写真のレタッチを正確に行うなときに必要なカラーマネジメントモニタ。最近は低価格帯でも高品質な物が増えてきたこともあり使用者が増えて来ました。
そんな中、BenQから映像編集で正確な色表現をするためにディスプレイをPV270が発売されました。PV270はまだBenQの新しいテクノロジーが豊富に搭載されていており、写真編集用としても非常に使いやすいものとなっていて、写真と動画の両方を扱う人には魅力的な仕上がりになっています。
このPV270はBenQのカラーマネジメントモニタの弱みの1つでもあった色ムラを補正する回路(ユニフォミティ補正)が搭載されており、起動から色が安定するまでの時間が短いという強みがあるモニタです。
今回はBenQさんから発売前から貸出いただいていて、数ヶ月ワークフローに組み込んだレビューです。
外観とスペック
サイズ | 27インチ |
---|---|
解像度 | WQHD (2560×1440) |
パネル | IPS |
色域 | Rec.709 100% DCI-P3 96% Adobe RGB 99% |
輝度 | 350cd |
コントラスト比 | 1000:1 |
応答速度 | 12ms |
入力端子 | DVI-DL HDMI1.4 Display Port 1.2 mini DP1.2 SDスロットカード |
遮光フード | 標準搭載 |
付属ケーブル | DVI-DL miniDP to DP USB3.0ケーブル 電源ケーブル |
本体重量 | 7.8kg |
スウィーベル(左右):45℃。メインモニタとしてはもちろんサブモニタとしても使いやすい角度まで回すことができます。
脚の位置まで下げることが可能。
ティルト角度は上下-5% / 20℃。
遮光フード
BenQのカラーマネジメントのモニタの長所のひとつがほぼすべてのモデルに遮光フードがついていること。(SW240を除く)。
年々フードの作り込みがよくなり、今回のPV270の遮光フードは組み立てやすく、またモニタにもしっかりと装着できるものになりました。
遮光フードの内側はフェルト地になっており、光を反射させません。モニタに光が当たらないことにより正確な色で写真のレタッチを追い込むことができます。
他モデルとの大きな違いがスライドして天板が開く様になっている機構。
他のモニタではここの口が小さく、USBケーブルを下から通してモニタに接続しないとキャリブレーターが干渉してしますことがありましたが、今回はすべて開くので接続の順番を考える必要がなくなりました。
タッチで操作できるボタン
今までのベンキューのカラーマネジメントモニタは基本的にボタン押し込み式のでしたが、PV270は軽くタッチするだけで操作できる仕様です。
そのかわり上記画像のようなモニタと優先で接続して簡単に操作できるOSDコントローラーが付属していません。モニタの操作はすべてモニタ本体で行うことになります。
モニタの接続端子
HDMI・DisplayPort・mini DisplayPortと最近主流の端子に加えてDVI-DLの端子がついているので少し古いパソコンやビデオカードでもPV270を使用することができます。
ここのUSB端子とPCを接続しPCとモニタで情報をやりとりできるようにしておかないと、キャリブレーションができないので初めてカラーマネジメントモニタを使う人は気をつけましょう。
モニタの左側にUSB3.0とSDカードリーダーがついています。モニタとPCがUSBで接続されている上で、ここにキャリブレーターを接続することでハードウェアキャリブレーションが可能になります。

ディスプレイスタンド
スタンドの下部にケーブルをまとめて通す穴があり、バネ式で固定できるため配線をすっきりさせることができます。
中央が凹んでいる仕様のため、そこにものを置けるので狭いデスクを使っている人はスペースを有効活用できます。
付属ケーブル
ケーブルはDVI-DL、DisplayPort-mini DisplayPort、USBケーブルの3つが付属。最近のビデオカードはDisplayPortとHDMIケーブルが主流なので、最新の環境で複数入力をする場合はHDMIケーブルか、DisplayPortケーブルを別途購入する必要があります。
キャリブレーション証明書付属
BenQの高価格帯のモニタはカラーを調整してから出荷しており、その証明書が付属しています。カラーマネジメントモニタはハードウェアキャリブレーションでの色を正確に合わせることが前提ですが、PCに純正のICCプロファイルを入れることで精度の高い色を表現することができます。
BenQの色への取り組みは積極的でAQCOLORという独自技術を開発し、色再現からキャリブレーションに至るまでのソリューションを作っており、ICC(Internatilnal Color Consortium)などにも参加しています。私も数年前からメインをBenQのカラーマネジメントモニタに切り替えていますが、年々クオリティが上がってきていて、WEBだけでなく印刷方面にも通用するレベルになりつつあるのかなという実感があります。
それを感じたのがPV270に搭載された次の2つの新機能。
ムラ補正回路搭載により実現した均一色表示
BenQのカラーマネジメントディスプレイの欠点であった色ムラを改修するための補正回路が搭載されたことことで、使い勝手が向上しました。
モニタの仕様上仕方のない現象ですが、この色ムラを専用回路によって補正することで均一な色を表示できるようになりました。EIZOのカラーマネジメントモニタに搭載されていて、BenQにはなかったことから比較されることが多い要素ですが、色ムラ補正がついたことによりその差は縮まりました。
I1Profireで輝度ムラを調べてみた結果、右下、左下の6%除けば輝度ムラは2%以内に収まっています。4KカラーマネジメントモニタのSW271では最大16%の輝度ムラが出ることに比べれば劇的な進化と言えます。

安定するまで5分のバックライト
色にシビアな仕事をしている環境ではモニタの色を安定させるために30分以上経過してから作業を行うことがあります。電源を入れた直後のモニタはそのくらい色や明るさが不安定です。
PV270に搭載された注目すべき新機能の1つが色ムラ補正、もう1つがこの短時間で色を安定させるバックライト。これによりモニタをつけてからすぐに作業に取り掛かることができるようになりました。
フィールドで撮影してから帰宅していち早くレタッチしたいフォトグラファーには強い味方です。
AdobeRGB99%・Rec709を100%カバーの広色域
動画編集用というポジションのPV270。iPhoneなどの標準の色域であるDCI-P3、動画で使われるRec.709で性能表示されていますが、私が注目したのはAdobe RGBカバー率99%。
色域を見るとAdobe RGB99%と静止画に強いとされているカラーマネジメントモニタSW271と同等のスペックです。
ちなみにRec.709は動画でよく使われるもので色域はsRGBとほぼ同じですがガンマ値が異なるため実際に見える色に少し違いがあります。
つまり写真編集にも使えるモデルです。
Xriteと共同開発したキャリブレーションソフト
BenQ PV270のキャリブレーションソフトは従来のPalette Master Elementではなく、「Palet Master」になりました。キャリブレーターのスタンダードであるX-rite社との共同開発で設定できるパラメーターが細かくなりました。つまりは現在のPalette Masterの上位互換です。
画面が従来のPalette Master Elementから大きく刷新され、X-riteのi1Profireに近いものになりました。
従来のものではできなかった品質検証やユニフォーミティー(色ムラ)の確認も純正のソフトでできるようになっています。
PV270のキャリブレーション
PV270は遮光フードの改良によりキャリブレーターの設置がこのように楽に行なえます。まずはPCとPV270、PV270とキャリブレーター(X-rite i1 Display Pro)を接続します。
Palette Masterを起動します。対応しているキャリブレーターだと測定器の欄に表示されて次の項目に進むことができるようになります。ここではX-riteのi1 Display Proを使用しています。
キャリブレーションの設定でプリセットに「校正:1」と書かれているのがわかります。これはキャリブレーションしたあとの色を表示するモードでPV270に登録されており、キャリブレーションをしない限り選択することができないようになっています。
キャリブレーションを終了すると自動でモニタは「校正」に切り替わり正確な色で表示されるようになります。
PV270はキャリブレーションした校正出力を複数登録できるため、使用する色域(Adobe RGBとRec.709など)を使い分けたり、複数のPCでの表示を最適化することができます。
私は現在デスクトップPCとMacBook Proで使い分けています。


環境に合わせて色を設定します。私の環境ではモニタ「RGB LED」、RGBプライマリ「Adobe RGB」、白色点「D65」、輝度「120cd」、ガンマ「2.2」で設定しています。
ICCプロファイルの設定です。ここはデフォルトのままで問題ありません。現状ほとんどのPCでバーション4で動きます。
測定するカラー数を選択。多ければ多いほど正確な色合いになりますがその分時間もかかります。私は一応最大数で調整しています。
測定が終わったらICCプロファイルを保存して終了。これで自動でPCとモニタの調整が完了して正確な色が表示されます。
BenQ PV270で動画編集
ムービーは専門外なのですが、タイムラプスを撮影しています。去年の白馬岳の山頂から撮ったタイムラプスはPV270を使いAfterEffectsで仕上げています。
PV270はリフレッシュレート(48Hz/72Hz)を変換し、通常のモニタである60Hzのリフレッシュレートでは歪みが生じる1080/24Pをレアル再生できます。
私のようなスチールを組み合わせるタイムラプスではその効果を実感できませんでしたが、24Pなどの出力をメインにする業務の人には魅力的な機能かもしれません。
使い方を選ばない万能なカラーマネジメントモニタ
現在の自宅の作業部屋では左にPV270、中央に4KカラーマネジメントモニタのSW271、右にSW2700PTで写真編集を行なっています。
メインは4KカラーマネジメントモニタのSW271、高画素機のレタッチでは解像度の高いモニタの方がしっかりと表示されるのでこちらを使用しています。サブ機として右にSW2700PT。
そしてPV270はデスクトップPCとノートPCの両方に接続しています。ここから私のおすすめの使い方のご提案。
MacBookProとPV270で速度重視の作業
3台のカラーマネジメントモニタを使用して数ヶ月経ちますが、BenQの4KカラーマネジメントモニタであるSW271よりもこちらのPV270の方が使用率が高くなりました。
その理由が使い勝手の良さ。色ムラ補正があることはもちろん、電源を入れてから色が安定するまでが早いので外出先で撮影と簡易レタッチを済ませてから自宅に帰宅して色をチェックする時はMacBookProとPV270を接続して確認することが多いです。
そして2560×1440のWQHDという解像度はGPU機能が高くないノートパソコンに負担をかけることなくサクサクと動作させることができます。
4KのモニタとノートPCのデュアルディスプレイはスペックを吟味しないと動画を見るときにカクつく心配があるので注意が必要です。4Kモニタを使うことで作業効率落ちる可能性があるといことは考えておくべきです。
それもあり、じっくりと写真をレタッチするときはメインモニタのでSW271、ノートPCと接続するときはPV270という使い方をしています。
最近は山岳写真の実習のようなこともやっていて、撮影データの確認などを私の作業部屋で行うこともあるので2つのPCでカラーマネジメントモニタを使える環境は偶然にも役立っています。

このようにどのPCでも使い勝手よく、色は恐らくはBenQのカラーマネジメントモニタの中では最も優秀。4Kの解像度へのこだわりがないのであればBenQ PV270は優れたパフォーマンスを発揮します。
ノートPCを使っている人ならデュアルディスプレイのカラーマネジメントモニタとして第一候補に上がるスペックではないかと思います。
ほぼ同じスペックのSW2700PTとの比較
サイズ、解像度、AdobeRGBカバー率などでほぼ同等のスペックであるカラーマネジメントモニタであるSW2700PTと迷う人は多いと思います。

価格もPV270が12.5万円、SW2700PTが7万円と5万円以上の開きがあります。
使った限りだとデスクトップPCでレタッチ作業するまでのんびり待てる人や、とにかくコスパ重視でカラーマネジメントモニタの環境が欲しい人なSW2700PTをおすすめします。
普段ノートPCを持ち歩き、自宅で拡張モニタとしてカラーマネジメントモニタを検討しているならPV270がおすすめです。ノートPCで簡易レタッチをしていていざ拡張モニタに接続したら数十分待たないと行けないというワークフローはストレスになるため短時間で安定するPV270は差額を埋める価値があります。
純粋な色に関していえば同等レベルですが、ムラ補正機能と安定速度を考えると予算があるならPV270をおすすめしたいところです。
価格も機能と比較すれば十分コストパフォーマンスに優れるので、どのカラーマネジメントモニタを買えばわからない人へ最初の1台としておすすめできるシリーズです。
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