山岳写真を始めとするネイチャーフォトではPLフィルター・NDフィルターを多用します。しかし前玉が出ている超広角レンズには円形フィルターをつけることができません。
NDフィルターが使えないためシャッタースピードを落とすために絞りをF22まで絞り込む、PLフィルターが使えないため過度なレタッチをしなくてはならない。そういった問題があります。
フィルターがつけられないレンズでフィルターワークを可能にするのが角型フィルターというシステム。そう思っている人は少なくないと思います。確かにそれを目的で角型フィルターを導入する人は多いのですが、実際にはケラレが少なく、ハーフNDフィルターを微調整できるという円形フィルターにはないメリットがあります。
しかし重量があり運用のフットワークも重い、フィルターも割れやすいというデメリットもあり一時期は運用を諦めていました。しかしNiSiさんから出たS5というフィルターシステムが円形フィルターと角型フィルターの両立という山岳写真でとても使いやすくフィルター自体も昔に比べて進化していたので現在のワークフローに組み込んでいます。
NiSiのS5角型フィルターシステムの特徴とシステムを解説しますので、参考にしてもらえればと思います。
取り付けには専用のレンズアダプターが必要
角型フィルターを使おうと思い、最初に躓くのが自分のレンズに取り付けるには何を買えばいいのかという問題。
まずは使用しているレンズ専用のレンズアダプターが必要となります。
私はNikonの広角レンズを使用していますので、NiSiのNikon 14-24mm F2.8専用のレンズアダプターが必要になります。
このように円形フィルターが装着できない主要メーカーの「出目金レンズ」のほぼすべてのラインナップに対応するホルダーがNiSiから販売されています。まず自分が使っているレンズに対応するアダプターを購入するのが角型フィルター選びのスタートです。
ちなみに円形フィルターが装着できるレンズであればアダプターリングを使用すればレンズアダプター(例えばNikon14-24mm専用アダプター)であっても角型フィルターを使えます。
よって基本的には1つのレンズアダプターとリングアダプターを使い、所持しているすべてのレンズで角型フィルターが使えます。
取り付けは単純な構造で、レンズの上から被せてロックを締めるだけです。各社のレンズに合わせて精度が高く設計されているので最適な取り付け位置を探すため、軽く回転させながら押し込んでいき深く入るところを探します。
奥まで入ったらロックして装着完了です。ここの入れ込みが甘いとケラレが出ますのでしっかりと奥まで差し込みます。
150mmの円形フィルターの装着
NiSiのS5システムは円形フィルターと角型フィルターの両立が特徴です。レンズアダプターに150mmの円形フィルターを装着することができ、ラインナップ豊富です。
- ND8
- ND64 CPL
- ND1000
- ND32000
- UV 395nm
- PRO CPL
- ランドスケープ CPL
150mmの円形フィルターという特殊な仕様ですが、使用頻度の高いフィルターは角型フィルターを装着しなくてもいいというメリットと、常用するフィルターであればレンズの前玉の保護ができるというメリットがあります。
CPLフィルターは山岳写真の常用フィルターとしても使えるので私はNikon14-24mmを使う際はこのスタイルを標準とすることが多いです。
S5レンズアダプターは150mm円形フィルターの装着だけでなく、左右に2箇所あるダイヤルを回すとフィルターが回転します。ランドスケープ CPLフィルターは細かく回転させることができるため反射面のコントロールをすることができます。
角型フィルターホルダーを使用する
150mm円形フィルターが装着できるレンズアダプターと角型フィルターホルダーは独立しており、角型フィルターを使用するときはレンズアダプターに装着します。この角形フィルターホルダーはすべてのレンズで共用です。
レバーを引っ張りレンズ専用のホルダーの前面に装着する仕様です。
レンズアダプターに角型フィルターホルダーを装着することにより、円形CPLフィルターと角型フィルターの両立が可能になります。
円形フィルターが必要ないときは予めフィルターを外した状態で角型フィルターを上から差し込みます。
ND1000以上のフィルターを使うと肉眼ではファインダーが真っ黒になりピントを取ることが難しいため、角形フィルターホルダーがワンタッチで取り外しできるこのシステムはフットワークに優れています。
NiSiのS5システムではデフォルトで角型フィルターを2枚重ねがけすることができますので、円形フィルターと合わせて3枚で光をコントロールできます。
NiSi S5の角型フィルターシステムの運用
C-PLフィルターはほぼ常用して手持ちでも使用しますが、角型フィルターを使用するときは三脚を使います。
手持ちではブレるシャッタースピードになることが多いことと、山の稜線ではグローブを着用するためフィルター交換やフィルターホルダー取り外しの際に落下リスクが高いからです。
150mmのC-PLを常用せずに三脚シーンでのみ使う場合は、予め角型フィルターを装着してしまい、片手でカメラを固定しもう片方の手で専用ホルダーを装着するのがスムーズです。
歩きながらホルダーを装着することは難しく、フィルターと同じく落下リスクが高いため三脚にカメラを取り付けるか座って作業することをおすすめします。
他のレンズで使用するためのアダプターリング
レンズアダプターは各社のレンズに合わせた専用設計になっていますが、アダプターを使用することで他のレンズで使用可能になります。
アダプターはフィルター系に合わせて各サイズ販売されています。
アダプタはこのような形状になっていて、円形フィルターと同じ要領でレンズに装着します。
これですべてのS5のホルダー(円形フィルターホルダー)を使用することができるようになります。
アダプターリングの上にホルダーを被せてロックするだけで角型フィルターワークが可能になります。
アダプターリングを噛ませた上でのS5のフィルターシステムは150mm円形フィルター+角型フィルターになるためケラレはまず起こりません。円形フィルターは重ねがけしたりステップアップリングを使用するとケラレる問題がありましたがこのシステムはそれが起きません。
なので角型フィルターを広角レンズで使うならば他のレンズでもケラれないフィルターワークが可能になるという副次的なメリットがあります。私はこれもあり山に持っていくフィルターは角型フィルターのみになりました。
アダプターを使用するとレンズの経に合えば他のシステムでも使えることができるので、FUJIFILM X-H1でも使用しています。
角型フィルター
ネイチャーフォトに使用するフィルターは様々ありますが、基本的にはC-PL・ND・ハーフNDの3種類です。中には限られたシーンでのみ効果を発揮するリバースハーフNDフィルターなどがあります。
長秒露光したいならND1000(10段減光)などのシャッタースピードを極端に遅くするフィルター、微妙なコントロールをしたいならND32のような数段の調整をするフィルターと用途に合わせて選んでいきます。
NiSiのフィルターはレザーの質感の高級感あるソフトケースに入っています。
薄めに設計されており複数枚をケースに入れて持ち運ぶときに便利です。
NDフィルター
NDフィルターには発泡性のガスケットが付いており長時間露光で不必要な光が入ってこないように処理されています。シリーズはND4からND32000まで展開されており撮影したい被写体に合わせて選ぶことができます。
ND1000でよく使われるのが水や雲の流れを絹のような質感にしたいとき。前玉が出ているレンズでは難しかった露出のコントロールが容易になり、このような表現が角型フィルターを使えば簡単に作ることができます。
実際の撮影現場ではこのような感じにセッティングしています。
NiSiの特有システムである円形CPLとND1000を組み合わせると彩度を高くしながら雲の動きを表現することができます。
ハーフNDフィルター
上から一番濃く、下にいくにつれて明るくなるNDフィルターです。山岳写真では夕日など空が明るくて地面が暗いといった輝度差が激しいときに使用します。
わかりやすい使い方がこのようなハイライトの白飛びが激しいシーン。それを極力抑えてディテールを残したいときや空の深さを表現したい時に有効です。
円形フィルターでもハーフNDはありますがグラデーションのかけ方をコントロールすることができないため山の稜線など、明るさを落としたくない部分も暗くなってしまうことがあります。
しかし角型フィルターはホルダーに挟むタイプなので位置を調整することでグラデーションのかけ方をコントロールすることができます。
稜線で山の高さと空のバランスを取る山岳写真においては魅力的なシステムです。
ハーフグラデーションと円形CPLフィルターを組み合わせることで本来は色が薄れてしまう夕日の色味をしっかり残しつつ彩度を上げることができます。
専用の持ち運びケース
NiSiのS5角型フィルター持ち運び用の専用ケースがあります。
裏側には三脚に巻きつけることができるマジックテープ仕様になっています。
このように三脚の脚に巻きつけることができるため、雪原のフィールドで地面に撮影機材を置けないシーンなので重宝する仕様になっています。
フィルターのみの仕様なら5枚ほど収納することができます。
山岳写真でおすすめの持ち運び方法
山岳写真に持っていくには重量がある機材ですので使用するフィルターは厳選します。その結果まとまったのが円形CPLフィルターと角型フィルター2枚です。
撮りたいものによって持っていくフィルターは買えますがND1000とハーフグラデーションフィルター(GDN16ミディアム)を選ぶことが多いです。
このセットの組み合わせはS5システムのケースにそのまま収納することができるためザックのパッキングを圧迫しません。
レンズアダプターに角型ホルダーを装着したまま収納することで、円形フィルターが中でこすれることもなく傷つくこともなく持ち運べます。アダプターリングは収納できないため別に収納します。
初めてのNiSi角型フィルターは何を買えばいいのか
NiSiの角型フィルターの特徴は円形フィルターと組み合わせて使うことができることです。
よってオススメの構成はS5ランドスケープCPLキットです。
- 150mm円形ランドスケープCPLフィルター
- レンズ専用アダプター
- 角型フィルターホルダー
- S5専用バッグ
この4つの組み合わせのスターターキットが販売されています。
そこから他のレンズで使用するためのアダプタ各種。これで手持ちのレンズすべてで角型フィルターシステムを使用することができます。
最後に角型フィルター。これは撮影する被写体によって最低なものが違いますが山岳写真を専門としている私がよく使うのはND1000・ハーフND GDN16(ミディアム)・リバースND16(ミディアム)です。
角型フィルターのサイズはS5だと横幅150mmになります。サイズは150mm x 150mm、150mm x 170mmなど違いがあり、ハーフNDなどのクラデーションのかかっているものは長めに作られています。中には横180mmでないと装着できないレンズとホルダーの組見合わせがありますが、ほとんどのレンズは横幅150mmのフィルターが適応されています。
基本のセットを揃え、あとはお好みの角型フィルターを揃えて行くと良いかと思います。テストしたフィルターすべてで専用ホルダーを正しく装着すればケラレは気になりませんでした。
この150mmのフィルターをメインとしたS5システムは一眼レフの広角レンズに合わせた仕様で現在の多くの人に合うシステムですが、最新のミラーレスは円形フィルターが装着できる広角レンズも出てきました。
そちらは100mmのフィルターが使えNiSiのシステムもV6という新しいものが発表されていますので、検証が終わったらS5システムと比較してみようかと思います。
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