SynologyのNASを10GbEに改造して爆速の写真レタッチ環境を構築

SynologyのNASを10GbEに改造する

大量の写真を撮影するとファイル管理が大変になります。そこで多くの人は外付けハードディスクやNAS(Network Attached Storage)を使用します。

LAN接続でファイルを管理するNASを使用すると他のPCからアクセスできたり外出先からファイルを見ることができる、クラウドストレージに自動でバックアップが取れるなどの利便性と堅牢性を手に入れることができるます。

それもあって多くの写真家はNASを使って撮影データの管理をしています。

しかし昨今まで問題とされていたのが転送速度の遅さです。

以前からSynologyさんに写真のレタッチに向いてるNAS運用の方法を相談していて、今回ようやくSynologyのNASを拡張させる純正の10GbE(10Gbps)のNIC(ネットワークインターフェースカード)が発売されてたこともあり、カードだけご提供いただき、他に必要な機材は好みで調達してきました。

唯一の悩みであった速度を解決して爆速のLightroomレタッチ環境を作ろうというのが今回の試みです。結果速度が10倍になり大満足の結果になりましたので作業手順を解説します。

NASは基本的に写真レタッチに向いていない

たとえば私が使用しているSynology DS3018XSは6台のHDDを搭載できる業務で使える仕様のものですが、LANの速度が1GbE (1000BASE)であるため、現在は実測で110Mbpsしか出ません。

DS3018XSの転送速度

1GbEで接続したRAID6のHDDの速度です。

毎秒110MBくらいの速度でファイルの転送ができるため、ファイル管理や動画鑑賞に置いては十分な速度が出ています。

しかしLightroomとPhotoshopを連携させてレタッチなどをすると、Photoshopで写真を開くだけで250MB以上、4000万画素クラスのTIFF1枚のファイルサイズが500MBになることもあり、動作のもっさり感が気になってしまいます。

今までは内部SSDで作業

作業がスムーズにできないことからPCに内部接続しているSSDでレタッチやデザイン作業を行い、終わったらNASに入れて保存するというシステムにしていましたが写真やデザインファイルの一括管理ができなくなるため迷子になるものがありました。

またNASに保存している写真をレタッチすることも当然あるためシステムとしてチグハグ感が拭えませんでした。

そこでNASを高速の10GbEに改造してすべてのファイルをNAS1つで管理しようということになったのです。

NASの10GbE化に必要なパーツ

Synology NASの10GbEにする

NASを10GbEに改造するにはNAS本体だけではなく、PCにも対応したLANカードなど少しマニアックなパーツを揃える必要があります。

NASに取り付けるNIC(ネットワークインターフェースカード)

Synology E10G18-T1

まずはNASに接続するためにめの10GbEのカードです。SynologyのNASを使っていて拡張カードに対応しているモデルを使っている人はE10G18-T1を買っておけば間違いありません。

SynologyのNIC

PCI-Express規格で出力は優先LANポート1つ。色々なモデルに対応するためにブラケットも付属しています。これをNASに取り付けます。

PCに取り付けるLANカード

ASUS XG-C100C

私の使用しているマザーボードASUS ROG STRIX Z390-F GAMINGのLANは1000Base-T規格のため10GbEに対応していません。そこで別にカードを購入する必要があります。それがASUSの10GbE対応のLANカードXG-C100C。デスクトップPC専用のものでこちらもPCI-Express規格です。

ASUSの10gbELANカード

ASUS XG-C100CのLANポート

こちらもLANは1ポートになっています。10GbEの環境を作るためにはNASとPCの両方に専用のカードを差し込む必要があります。

例外としてハイエンドのマザーボードはオンボードで10GbEのLANが搭載されているモデルがあります。ただ4〜7万円近いものになりことが多いため10GbE目的で選ぶならLANカードを別に購入した方が安くなることが多いです。

10GbE対応のスイッチングハブ

NETGEAR GS110MX-100JPS

PCとNASを直接つないでもファイルのやり取りはできますが、一般的でない上に設定も特殊であり他のPCでNASを見ることができなくなるためスイッチングハブを間に入れるのが一般的です。

10GbE対応のスイッチングハブは業務使用のものが多いせいか基本的に高価なものですが、NASとPCだけ10GbE対応できればいいと割り切ればNETGEAR GS110MX-100JPSが2.5万円で手に入れることができます。

このスイッチングハブはアンマネージメントであり、色々な設定ができるマネージメントのスイッチングハブに比べて機能性は劣りますがLANケーブルを接続してしまえば自動で機器を接続してくれるというメリットがあります。

ネットワークにさほど詳しくない私を含む多くのフォトグラファーにとっては、安価で自動設定してくれる使いやすいスイッチングハブです。

10GbE対応のスイッチングハブ

こちらの9番と10番ポートが10GbE対応のLANポートです。この2つの好きな方にNASとPCを接続すれば10GbEの高速環境でデータのやり取りができます。他のポートは1GbEになります。ここのどこかにルーターを接続すれば無線LANでNASにアクセスできるようになります。
NETGEAR GS110MX-100JPSの付属品

業務用とで使われることも多いのか、ラックマウントが付属していました。電源も小さくタコ足配線している私に取ってはありがたいサイズです。

CAT7以上のLANケーブル

カテゴリー7のLANケーブル

10GbE環境はカードだけでなくケーブルも対応してなければいけません。カテゴリー7以上のケーブルであれば高速通信が可能になるので、10GbE環境を作るときはついでに買っておくといいかもしれません。

10GbE(10Gbps)の高速環境を構築する

10GbE(10Gbps)のNAS運用システム

構成としては写真の通りになります。それほど難しい手順ではありませんでした。

  1. SynologyのNASにカードを装着する
  2. スイッチングハブにLANケーブル接続する
  3. PCに10GbEのカードを装着する
  4. スッチングハブからPCのLANカードに接続する

アンマネージメントのスイッチングハブを使えばネットワーク設定は基本的に不要なので作業としては以上です。まずNASにカードを装着するところから始めます。

SynologyのNASを10GbE化する

ネットワークインターフェースカードの取り付け部分

私の使っているSynology DS3018XSは拡張カードを1枚取り付けることができます。SSDカードを取り付けてキャッシュを増やして高速化するか、LANカードを取り付けて高速化するかの2択です。色々調べたところ10GbE化の方が単純な速度は速くなるそうなのでこちらを選択しました。

NASのネジを取り外す

まずはNASのネジを取り外して横にスライドさせます。これはPCケースでもよくある仕様と同じです。

作業はすべてプラスドライバー1本で行うことができます。

Synology NASのカード挿入部分

上蓋を開けるとカードスロットがあることがわかります。ここの純正の10GbE対応のNICであるE10G18-T1を差し込みます。

NASのブラケット

カードを取り付ける前にホコリが入らないように塞がっているブラケットを取り外します。

SynologyのNICの差し込み

純正のNICであるE10G18-T1を差し込みます。スロットにきっちりとハマってないように見えますが、これはPCI-Expressの仕様によるものです。

PCI-Expressのレーンの長さはx1〜x16まであり、長いレーンはそれ以下の長さのカードをすべて装着することができるのが特徴です。よってカードを取り付けたらレーンが余るということが起こります。

E10G18-T1はPCI-Express x4の仕様であり、Synology DS3018XSはx8のレーンを持っているため互換性があるということになります。

Synologyの10GbEのNAS

これで上記の画像のLANは10GbE対応したことになります。NASの改造はこれで終了です。

自作PCを10GbE化する

自作PCの10GbE化

2018年末にちょっと気合の入ったレタッチ用のPCを自作したのでこのPCに10GbEのLANカードを組み込みます。

ASUS XG-C100C

ASUS XG-C100CをマザーボードのPCI-Expressスロットに装着します。こちらのカードはx4の規格なのでNASと同じくレーンが余っていますが問題なく動きます。

LANカードのドライバをインストールする

LANカードのドライバをインストール

ASUS XG-C100CをPCに装着してもそのまま使用することができません。ドライバのインストールが必要です。LANカードを装着したからと今まで使用していた低速のLANポートからケーブルを抜いてしまうとインターネットと接続ができずにドライバをインストールできないという面倒くさいことになります。

LANカードを装着しただけだとデバイスマネージャをみても認識されていません。

付属のCDからインストールできますが、最近のPCはDVDドライブをつけないものが主流になりつつありますので、ASUSのXG-C100Cに関してはこちらから事前にダウンロードしておくことをオススメします。

インストーラーの立ち上げ

インストーラーに従い進めていくだけでドライバがインストールされます。

ネットワークアダプタの認識

無事カードが認識されて10GbEでネットワークが使えるようになりました。

ネットワーク設定を全自動にしている人はIPアドレスの変更に注意

IPアドレスの変更に注意

私の環境ですべてのネットワーク設定を自動で行った場合、この作業前のNASのIPアドレスが作業前と作業後で変更されました。よってマイコンピュータにショートカットをクリックしても接続されません。

IPアドレスを確認したい場合はSynologyのスマホアプリであるDS Finderを使うとわかりやすいです。ここに表示されているIPアドレスを打ち込めばNASに接続でき、ショートカットも新たに作り直せば解決します。

10GbE化で10倍の高速化に成功

10GbE化したNASの速度

10GbEにしたSynology DS3018XSを計測した結果、シーケンシャルリードで1000MB/sを超える数値が出ました。

書き込みも600MB/sを上回る速度であり、これならば高画素機のレタッチ作業も快適に行えるようになります。

この拡張のNIC(ネットワークインターフェイスカード)を使用した10GbE化はカードスロットがあるNASであることが前提ですので、廉価帯のものはできないこともあります。

とはいえこれからは10GbEがデフォルトのNASも出てくると思いますので今後のNAS業界には期待できます。

4Kの動画編集環境も快適

4K動画の編集も快適に行うことができる

10GbEでの私の環境のシーケンシャルリードは1074MB/s、ライトは634MB/s。これだけ高速ならPremiereやAfter Effectsを使用した4K動画編集もNASの中にファイルを置いて作業することができます。

大量の動画ファイルを扱う動画編集はSSDでは容量を圧迫し使いづらい、しかし内蔵HDDは堅牢性などに不安がある。そんな悩みを10GbEのNASでRAID6を組めば解決できます。

写真編集だけでなく、動画編集も快適にする事ができました。

すでに業務用のNASを使っていて高速化の余地があるなら10GbE化は全力でおすすめできます。

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