冬山登山に挑戦しよう。しかしどんな登山用具を揃えれば良いのか、どんな点を注意すればいいのか…わからないことだらけです。
冬山は夏山とは装備や行動時間、気象条件などがまったく異なるため未経験の人では想像がつきにくいと思います。
特に独学だとどれだけ本を飲み込んでも限界がありますので、危険の少ない標高の低い人気の冬山を登ることをおすすめします。 そこでの経験を踏まえて徐々に難易度の高い山に挑戦していくことで冬山の経験値を上げていきリスクマネジメントを覚えるのが冬山を楽しく登るコツです。
装備や知識が万全でも経験がなければ槍ヶ岳や穂高などの厳冬期は登ることはできません。
以下、私の経験則に基づく内容なので鵜呑みせずにきちんとした冬山登山の書籍で勉強してください。
基本は低山。奥多摩ならば雲取山か御前山、北アルプスなら西穂丸山など
東京近辺にお住まいの方ならば山頂近くで山荘が通年営業をしている雲取山か、余裕のあるタイムスケジュールで日帰りができる奥多摩三山の1つ御前山がおすすめです。
名古屋付近にお住まいなら標高2158mの新穂高ロープウェイから3時間程度、西穂山荘経由で登頂できる西穂丸山(2452m)が最初の冬山としてはおすすめです。
どの山も人気があるため登山道が踏み固められていてトレースがついているので遭難しにくく、万が一の際も高確率で救助してもらえる可能性が高いです。
日照時間が短いので必ず朝一で登る
冬季は朝7時から山行開始、山の中だと16時には真っ暗というタイムスケジュールになります。
行動時間が9時間程度しかありません。 寝坊したから10時くらいから…と夏山の気分でいると下山できなくなります。
登山道は雪で覆われているためヘッドライトでは道がわからず遭難するので、日が暮れてしまったらビバーグを余儀なくされます。
スノーシューでなく軽アイゼンで登る
はじめての冬山でスノーシューもって山に入ることは避けたほうが無難です。
スノーシューを装着しての登山はかなり体力を消耗することに加えて歩き方のコツが必要だからです。
ですのでスノーシューの着用やラッセルが必要ない低山か、多くの人が入り雪が踏み固められている人気の山を選択しています。
軽アイゼンは6〜8本爪がおすすめ
登りでは使う必要がないかもしれませんが、下りでは着用する機会が多いです。
傾斜のあるアプローチで足を滑らせるとそのまま数十メートル下に滑ってしまうこともありますし、滑落するケースもあります。 アイゼン着用の判断がつかない場合は最初から着用して登るのも経験値稼ぎとしてよいかと思います。
モンベル(mont-bell) アイゼン カジタックス LXT-8アイゼン L 1141121
低山ならば登山靴夏用のものを兼用できる
GORE-TEXをライナーに使用している登山靴であれば浸水の心配はありません。
低山で踏み固められている登山道であれば夏用の登山靴でも対応できます。
まだ自分での靴のフィッティングに自信がなかった頃に吉祥寺の登山用品専門店の山幸さんで選んでもらったマインドルのヤリジャパン。
冬用ではありませんが低山の雪山なら問題なく登ると教えてもらい、実際に登って確認しました。
機能性だけ見るならばMAMMUTのTeton GTXでも膝下以下の積雪量ならば問題なさそうです。

夏用のブーツの問題なのは保温性ですが、日帰りでの低山登山程度であれば厚手の靴下を使用すれば大丈夫です。
アッパーが柔らかい夏用ブーツや、コバが着いていないものは12本爪のアイゼンを装着することができませんので冬山登山の挑戦を気に夏冬の両方に対応できる中堅クラスの登山靴を購入することをおすすめします。
現在私は低山での冬季でのブーツはMAMMUTのMAGIC GTXを使用しています。

冬山登山に持っていく登山装備
夏山装備のグレードアップ、プラスアルファというのが基本になります。
夏で薄手のレインウェアを使用しているならば厚手のハードシェル。薄手のダウンベストを使用しているならば厚手のダウンジャケットという考え方です。 私が冬山で使用する基本装備はこちら
どんな冬山でもこのような装備になります。天候が荒れるとどの山でも危険なので金で買える安全には抵抗がありません。
日帰りでも要救助者を見つけたことを考えてツエルトとテントを持っていきます。 初めて冬山に挑戦してみようという方に、登山用品を選ぶ際のポイントと注意点をまとめます。
薄手のレインウェアではなく必ずハードシェルを選ぶ
夏山登山のみの経験の人は雨の侵入を防ぐためにレインウェアを使用していると思いますが、冬山はどちらかというと風の侵入を防ぐことがメインになります。
稜線になると雪と強風に襲われることがありますので、薄手のレインウェアだと内部に風が侵入して一気に体温が奪われます。
それを防ぐために表面に硬い生地を使用し、身体へのフィット感がよいハードシェルを使用します。
保温は空気の層を作ること
冬山ではウェアを何枚も重ね着して空気の層を作ることでマイナス数十℃の環境の中で体温を維持します。
この考え方はfinetrackの解説が一番わかり易いです。
ハードシェル以外は基本的に防水・防風性性能がないかわりに汗の拡散を促して汗冷えを防いだり、純粋に保温力が高いダウンであったりします。その一番外側にあり外の空気を触れるウェアが防水・防風の機能が不十分であった場合、その下にある全てのウェアの機能が奪われ一気に低体温症になり危険な状況になります。 雪山に登ると決めたならばまずは高品質のハードシェルを手に入れるところから始まります。
冬山登山では命に一番関わる大事なウェアなので妥協せずに自分に合った選びましょう。
ファイントラック(finetrack) エバーブレスアクロジャケット BK FAM0701 L
強風時はダウンジェケットのみでは保温効果まったくなし
山間部で生活してると常識ですが、強風時はダウンに蓄えられた熱が一気に冷やされるのでまったく保温効果が期待できません。
それを防ぐためにみんなダウンジャケットの上にハードシェルを着ます。 雪山での保温はハードシェル+ダウンジャケットが基本。中にはノースフェイスのマクマードパーカーやヒマラヤンパーカーなどシェル+保温を同時にこなせるウェアもありますが、 相当な厚手なので行動着としては使用出来ません。これは覚えておくと装備を整えるときに便利です。
中綿入りの防水・防風のグローブ
保温性のあるグローブでもアプローチ中に雪が付着して濡れてしまうと凍傷になります。
冬山登山では身体のあらゆる部分に水がつかないように徹底します。 特に指先は風も当たるし雨雪にさらされるのでダウンやプリマロフトと言った保温性の高い中綿が入り、GORE-TEXなどシェルとして機能する素材を使用しているものをおすすめします。私はBlack DiamondのSEISEIというシリーズを長年使用していますが、現在買い換えるとしたらMAMMUTのサイアムグローブが第一候補です。
フェイスマスクかバラクラバ
個人的に冬山登山の後に後悔することランキング1位が唇のしもやけ。
まともに口があけられなくなるし、カサカサになって唇の表面が剥がれるしで2週間くらい生活に支障がでます。
理由は氷点下の風を直に受け続けたこと。これは秋の標高高い北アルプス登山でもよく起こります。それを防ぐために口をマスクで覆ったり、顔全体を保護するバラクラバを使用します。
マムート ネックゲイター フリース NG 1090-05330 0033 F
ストック
冬山は登山道が雪で埋もれるため夏山よりも曖昧になります。
踏み固められた登山道と、そうでない箇所の境目が曖昧になるので一歩踏み出しら太ももまで踏み抜いてしまうことがあります。
重たい荷物を背負って転倒するとリカバリーにものすごく体力を使うのでストックを刺しながら道を確認して歩くと歩行が安定します。特に下りで有効です。
BLACK DIAMOND(ブラックダイヤモンド) トレイル プロ ショック BD82320
ジェットボイルとエマージェンシーシート
万が一行動不能な状況に陥った場合、冬山はかなりのリスクがあります。そんな時のために使うのがジェットボイル。
クッカーと一体型になっているため軽量化できるストーブで熱伝導率のよい構造をしているため少ないガスで効率よくお湯を沸かすことができます。
暖房器具としてのジェットボイル
身体が冷えてしまってどうしようもならなくなった場合は銀マット(エマージェンシーシート)を被り、ジェットボイルの中に雪を詰め込んで最大出力で温めると簡易的な暖房になります。
体全体の体温を元に戻すと同時に特に指先のかじかみや凍傷を防ぐためには有効です。狭いスペースで火を使うので一酸化炭素中毒の危険がありますので緊急事態のみの使用のみで長時間の使用はできません。 ツエルトやテントを持っていた方が安全です。
魔法瓶:山専ボトル
冬山をハイドレーションに入れた水のみで水分補給はご法度です。外気温がマイナスなので当然ハイドレーションの中の飲料も0℃に近くなります。
超低温の水分を身体に入れると0℃→36℃(体温)付近まで温めることになります。逆の見方をすると体温が奪われるということです。身体の熱はカロリーの消費によって起こしているため、栄養が尽きれば当然動けなくなります。 飲むものすべてを温水というのは難しいのですが極力、魔法瓶に入れたお茶などを摂取すると疲労軽減になります。
魔法瓶のお湯がなくなる→ジェットボイルで目一杯お湯を沸かしてティータイム→残りを魔法瓶に入れる。この繰り返し作業になります。 サーモスの山専ボトルはシンプルな構造で保温力に特化した水筒なので冬山登山を快適にするのであれば必需品です。
奥多摩レベルでもハイドレーションは凍る
ハイドレーションの中が凍らないようにする保温パックがあります。
これによりパックないの水は氷る確率が少ないですが、ホースに残っている水は簡単に凍ります。 そうなるといくら吸い出しても水が出こなくなり重たいだけの荷物に成り下がります。こうなるクッカーの中にホースを入れて煮るくらいしか解決方法がありません。 その為不衛生ですが、定期的に水を吸っては戻しの作業が必要になります。
スノーシューの練習はスキー場や高原がおすすめ
いきなり登山でスノーシューは大変。ではどこで練習すればいいのか?一番確実なのがスキー場です。
雪が豊富にありますし、スノーシューのありなしでの快適さの違いがよくわかります。 人が多すぎてスキー場はちょっと…という方はトレッキングできる高原が練習に最適です。長野県ならば車山や上高地は12月〜2月まで豊富な雪がありますのでおすすめです。どちらも麓にはいい温泉がたくさんありますので旅行がてらスノーシュートレッキングも良いかもしれません。
初心者の方を冬山に連れて行った記事はこちら。万が一がないようにホンキのウェアを揃えました。

まずは安全な山で雪山になれることから
以上が短くない登山経験から出した冬山初心者のおすすめの山の選び方と装備の使い方です。
揃えるべき装備に関しては想像つきますが、使い方などが夏山とは異なりますので、どうしても経験値が必要になります。 レイヤリングによる体温管理、アイゼン着用による行動力の低下、短いタイムスケジュールなど不安要素もたくさんあります。 まずは危険の少ない低山で「冬山ってどんな感じかな」と、今までの登山経験から全力で装備と行動を考え抜いて実践してみることをオススメします。
ほとんどの方が最初の冬山登山で痛い目をみますが、その経験を活かして本当に自分に必要な装備や技術を学んで行くのが冬山登山の安全な勉強方法かなと思います。
一番勉強になり安全なのは経験者やガイドに同行してもらうことです。知り合いに冬山登山者がいたり金銭的に余裕があるならこちらがベストです。
スポンサーリンク
コメントを残す