撮影した写真を正確な色で表示するためのモニタ。仕事で使うイメージが強いですが、そうではない人でも自分が撮影した写真を正しい色で見たい、レタッチしたい、公開したいという人は多いのではないかと思います。
しかしカラーマネジメントモニタで手にしやすい価格のものは解像度が低いため高画素機のカメラで撮影したRAW現像や閲覧用途で使用するにも中途半端。すごく購入しづらい状況です。
そんな中AdobeRGBカバー率99%、ハードウェアキャリブレーション対応の4KカラーマネジメントモニタSW271が実売15万円を切る価格でBenQさんから販売されました。サイズも使いやすい27インチで遮光フード付きというコストパフォーマンス。
そんな4K UHDカラーマネジメントモニタSW271をBenQさんからご提供いただきましたので普段のワークフローに落とし込んで使用感を確かめてみました。
梱包が大きい
まずとんでもない大きさの箱に入っているため販売店から持ち帰るのは不可能。車に積むか送ってもらうかの2択になります。
箱を開けるとまず簡単な説明とパーツの取り出し方が書かれています。安価なモニタと違いとても丁寧な造りになっているのが好印象です。
何気に感動したのがモニタパーツの収納の仕方。「もっとキュッとすれば箱小さくできたんじゃないかな?」と一瞬思った先に待っていた答えが「これすごく仕舞いやすい」ということ。
カラーマネジメントモニタなのでテザー撮影用に持ち出すことを検討している人もいるでしょう。その際にさっとしまって車に詰めるのは個人的嬉しい配慮です。
さらに遮光フードは別パッケージになっています。パーツが多く煩雑な管理になりやすいので専用の箱があると普段使わないパーツを入れておくことができます。
スペック
SW271は出荷前にモニターをキャリブレーションし、レポートを同梱してくれますので「基本的には色が合っている」と考えても大丈夫そうです。
もちろん自宅の環境光などを含めて色が合っていると保証するものではないので自分でキャリブレーションをすることは必要ですが、キャリブレーターが手元にない人でも見当違いな色ではないという安心を得ることができます。
外観
無駄を削ぎ落としたデザイン。ベゼル部分がすごく薄いので24型モニタかと思うほどの躯体に小ささです。
遮光フードを被せるとベゼルの薄さがよくわかります。遮光フードの上に見える四角部分がスライドするようになっており、ここからキャリブレーターを通してキャリブレーションを行います。
もちろん縦位置にも対応。
前のモデルであるSW2700PTにはない縦位置での遮光フードが付きました。カラーマネジメントモニタとしての完成度が盤石になった感があります。
スタンド
付属のスタンドだと下-5℃、上20℃まで傾けることができます。
モニタをそこそこの高さまで上げることができるのでMacBook Pro15インチを下に置いてその上にモニタを持ってくることができます。
液晶アームの装着
メインモニタは液晶アームを使用しているため、今回SW271にエルゴトロンのMXデスクマウントLCDアームを装着することにしました。
BenQ SW271のマウントはVESAに対応しているためそのままエルゴトロンの液晶アームを装着することができます。まずはネジを外します。
その後に液晶アームを取り付けてネジで止めるだけの簡単なお仕事です。導入作業自体は楽ですが、流石はカラーマネジメントモニタというべきか液晶モニタだけで約9.3kgありますので大変でした。
映像入力系統
モニタの裏からケーブル接続する一般的な仕様です。DisplayPort1.4が2つ、HDMIが1つ、USB-Cが1つ。あとはOSDコントローラー専用の端子と、USBハブとして機能させたり、キャリブレーションツールを使用するためにPC本体のUSBと接続するポートになります。
4KモニタということでDVI-D接続がなくなっているため古いビデオカードを使用している人は注意が必要です。
側面にUSBポート
SW271とPCをUSBで繋いておくと側面のUSBポートを使用することができるようになります。キャリブレーションツールはここに接続して行います。モニタを設置すると裏側にくることもあり使い勝手はイマイチ。遮光フードをつけた状態で毎回SDカードを差し込むのは大変なので延長ケーブルなどを使用した方が使い勝手は良くなります。
縦位置にしてみるとモニタの上部の裏側にUSBポートがくるようになっています。その点はとても配慮された設計だと思います。
縦位置にも対応した遮光フード
前モデルのSW2700PTでは横位置しか使えなかった遮光フードも今回のモデルから縦位置対応にありました。組み合わせるパーツが違うので縦位置と横位置での遮光フードの取り付けには作業が必要ですが、「縦位置しか使わない」という人には朗報ではないでしょうか。
遮光フードの造りがよくなった
SW271の前モデルとも言えるSW2700PTの遮光フードは機能面では不満はないのですが、取り付けの一部にマジックテープが使われていたりと
ハードの作り込みとしては若干のオモチャ感がありました。
それが今回大幅に改修されSW271の遮光フードはガッツリ固定されるようになりました。
遮光フードのパーツをスライドさせてジョイントする仕様になっています。一度ロックがかかると反対側から軽くトントンと叩かないと外れないくらいの固定感があります。
縦位置にも対応したことで遮光フードのパーツ自体は増えていますが、すべてのパーツに番号が入っているためどこのパーツなのかをひと目で分かるようになっています。マニュアルを一読すればあとは感覚的に組み上げることができました。
付属品
ケーブル類
- HDMIケーブル(1.8m)
- miniDisplayPort to DisplayPortケーブル(1.8m)
- USBケーブル(1.8m)
- USB Type-Cケーブル(1.8m)
3系統の映像入力ケーブルがついてくるお得な内容になっています。SW271のすべての入力を使いたい人はHDMIケーブルを1本別途用意する必要がありますのでご注意ください。
私の使い方だとデスクトップPCはDisplayPortを使用し、MacBook Proとの接続にはUSB-Cがメインになっています。
OSDコントローラー
BenQのモニタの使い勝手の良さを象徴するのが操作のすべてが外部コントローラーでできること。もちろん標準装備です。
1〜3の番号でsRGB / AdobeRGB / モノクロを切り替えることができ、あとの上下左右ボタンとリターン、OKボタンでモニタの調整を行うことができます。
4Kの圧倒的解像感
ネイチャーフォトをメインにしているのため解像感よりも色の出方を重視していましたがLightroomを開いた瞬間に感動。はじめて単焦点レンズを使ったときのような気分です。
特に岩などのレタッチをする時は楽しくて仕方がないです。写真の魅力を再発見してより楽しむために4Kモニタを導入するというのは写真愛好家にはコストパフォーマンスがよい選択あと言えます。
なぜフォトグラファーには広色域のカラーマネジメントモニタが必要なのか
BenQ SW271は4Kの解像度を持つカラーマネジメントモニタなので購入を検討している人は数年間メインモニタとして使うことが考えられます。そこで一度写真を趣味にしている人がなぜそれが必要なのかを改めて考えてみましょう。
sRGBとAdobeRGBの違い
AdobeRGBの色空間はWEB標準のsRGBに比べて圧倒的に緑と青の表現ができます。私の専門としている山岳写真やネイチャーではメインカラーとなることも多いためモニタ選びではAdobeRGBのカバー率を考えます。BenQ SW271は99%カバーしているため実務に耐えうるスペックです。
AdobeRGBで作業をするメリット
撮影した写真の本来の色味を出すことができますので、より詳細で正確なレタッチをすることができるようになります。
プリントしたりWEBに公開するとインクによる色の鮮やかさの低下であったりsRGBで閲覧されたりと、本来の色味を出すことはできませんが。しかし少なくとも自分の環境の中だけでは理想の色味を追求することができるようになります。
それを指標にして印刷物などの出力先とのカラーマッチングを行うことができるようになり、本来の色と出力する色の差の品質管理ができるようになります。
リテラシーの高い写真愛好家やスタジオ・ラボはカラーマネジメントされている高品質のモニタを使用しているためコミュニケーションを取るのも楽になります。
AdobeRGBとsRGBの画像を表示して比較する
SW271には画面を2つに分けて別の領域で分けて表示する表示するPIP(Picture in Picture)/PBP(Picture By Picture)機能が搭載されています。1台のデスクトップを2つに分けることもできますし、2台のPCを接続して並べて表示することも可能です。
それぞれ色空間を指定することができますので、同じ画像をAdobeRGBとsRGBで表示してみました。
AdobeRGBがの方が色が鮮やかで、sRGBはくすんで表示されているのがわかります。
14-bit 3D LUT技術の搭載
カラーマネジメントモニタの代名詞と言われてるEIZOのColorEdgeにも搭載されている理論値と実測値の差を小さくし色の正確性を向上させる技術。また色域を変換して、色を割り当て直す作業の精度が向上するとのこと。
レタッチで様々な色のパラメーターを変更するフォトグラファーが意図した色を出すための必要な技術がSW271には盛り込まれています。
10bitカラー対応
SW271は10bit(1億7000万色)の表示が可能でグラデーションがキレイに表現できます。しかし対応しているソフトウェアが少ないことと専用のビデオカードが必要になるためことから使用している人は少ないと思います。
写真編集やレタッチで10bitの環境を整えるためには対応しているモニタ(SW271)、ソフトウェア(Lightroom・Photoshop)、ビデオカード(Quadro・FirePro)が必要になるため個人では少し敷居の高いものになっています。
Photoshopのパフォーマンス設定に10bitカラーの表示の項目がありますが、私の環境はビデオカードがGeforece1050Tiなので10bit環境で動くことはありません。しかしハイパフォーマンスな4Kカラーマネジメントモニタが廉価で変えるようになってきたので、そろそろ個人のレタッチ環境でもQuadroを導入してもいいかもと考えています。
ハードウェアキャリブレーション
BenQのカラーマネジメントモニタのキャリブレーションは公式アプリケーションであるPalette Master Elementで行います。同梱されているCDや公式ページから手に入れることができます。
http://www.benq.co.jp/product/monitor/sw271/downloads/
キャリブレーションの作業自体は以前に書いた記事と同じ手順になりますのでこちらをどうぞ。

少し気になるSW271の輝度ムラ
I1 Profilerで調べたところ中央が一番高く、周辺の光量が落ちるムラがある結果になりました。じっくり見れば気なりますがワークフローに組み込んで作業して気になることはありませんでした。輝度の差の激しい写真ではなく、ベタ塗りなどが多いデザイン作業をする人は気にかも知れないなという感じです。
MacBook Proの外部ディスプレイとして使用
SW271の特長はUSB-CでMacBook Proと接続するとこで簡単に外部ディスプレイとして出力できること。MacBookをメインに使っている人は主力のモニタとして使用できますし、出先でテザー撮影をしてレタッチ済みの写真の最後の調整をSW271で行い納品するということもできます。
MacBookProとモニタを繋いで、キャリブレーターをPCに接続すればSW271をハードウェアキャリブレーションすることができます。キャリブレーションした設定は最大3つまで保存し切り替えることができますので、デスクトップ用・ノートPC用と複数の最適設定をモニタ側で使い分けることができます。
SW271でデザイン作業を行う際の注意
Windows10の環境で4Kディスプレイをつなぐと解像度が高すぎるせいでUIが小さく表示されます。それもあって自動でUIが150%の大きさで調整されます。これでちょうど1920×1080、1366×768の多くの人が使用している慣れ親しんだ感覚で使用できるようになります。
ただそれがすべてのアプリケーションで最適化されるわけではありません。
例えばPhotoshopのメニューで選択できる部分と選択できないメニュー。dpiが低くドットピッチの広いモニタならぱっと見で分かるのですが4Kモニタは理解できるまでワンテンポ必要です。
また解像度が高すぎてWEBサイト製作でユーザー目線を持ちにくいこともあり、WEBデザイン業務用のモニタは別途用意しました。
リンク
写真レタッチや動画鑑賞専用モニタとしてSW271、WEBデザインやMacBook Proの接続ディスプレイとしてPD2710QCを使用しています。
SW2700PTとどちらがいいのか
実売価格139,800円のSW271と69,800円のSW2700PT。価格は約2倍あります。どちらもコストパフォーマンス良好なカラーマネジメントモニタ故に悩む人が多いと思います。まずはスペックを比較してみましょう。
SW271 | SW2700PT | |
サイズ | 27インチ | 27インチ |
解像度 | 3840 x 2160 (4K UHD) | 2560×1440(WQHD) |
画素ピッチ | 0.1544 | 0.2331 |
映像入力 | HDMI2.0 x2 DisplayPort1.4 x1 USB-C |
DVI-DL x1 DisplayPort1.2 x1(音声出力非対応) HDMI1.4 x 1 |
外形寸法(WxHxD mm) | 613.8 x 504.49~610.95 x 213.43 mm | 652.8 x 445.2~566.7 x 322.8 mm |
約9.3kg (約10.5kg 遮光フードあり) | 約8.3kg (遮光フードなし) |
カラーの表現に関してはほぼ同スペックなので判断ポイントとなるのは解像度と入力の数と大きさになります。
SW271の最新の高速通信に比べてSW2700PTは1世代前の規格になっているため、古いPCを使っている人はSW2700PTという選択肢しかない人もいるかもしれません。そのような環境であれば迷わずSW2700PTでしょう。
逆にモニタへの接続に問題がない人は解像度を必要とするかだけ考えればいいので分かりやすいです。たとえばNikonのD850やSONYのα7RⅢなどの高画素機のレタッチ作業や閲覧を楽しむのであれば4Kカラーマネジメントモニタなら感動するレベルだと思います。
そのためにSW2700PTの倍の金額を投資する価値は十分にあります。
またハードウェアとしての造りもSW271の方が上で、ベゼルが狭くフードの作り込みも秀逸なので仕事道具としての完成度が高いです。
両方のモニタを使用してる経験からどちらの方が満足度が高いかと言われれば間違いなくSW271になります。
カラーマネジメントモニタ最初の1台に最適
いい写真を撮っても確認し、編集し、作品として仕上げる作業はすべてモニタ上で行われます。2500〜4500万画素の一眼レフやミラーレスを使用していながらそれを表現できないモニタを使用してるのは純粋にもったいないと、4Kモニタを導入して思うようになりました。
写真にハマっていくにつれてレタッチを覚え、思うような色が出ずに悩むことはある意味テンプレートですが、そんな悩み持つ前に最初からカラーマネジメントモニタ買っちゃいなよ!と実際に手が届く金額で購入しやすいのがBenQのSW271。
MacBook Proとの接続(USB-C)もでき汎用性が高いこのディスプレイが139,800円で購入できるのは割りと衝撃的です。
しっかりとキャリブレーションを行えば作品作りに使えるスペックですので、とりあえず購入して余裕ができたらi1 Displayなどのキャリブレーターを導入してプリンタとのカラーマッチングの勉強を始めるなど写真の勉強もし易いのもポイントです。
1ヶ月みっちり使い込んですでにメインモニタとして大活躍してくれているので、これからもしばらくの間お世話になることになりそうです。
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