一眼レフのボディとレンズのどちらかを買うべきか。
「ずっと使えるレンズ!」と答えれば理由はいくらでも作ることができます。しかしボディを替えることで撮影がはかどるということも事実です。そう単純ではありません。
現に私もプロになるまでに幾度となくボディを買い替えています。答えはバランス。ボディが必要の人もいれば、レンズが必要な人もいます。
ボディを買うべき理由と、レンズを買うべき理由。レンズを買うならどのレベルのものを買うべきなのか。掘り下げて考えて整理していましょう。
初めて一眼レフを買う人
基本的に最初の一眼レフはボディもレンズも好きなものを買うべきと思っています。その方が楽しいですし、モチベーションも高く撮影ができます。 それでもボディとレンズの組み合わせに悩んでいるのでしたら読み進めてもらえれば何か参考になる情報が見つかるかもしれません。ただ専門的かつ経験がないとピンと来ない話題でもあるのでカメラの買いどきだけチェックしてあとは飛ばしてしまっても問題ありません。

すでに一眼レフを持っている人
次に買うのをボディかレンズかで悩んでいる人。何を目的とするかで買うべきなのはボディかレンズが明確になります。
まずは自分の一眼レフボディがどのような性質を持っているのかを確認します。
ボディは高画素ほど高品質なレンズが必要になる
画質に関しては各メーカーのエンジンで差が出ますので物理的構造で判断します。
【撮像素子 / 画素数】で表せる画素ピッチと呼ばれる1ピクセルの大きさが小さいほど高品質のレンズが必要となります。まずは一覧で確認してください。
画素数 | 撮像素子サイズ | 画素ピッチ | 高品質レンズ | |
---|---|---|---|---|
D5 | 2133万画素 | フルサイズ | 広い | 不要 |
D4s | 1623万画素 | フルサイズ | 広い | 不要 |
D810 | 3635万画素 | フルサイズ | 狭い | 必要 |
D750 | 2432万画素 | フルサイズ | 広い | 不要 |
D610 | 2426万画素 | フルサイズ | 広い | 不要 |
D500 | 2088万画素 | APS-C | 狭い | 必要 |
D7200 | 2416万画素 | APS-C | 狭い | 必要 |
D5500 | 2416万画素 | APS-C | 狭い | 必要 |
D3400 | 2416万画素 | APS-C | 狭い | 必要 |
EOS-1D X Mark II | 2020万画素 | フルサイズ | 広い | 不要 |
EOS 5D Mark IV | 3040万画素 | フルサイズ | 狭い | 狭い |
EOS 5D Mark III | 2230万画素 | フルサイズ | 広い | 不要 |
EOS 5Ds | 5060万画素 | フルサイズ | すごく狭い | 必要 |
EOS 6D | 2020万画素 | フルサイズ | 広い | 不要 |
EOS 7D Mark II | 2020万画素 | APS-C | 狭い | 必要 |
EOS 80D | 2420万画素 | APS-C | 狭い | 必要 |
EOS 8000D | 2420万画素 | APS-C | 狭い | 必要 |
EOS Kiss X8i | 2420万画素 | APS-C | 狭い | 必要 |
EOS Kiss X80 | 1800万画素 | APS-C | 狭い | 必要 |
レンズの分解能と画素ピッチの関係
撮像素子が小さくなるほど、解像度が高くなるほど1pxあたりの面積が小さくなります。
画素数の高い利点は綿密な描写が可能になること、デメリットは高品質なレンズを使用しないと逆に画質が劣化することです。
画素ピッチが小さいとレンズが分解した像を受け取ることができないため、全体的にぼやけた写真になります。
画素ピッチが小さいボディで精密な写真を撮るにはより細かく分解できる(画像だとより細い線にする)レンズが必要になります。 この一眼レフのボディとレンズの関係を理解してからボディとレンズのどちらを買うべきなのか。レンズを買うと決めたとき、どのレベルのレンズを買うべきなのかが見えてきます。
一眼レフのボディを固定して購入するレンズを選ぶのはさほど悩むことがないのですが、ボディとの組み合わせになると複雑化します。私が買ってきた経験からのレンズの選び方だけを知りたい人はこちら。

APSーC機を持っている人が同じAPS-C機に乗り換えても画質がよくなることは少ない
2世代以上前のものからの買い替えならば実感はあるかもしれませんが、1世代前にくらべて格段に描写が向上するということはないでしょう。
同じ規格に乗り換えるのであればマグネシウムボディの剛性・1/8000秒で切れるシャッタースピード・フォーカス精度と連射速度など、撮影環境のレベルを上げたい人ということになります。
ポイント
- 画質を良くするためにAPS-C機からAPS-C機に切り替えても体感値は少ない
- 画質を良くするためにボディを買うならフルサイズ機に乗り換える
- 画質には十分満足しており、撮影設定などの環境のレベルをあげたい人は買い替える価値あり
APS−C機の画質と描写力を上げたいならレンズを選択
2000万~2500万画素の間のAPSーC機を使用しており画質・描写力を求めるのであればレンズを買うことになります。そこで問題になるのがどのレンズを買えばいいのかという問題です。
使いたい画角までは決まっていても、どのレベルのレンズを買えばいいのかが悩みどころです。
交換レンズは単焦点・低倍率ズーム・高倍率ズームの順に画質が落ちていく
画質では単焦点のレンズが一番の高画質です。しかしズームが出来ないため使用用途が限定されます。
そのためプロは仕事として使えるギリギリのレベルの高画質とズームが両立するレンズを選択する人が多くいます。これが俗にいうF2.8固定の3倍以下のズームレンズである大三元レンズです。
画質にこだわらずに利便性だけを追求したのが高倍率ズームです。ここで先ほどのボディの特性と組み合わせます。
ボディとレンズのバランス
- 画素ピッチが広い=高倍率ズームも使える
- 画素ピッチが平均=低倍率ズームまで
- 画素ピッチが狭い=単焦点のみ
高画質の写真を撮るための区分けを無理やり行うならこのようになります。
画素ピッチの狭いAPSーCの一眼レフで画質を良くするならば単焦点、フルサイズのフラッグシップ機を使っているならばどのレンズを使っても高画質になります。 APS-Cの入門機ほど高品質レンズが必要で、フラッグシップほど適当なレンズで大丈夫。ここに一眼レフ市場の闇があります。なぜこのようになっているかというと、
- 1)高画素なほど高画質と一般ユーザーが勘違いしているため売れる
- 2)高倍率のズームレンズの方が便利で売れる
よって、画質なんて無視して画素数をどんどん上げて、低スペックのズームレンズを低価格でつくります。だってそのほうが売れるから。 https://yamasha.net/flagship
APS-C機と高倍率ズームの組み合わせが最低の画質
一番安いボディとレンズの組み合わせですので、必然的に多くの初心者の方の組み合わせになります。
例えばキットレンズである18-55mm F3.5-5.6の画質や描写に満足しているならば低価格帯の高倍率ズームレンズ、画質を上げたいならば低倍率ズームレンズ、単焦点レンズを買うかの2択です。低倍率ズームレンズは高価格なものばかりなので、最高画質はどのような描写なのかを知るために、最安の50mm F1.8を買うのも賢い選択ともいえます。
なぜなら同じAPS−C機でキットレンズと単焦点レンズという最低画質と最高画質の両方を経験できるからです。これで自分は本当は何を求めているのかを知ることができます。
Canon 単焦点レンズ EF50mm F1.8 STM フルサイズ対応 EF5018STM
単焦点レンズの画質と描写力に感動したならフルサイズ対応の低倍率のレンズを揃えて行き、最終的にフルサイズのボディに移行する。キットレンズの画質で満足しているならば高倍率ズームレンズで利便性を追求していき、低価格で多様な撮影スタイルを楽しむ。このように進むべき道が明確になります。
目的別で選ぶポイント
- 単焦点レンズで最高画質かつ小さいF値による表現力
- 低倍率ズームで高画質とズームの利便性を両立
- 高倍率ズームで低画質だけれどズームの利便性
一眼レフをAPS-Cからフルサイズ機に切り替える
画素ピッチが広くなるため一気に画質が良くなります。ただしAPS-C専用のレンズは使用することができません。
装着することは可能ですがセンサーを囲むイメージサークルという領域が小さいため四隅に盛大なケラレが発生します。 またボディもレンズもAPS-C機よりも高額になるため1つの機材の出費が大きくなります。 ここで改めて考えてほしいことがあります。APS-Cとフルサイズ、構造としてはフルサイズの方が(シャープネスやISO感度耐性の面で)綺麗な写真を撮ることができます。また被写界深度が浅くなるためボケを使った表現力が豊かなのは間違いありません。
しかしカメラに興味のない人のほとんどがその差に気づきません。カメラをやる人でも殆どの人は原寸サイズでのシャープさなど自分の写真以外は興味ありません。
仕事として撮っていない限り自己満足の世界です。それに対して軽量コンパクトで安価なAPS-Cのボディとレンズを手放して、高額で大きいボディとレンズに切り替える価値があるのかを考えてみると、より楽しい写真撮影ライフを送ることができます。 APSーC機からフルサイズ機に切り替えるということは、今までの低コストで楽しむ趣味の領域から高額の本気の趣味に踏み出すということです。
初めてフルサイズを買うときに使うレンズ
基本的な考えはAPS−Cのレンズの買い方と変わりません。
ボディとレンズのバランス
- 画素ピッチが広い=高倍率ズームも使える
- 画素ピッチが平均=低倍率ズームまで
- 画素ピッチが狭い=単焦点のみ
APS-Cと同じく高画質の写真を取るための区分けを無理やり行うならこのようになります。
フルサイズ機で単焦点レンズを使用すれば、プロを含めた一眼レフ使いの中での最高画質を手にすることができます。 フルサイズのボディは超高画素機以外はどれも画素ピッチが広いため、対応しているなら高倍率ズームレンズでもAPSーC比べ高画質になります。 高画質であるという前提条件のもとズームの利便性を取るか、単焦点の最高画質を追求するか、低倍率ズームでバランスを取るかという考えです。
フルサイズからフルサイズにボディを変える
これもAPS-CからAPC-Sの考え方と同じです。
連射や操作性など撮影環境のレベルを上げることが目的でない限り、基本的に変えるメリットは少ないです。フルサイズは入門機からかなりの高機能であるため、APS−C機よりもボディの買い替えのコストパフォーマンスは悪くなります。
1点異なるのは、フルサイズ機のメリットを低画素化に振り画素ピッチを広げることに使ったフラッグシップと、高画素機に分かれることです。
フルサイズ低画素機
画素数 | 撮像素子サイズ | 画素ピッチ | 高品質レンズ | |
---|---|---|---|---|
D5 | 2133万画素 | フルサイズ | 広い | 不要 |
D4s | 1623万画素 | フルサイズ | 広い | 不要 |
EOS-1D X Mark II | 2020万画素 | フルサイズ | 広い | 不要 |
低画素機はISO感度に強くどのようなレンズを使っても高画質な写真が撮れる。1枚のファイルサイズも小さいため連射枚数も多く、失敗できないプロ向けです。
フルサイズ高画素機
画素数 | 撮像素子サイズ | 画素ピッチ | 高品質レンズ | |
---|---|---|---|---|
D810 | 3635万画素 | フルサイズ | 狭い | 必要 |
EOS 5Ds | 5060万画素 | フルサイズ | すごく狭い | 必要 |
扱いが難しいのがフルサイズの撮像素子の大きさを目一杯使用して画素数を上げているモデル。 ドットピッチはAPS-C機よりも小さくなります。
高画素機は良いレンズと組み合わせることを条件に画素数と画質を両立できる印刷に強い撮影が可能になります。これはボディとレンズの特性を理解していて、撮影スタイルに必要な機材を自分で選択できる人が買うべきボディです。
ポイント
- フルサイズ低画素機は使いやすさを追求
- フルサイズ高画素機は高品質レンズと組み合わせて最高画質を追及(使い方の1つ)
Canon デジタル一眼レフカメラ EOS 5Ds ボディ 5060万画素 EOS5DS
一眼レフの買い時は?
多くのデジタル一眼レフカメラは2年から3年の間でモデルチェンジをします。
「あと1年待てば最新機種が買える」と思いとどまる人がいる方も多いでしょう。ではスペック面でそれほど違いがあるものなのか?確認してみましょう。
D3300 | D3400 | |
---|---|---|
発売日 | 2014年 2月 6日 | 2016年 9月16日 |
解像度 | 2416万画素 | 2416万画素 |
ISO感度 | 標準:ISO100~12800 拡張:ISO25600相当 |
標準:ISO100~25600 |
シャッタースピード | 1/4000~30 秒 | 1/4000~30 秒 |
ファインダー倍率 | 0.85 倍 | 0.85 倍 |
ファインダー視野率 | 95/95 | 95/95 |
撮影枚数 | ファインダー使用時:700枚 | ファインダー使用時:1200枚 |
専用電池型番 | EN-EL14a | EN-EL14a |
ゴミ取り機構 | ○ | ☓ |
幅x高さx奥行き | 124x98x75.5 mm | 124x98x75.5 mm |
重量 | 410 g | 395 g |
Bluetooth(スマホ自動転送) | ☓ | ○ |
販売価格 | 42,000円 | 68,000円 |
2年半前の機種であるD3300と最新機種であるD3400の簡単なスペック比較です。
新製品と旧製品の価格を見比べる
2016年10月現在でD3300 18-55 VRII レンズキットはamazonで42,000円、D3400 18-55 VR レンズキットが最安で68,000円です。
基本性能は変わらず最新のD3400の方がバッテリーの持ちがいい、追加された機能といえばBluetoothをでスマホと連携してデータを移せるくらいです。これで価格差が26,000円。アレD3300の方がコストパフォーマンス高くない?思う方、その通りです。
旧型モデルは新型の発売が近くなると安くなる
量販店も在庫一掃セールとを行います。
新商品とくらべてスペックで勝ることはありませんが値引きによって「価格相応」になります。旧製品と新製品は別商品として認識すると分かりやすいです。 近年のデジタル一眼レフのスペックは以前に比べて成長が遅くなっています。それこそ新製品と旧製品の画質が変わらないほどです。追加される新機能にお金を払うかどうかで判断すると決めやすくなります。
例えばデジタル一眼レフのデータは必ずレタッチという人はBluetoothでスマホと連携できるSnapBridgeは必要ありません。D3300を買い余ったお金で35mm F1.8Gを買うと最初からキットレンズと単焦点という画質の違いが分かりやすい環境を手に入れることができます。
一眼レフはボディもレンズも欲しい時が買い時
発売日からどれだけ過ぎているかで価格調整を絶妙なバランスで行っています。
いつ、どの機種を購入して損はしません。パソコンやスマホと同じです。むしろ発売日に新製品を買うのが一番高くつきます。 レンズは発売してからモデルチェンジの予測がつきません。10以上年間製造を続けているレンズも多数あります。 結論としてはいつ買っても損することはないということです。旧製品を安く買いたい場合は新商品がアナウンスされた時期がチャンスといえそうです。
一眼レフはボディか、レンズかという選択は複雑
このようにボディを優先するべきか、レンズを優先するべきかの問題はその人の所持している機材と目指す方向性によって異なります。
ざっくりと「ボディとレンズどっち?」と聞かれれば「レンズ!」と答えてしまいがちですが、ユーザーの事情を掘り下げていくと難しい問題でした。 私自身Nikonでは超入門機のD40から、当時のAPS-CフラッグシップのD300、フルサイズのD3からD4Sまで使用経験があります。それでもレンズとボディのどっちを優先的に買うべきかというのを人にすすめるのは難しい問題です。今すぐ解決したいものがあるのか、将来を見据えているのかがはっきりしないためです。
これがサブ機はフルサイズかAPS-Cかという話に展開すると収集がつかなくなります。ご自身の撮影スタイルに合わせて目指す方向性が高画質・描写力なのか、フットワークと小型軽量化なのかなど方向性を考えてみると買うべき機材が見つかると思います。
ボディとレンズどちらを買うべきか、レンズを買うにしてもどのように選べばいいのか。そう迷ったときにこのような選び方もあると覚えておくと少しだけ迷わなくなるかもしれません。
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