります。
逆になんの変哲もない草ならば中望遠を利用してボカしてしまったほうが良いケースもあります。
知識のある人はズームレンズの方が勉強になるかもしれない
単焦点の特徴である小さいF値と高画質である点に関してはレンズの個性です。
構図と画角の勉強においては除外して考えるとズームレンズがカメラの上達に向いていない理由は「ズームに頼って足で距離を詰める感覚がない」になります。
なので画角が一定な単焦点レンズで表現方法を学ぶことは初心者の方へのアドバイスとしては「痩せたければライザップ」理論で間違っていないと思います。 であれば筋トレや食事制限・栄養知識がある人なら自分でダイエットもビルドアップもできるはず。これはカメラでも同じことが言えると思います。
そのレベルにいる人は画角と構図の知識がありフラットな感覚を持っているので、むしろズームレンズを使用したほうが1つの被写体を様々な画角で撮影できるため画角ごとの相対的な知識を得ることができます。
これは私が若いときに練習したカメラの勉強の1つです。
単焦点レンズだけで勉強中の方も、このようなアプローチをすると新しい発想が生まれてくるかもしれません。
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